もがいてもがいておぼれそうになって
もういいやってなったときにかぎって
にたようなひとからはげまされるから
わたしでもできるかななんておもって
またおぼれそうになるのをくりかえす
それでもわたしなりに光りたいなんて
わがままのみのほどしらずなんですか
歩きスマホ
湿ったマスク
ボロボロのスニーカー
ポケットの左手
立呑屋の前を通れば
ソースの匂いが通り抜ける
鳴り響く踏み切り
僕の心臓の早鐘
凍える手を引っ込めもせずに
下らない羅列を書きなぐるのだ
LEDに変わった
帰り道の街灯
お化けみたいな枯れ木
僕みたいな枯れ葉
今さらになってもう一度
冬が来たのだと知る
鴉のねぐら
ヘリコプターの編隊
目映い光に目も閉じず
こんな言葉を書き綴るのだ
青年「おーい来たぞ霊能者」
霊能者「また来ましたか貴方。敬語を使いなさいな」
青年「エセに使う敬語は無い」
霊能者「だからエセじゃないって…。で、何の用です?」
青年「また憑かれた」
霊能者「またですか」
青年「ああそうだよ」
霊能者「今度は女の人ですねえ…」
青年「お前は次に『何か実害はありましたか?』と言う」
霊能者「何か実害はありましたか?…はっ!」
青年「まあ茶番はこのくらいにして。今度の霊は体のところどころから血が流れてて、それが僕の後をついてくる時にぽたぽた垂れて正直言って不気味でならない。さあ祓え」
霊能者「そのくらい我慢してあげましょーよー」
青年「お前ふざけてんだろ」
霊能者「すいません、今日は別の予約がこの後あるので、また後日」
青年「逃げやがったな…」
青年「おい霊能者、また来たぞ」
霊能者「今度は何の霊ですか?男、子供、女と来て、次は…あらまあ、可愛らしいネコちゃんじゃあないですか!」
青年「まあぱっと見はな。でもこいつの腹を見てみろよ」
霊能者「どれどれ…お、おぅ。腹が…内臓さんこんにちは…」
青年「どうにも不気味だ。さあ祓え」
霊能者「それだけなら良いじゃないですか。見た目は可愛いネコでしょう?」
青年「何なんだよお前。一度に四人、いや、三人と一匹に取り憑かれた方の身にもなってくれよ」
霊能者「どれも無害なんだから良いじゃないですか。また取り憑かれたら来てくださいね」
青年「これ以上憑かれてたまるか。そもそもお前祓おうとしないじゃねーか。もうこれっきりだ。もう来ないからな!」
霊能者「はいはい、それじゃあまた」
少年は、空を飛びたかった。
空を飛ぶための大きな羽根が欲しかった。
少年は、少しずつしか変わらない毎日に退屈していた。
そんな毎日から抜け出したかった。
少しして少年は青年になり、やがて大人になった。
少年はもう少年ではなく、男だった。
男は仕事に就き、家族を持った。
男は毎日の慌ただしく、忙しない生活におわれていた。
いつしか男は空を飛びたいという夢を忘れてしまった。
いつのまにか髪は白くなり、男はひとりになっていた。
子どもは家を出て行き、親しいひとは皆亡くなっていた。
あるとき、男は自分が少年だった頃の夢を思い出した。
男は、自分が空を飛びたかったのだと思い出した。
男は空を飛ぶことにした。
ある晴れた日の昼下がり、男は空を目掛けて跳んだ。
背中には大きな羽根が生えていた。
男は空を飛んだ。
そしてそのまま、青空の向こうに見えなくなってしまった。
僕は歩いている。
下を見て歩くのは癖だ。
歩く。歩く。
長らく歩いているはずだが
三歩しか歩いていないことに気が付いた。
なんだ。これだから嫌なんだよ。
と思っている間に
今度は百歩進んでいた。
僕の意に反して百三歩も歩いた。
酷くどうしようもなくため息を吐いた。
飴を取り出し、食べた。
甘かった。
くそ甘くて、少し酸っぱくて
それでもって空虚な味がした。
不味い。
顔をしかめ、噛み砕いた。
空虚な味の飴は、空虚な音を立てた。
吐き出す。
隣を通り過ぎた少女たちが
同じ飴を瓶に入れて大事そうに抱えていた。
下を向いて歩いた。
歩いて、歩いて、歩いた。
歩いても自分の足音など聞こえないので
いくらでも歩けそうだが
確実に疲労が溜まっている。
足を引きずりながら、歩いた。
喉が渇いたので水を飲んだ。
全部身体を通り抜けた。
喉の渇きは癒えなかった。
歩いた。足をとにかく動かした。
転んでも起き上がって歩いた。
倒れたら這ってでも歩いた。
嬉しい時も悲しい時も
息をするようにただひたすらに歩いた。
現在歩いた歩数、5864歩。
僕は歩くことしかできない。
貴方が欲しいよ
他の女の子となんて話さないでよ
好きなのに
こんなに近くにいるのに
心がこんなにも冷えて苦しいなんて
おかしいじゃない
近くにいるのに
なんで
心はこんなに遠いの
追いかけてるのは私の方だ
こっち向いてよ
貴方が欲しいよ
傘を差して、泪…
雨の日、約束をした。
きみの優しさが、ぼくに
ひとつの決意を強いた朝のこと。
君が僕の誕生日を2月だって言うんなら
2月にも歳を重ねてやるぞという心意気。
さっきからずっと君は機嫌が良くなくて
「あの人、誰?」なんて無愛想に言うから
冗談のつもりで言ったんだけど
顔を赤くしてそっぽ向く。
これって、期待してもいいよね?