哲人「つまりなにか、君は彼よりも君の方がしたことの重さが少ないのだから許されてしかるべきだ、と」
青年「だってそうでしょう、彼が私にしたことは私が彼にしたことの何倍もひどいのですよ。それに先にあんな仕打ちをしたのは彼の方です。正当防衛といってもいいくらいで」
哲人「詳しい内容についてはあえて聞かないでおくよ」
青年「喧嘩両成敗なんてもう流行りません。先生はもっとしかるべき判断を下すべきなんです。それなのにあの人は...」
哲人「まあ落ち着いて。確かに、私も『喧嘩両成敗』なんて言葉を使う気はないよ。だがね」
青年「そうでしょう!当然のことです。今さらそんな言葉で彼と私が両方同じくらい悪いのだ、なんて言われてはたまったもんじゃありませんよ!」
哲人「落ち着きなさい。それではある例を出してみよう。ここにコップが二つ、水が満たされて置いてあるとする」
青年「はい」
哲人「右側のコップには1gの毒が入っている。左側には、同じ毒が0.1g入っている。君はどちらを飲むかね?」
青年「そんなのどちらも飲みたくはありませんよ。その毒の致死量がどれくらいだったとしても、毒入りには変わりありません」
哲人「そう、君が言っていることはそういうことなんだ」
青年「......と言うと?」
哲人「君はしたことの罪の重さでその罪を測ろうとしている。そうではない。罪を犯したのか犯していないのかが重要なのだ」
青年「そっ、それはいくらなんでも酷いじゃありませんか!では私が彼に嘘をついて、彼が私に殴りかかって来たとしたら、それも同じく悪いと言うのですか?!」
哲人「その嘘が彼にどれだけ傷を与えたか、どれだけ彼にとって酷いことだったか、君には知るよしもない」
青年「ですがしかし......」
哲人「主観的な立場から人の善悪を判断してはいけない。この話は前にもしなかったかね?」
青年「.........」
ご飯、お風呂、歯磨き、すべてを済ませ、あとは寝るだけ。困っているのが、全く眠くないということだ。そりゃ、あれだけ日中に寝てしまえば眠くないはずである。そして、そもそも夜行性なのだ。
寝る準備万端の状態で人前に出るなどしたいことではないが、部屋にいても気が晴れないどころか目が冴えてくる一方なので、寝ようとすることを放棄した。
いるのはチャールズだからというのも理由のひとつである。
アイボリーのカーディガンをひっかけ、リビングへ行く。
明かりが漏れている。起きているのだろうと思って行ったものの、予想通り過ぎて笑えない。
「お嬢さま、起きてらしたんですか。」
少し驚きを滲ませるチャールズの横に座る。
「眠れないの。」
納得したように苦笑して、ちょっと待っててくださいねと言う。
立ち上がるチャールズから目を離し、置かれた本を手に取る。本というより、手記に近いような冊子。タイトルはない。開けてもいいものかと躊躇っていると、チャールズがカップをひとつ持ってきた。もう一方の手に持っていた蜂蜜の小瓶を置くと、その手でそのまま本を取り上げられる。
「人のものを勝手に探るような無粋な真似はするものじゃありません。」
君の好きだった曲が流れてきた
買い物をしていた時に
残したものを食べてくれたこと
キスは深くまでが好きなこと
寝るまで通話してたこと
からだが思い出した
涙はながれなかった
ただ 元気かなとだけ 懐かしく思った
自分らしくないフリルのついた服を買った
多分着ないだろうけど
前に雑誌を見て君が言った
これかわいいね。
これからラーメンを食べに行く
ちょっときらきらを持って
わたしは
うたを うたいたい
会いたいと 叫ぶけど
届かない 何度名前を呼べば君は
振り向いてくれるのかな
止まった時計の針と
流れない季節の狭間で
涙に濡れる日々
もう君には届かないのだろうか
願いも思いも変わらないのに
僕の見ている景色は 流れて行かないままで
終わってく
静かに沈んでく
腹が減って、今日の晩飯何かなー、なんて考えてたら、ふと、俺って恵まれてるんだな、って思った。
世界には、栄養失調で亡くなる人がたくさんいて、飽食の時代だなんて言われてるけど、そんなの先進国っていう井戸の中の常識でしかなくて…
ビスケットでも食べようかと思ってたけど、今日はいいや。
好き?憧れ?
私が先輩のことをどう思ってるか
自分でもわからない
部活の時のあの美しいプレーが好きで
LINEしてる時のあの面白さが好きで
話しかけてもらった時の柔らかい声が好きで
なんといっても笑顔が好きで
先輩のようなプレーがしたい
先輩のような優しい人になりたい
ねぇ
部活引退しちゃってから全然会えてないです
いまテスト期間だからLINEも出来てないです
受験生だから頑張って欲しいけど
でも
会いたいです!
久しぶりに先輩と話したいです!
好きとか憧れとかなんだってもういいから
会わせて下さい、お願い
空に向かって呟く
馬鹿みたいに真っ青な夏空へ
「夜ご飯できてますよ。食べましょう?」
改めて、随分と眠っていたのだと自覚する。寝起きであまり食欲がないけれど、それを言うには忍びない。リビングへ向かうなか、チャールズが口を開いた。
「午後はあまり動いてないですし、軽いものにしたので大丈夫ですよ。」
完全復活らしい。心を読んできた。思わず笑みがこぼれる。
扉にてをかけて、チャールズが言った。
「何か思い出したら教えてくださいね。」
この言葉にひっかかりを覚えないわけではなかったが、はい,と応える。
入ると、中は美味しそうな香りでいっぱいだった。
目が眩むほどの日差しが
鬱陶しくまとわりつく空気が
僕はあまり好きじゃない。
花火だって
ただ大きな音がする光だ
なんて思っていたんだけど。
近くの大きな公園でやるお祭りも
ただ馬鹿騒ぎするうるさい場所だ
なんて思っていたんだけど。
今年は何かが変わるかもしれない
君が隣にいてくれる毎日が
いままでとは違ったように。
もうすぐ本格的な夏が始まる。
缶を開け、一息にあおった。
0時過ぎてから飲むのが一番マシだな、と思う。
有り体にいえば、甘味が過ぎるのだ
あと、とろみがいささか強い
後味がくどくなるのも当然である
1本 200ml 200kcal
要は腹持ちの良さに特化した豆乳みたいなものだ
しかし、不味いな
顔を顰めながら2本目に手を伸ばす
1ダースも消費しないといけないと思うと、それだけで胃がもたれる気がする
こうして僕の体重は、1週間で3kg増えた。