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受け止めるから
何度でも私に
堕ちてきていいよ
私が下にいるから
安心して飛んでいて

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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 2.コマイヌ ⑪

「…一応黎はちゃんと喋るからな」
驚きが顔に出ていることに気付かれたのか、師郎が真顔で言う。
黎自身は喋れないとでも思っていたのかと言わんばかりに冷たい視線を送ってきた。
「…なんか、すごいね…わたしなんかよりもずっとすごい」
「いや別にすごくなんかねーよ。某マンガや某アニメや某ラノベに出てくるヤツよりずっと地味だし、第一日常生活やっていく上では出番あんまないし」
わたしの誉め言葉に、耀平は苦笑する。わたしはそうかなと首を傾げた。
「なんだかんだ言って1番実用性あんの黎じゃね? 暗視効果なら暗い中でも便利じゃ…」
「現代社会生きる上ではあまり出番ない。あっても停電時。ぶっちゃけ師郎のが1番役立つだろ… 逆に実用性1番ないのは多分ネロの」
「ちょ、黎それはヒドイよ!」
師郎の発言を否定しながら、しれっと毒を吐いた例に、ネロは抗議する。
「んなこと言ったら1番使用率低いの耀平じゃん? ボクはちょいちょい『他人に能力使ってるとこバレたから証拠隠滅してくれ』って頼まれるけど、耀平のその能力はあんま使い道ないじゃん!」
「あるわ! 落とし物したときとか… あとさネロ、今回は自分の証拠隠滅忘れてるぞ」
多分わたしのことを指摘され、ネロは頬を膨らます。

4

雨の中

「…」
日本の夏は結構雨が多い。地域によっては違うけど、最近は地域に限らず本当によく降る。俗にいう、『ゲリラ豪雨』ってやつである。
あいにく、今自分はゲリラ豪雨に遭っていた。残念ながら折りたたみの傘すらない。
家まではそれなりに距離がある。別に誰かの傘に入れてもらうことは最初から考えていない。―そもそも、そんな友達などいない。
だから濡れても構わない、と豪雨の中を歩いていた。
でもさすがに雨のせいで風邪をひくのは嫌だから、普段通らない公園を突っ切る近道ルートを歩いていた。
あたりはもう暗いけど、公園の街灯でわりと明るかったし、―これぐらい暗くても、十分あたりは見えるから、困らない。
こういう時ばかりは、こんな自分でよかったなとちょっとだけ笑えた。もちろん心の中で。
ただ夜目がきくんじゃない―暗くてもほぼ平気なのだ。でもこんなことができるのはこういう”人がいない”ところだけ。
そういうことを考えながらぼんやりと歩いていると、後方から人が走ってくる音が聞こえた。自分と同じように、傘を持っていないから濡れたくなくて走っているのだろう。
近付く足音を聞きながら、パーカーのフードを深くかぶりなおした。
足音が近づき自分を追い越す、そう思ったその時―
「―ほい」
不意に、後ろから呼び留められた。ちょっと振り向くと、そこには小柄な少女がいた。
「…」
少女は真顔で折りたたみの傘を突き出している。
「…使いな」
「…」
「遠慮はいらない。この通りこっちには傘あるし…明日回収するからさ」
少女はちょっと笑って自分が持つ傘を傾けた。
こういう時は受け取るべきなのか―困惑していると向こうからもう1つの足音が。
「おい、急に走り出すなよ… 誰こいつ」
少女の友達らしき、走ってきた少年がチラッとこちらを見た。
「誰だか知らない…でもかわいそうでしょ? 傘ないし」
少女はなぜか面白そうに笑った。
「まぁそうだな… てかお前、早く帰らないと親にまた怒られるぞ?」
「はいはい分かってます~ それじゃあね、ちゃんとそれ回収するから」
少女はこっちに傘をやや強引に押し付けると、向こうへと歩き出した。
「あ、おめ…じゃ、気を付けて…」
少年はこちらにちょっと会釈してから少女を追いかけた。
あの2人にも、自分と同じような匂いがした。

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命令もどき、

手を繋ぎなさい
頭を撫でなさい
私を見なさい

そんな風に強気なのは頭の中だけ
本人の前では
所詮、私は弱気な女の子

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総決算

終業式があった。
高校1年生の年はもう終わり。

楽しい1年間だった。
不安を抱えて高校に入学した春。
友達や仲間と走り抜けた夏。
部活のことで少し挫折した秋。
自らの未来を考えた冬。
とにかく濃い毎日だった。勉強も部活も学校行事も、何もかもが充実しまくっていた。

私は中学校時代、あまり学校生活をエンジョイできなかった人間だ。
小さな校舎でわずかな同級生に囲まれ(しかもほとんどが私と合わない人種)、息苦しさを覚えていた。
でも、高校に入ると。
たくさんの気の合う仲間や先輩に出会えた。
本気になれる部活に入れた。
人も、部活も、何もかもが多様で新鮮だった。色々な選択肢の中から、私は自分に合った居場所を選ぶことが出来たのかもしれない。
今まで感じていた息苦しさが、少し和らいだ。

世界は広がった。
ここからが本番。
昔より広い世界の中で、精一杯羽を広げる。
高く、高く羽ばたく。

これが、来年度の私の目標。

1

お金と時間

学生の間はお金はないけど時間はある
働き始めるとお金はあるけど時間がない

お金も時間も手にするにはどうすればいいんだろう
でもそんなのは無理なのかな

ちなみに今必要なのはお金

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驟雨襲来

Blue tear な
rain shower
ぽつりぽつぽつ
気づいたら
滲む街かど
初夏の夕やけ
シュワシュワパチパチ
弾けるように
アスファルト
枯れた屋根をも
零して濡らせ
乾いた私を
服ごと濡らせ


〜〜〜驟雨〜〜〜
〜〜〜炭酸〜〜〜

こんにちは。ゲリラお題執行部です(←?)。
〆切まであと一時間と少しです。
今まで参加してくださった方々、ありがとうございました。皆さんの作品はちゃんとチェックしてますからね。レスは来週あたりに返します。
お題がお題だけあって、皆さんの作品平均して暗めですが、明るい作品でも大丈夫ですからね。
では。

0

雨上がり

水溜りに映る傘が減ってった
だけど、僕は傘は閉じない
なんでって?




これから雨予報だから。

2

 引っ越しの荷ほどきを終え、近所を散策していると小さなジャズバーがあった。ジャズがそれほど好きというわけでもなかったが、ドアを開けた。動画配信サービスで見たラ・ラ・ランドの影響を無意識に受けていたのかもしれない。
 客の年齢層は高かった。だいたいみんな六〇がらみ。七〇年代、八〇年代に青春を過ごした世代。狭い店内に加齢臭が立ち込めている。テーブルに案内された。もちろん相席だ。総白髪の巨漢。こちらに頓着することなく、一眼レフをステージに向けている。隣のテーブルでは、夫婦らしきがジャズそっちのけで言い合いをしている。夫らしきが妻のよくない点を述べ、妻らしきがすかさず言い返す。妻らしきは脊髄反射的に言い返しているだけだから説得力がまったくないのだが、妻らしきのほうが優位だ。一対一の関係では、話の通じないほうが勝ちなのだ。
 こうした夫婦は鳩同様、平和で豊かな世のなかの象徴だ。貧しくて豊かになる展望のない世のなかでは、夫婦は協力し合うしかないからパートナーに対する不満を口にしたりはしない。不満を口にするということは少なくとも食べることには困らない世のなかに生きている証拠。協力なんてものは負の産物でしかない。
 二曲聴いてから会計し、店を出ると、高校時代につき合っていたCにそっくりな女の子が少し離れた所に立っていた。Cは日本育ちのベトナム人。大人になったら日本国籍になると言っていた。
 Cの娘、ということはない。ここは千葉県。わたしが育ったのは神奈川県だ。
 Cそっくりな女の子がわたしに向かって微笑んだ。突然、雨が降り出した。
 わたしはCそっくりな女の子に駆け寄り手をとった。すると、ふわり、宙に浮かんだ。わたしたちは雨に濡れながら抱き合い、くるくる回った。
 いつの間にか、空高く昇っていた。わたしとCそっくりな女の子は雲の上に腰かけ、歌った。もう雨に濡れる気づかいはない。

1

涙雨

この雨はいつ止むでしょうか
私は雨に打たれながら
涙を流すことしか出来ません
あなたの温もりが欲しい

どうか行かないでください
あなたの背中を見送るには
まだちょっぴり勇気が出ません
大丈夫 大丈夫ですと言いながら
私はきっと泣いてしまうでしょう
こんな幼い私を許してください