宛先は書かない
願っても
叶うことなどない恋だから
涙で濡れた便箋に
想いを綴り
できることなら
この想いと共に
遠くまで飛ばしてしまいたい
もう寒いね
そう言って君は白い幸せを吐いた
手袋が必要なこの世界
体が冷えないよう
ボクは体をぎゅっと丸める
自分だけの暖かさが心地よい
だけどそれだけじゃもう寒いや
ねぇ ぎゅってして?
そこから何を聞いたかは正直覚えていない。それ以上深く聞くことは出来ずに部屋に帰ったような気もする。夢を書き記したノートを読み返し、授業の復習とやらを始め、結局夜ご飯まで籠っていた。
あんな話を、顔を、されるとは思っていたかったのは瑛瑠の落ち度でしかないので、しばらくは悩んだり反省したりしたが、そもそもそんな触れられたくない傷を瑛瑠の前に出さないでほしいとも思い、そう考えると今度は憤りが生まれた。
そうして向かい合って結果夜。
「夢のこと、お話ししてもらってもいいですか?」
1日の全てを終わらせ、あとは寝るだけだ。
夜は、まだこれから。
何度も眠れない夜を過ごして
涙と歩んできた
僕が独りなのは
どうして?
君の周りには友達がいて
僕の周りには僕の抜け殻ばかり
どうして?
どうして?
どうして僕は不幸と歩き続けるの?
朝がきました。きっと雨が降るように、クルマをよく洗ってライトを点けたらおはよう、
金木犀の香りがしてきました
甘くて暖かくて赤黄色のあの香りが好きです
いつの間にか金木犀の香りがし始めていつの間にか終わるこの季節も好きです
胸がたまらなくなります
目の前を行き過ぎた真っ白なワンピース
目で追うのも恥ずかしくなって
俯くのも申し訳なくて
目の前でしか見られなかった
ああ、夏がいってしまう。