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悪友 1.ヒズ ポイント オブ ビュー

昼とも夕方ともいえぬ時間帯、路地裏を歩く俺を、誰かが呼び止めた。
「あら、」
振り向くと、そこには長い髪を一つに束ねた長身の少女がいた。
「…フン、お前か。一体何の用だ」
「…別に用なんかないわ。たまたまアンタを見かけて話しかけただけよ…そう言うアンタは何してるの?」
少女はわざとらしく首を傾げる。その顔に浮かぶ笑みはいつになく憎たらしい。
「ちょっとコンビニにノート買いに行くところだ…お前は、塾にでもいくところか?」
俺は、彼女が背負うリュックサックに目をやりながら言う。
「ハズレ。友達ん家に遊びに行くところよ。…今思ったけど、アンタ、ホントはコンビニ行くついでに駄菓子屋にでも寄るつもりなのでしょう?」
「ぎくっ」
見抜かれた、と思った。やはりこの女を、俺は昔から騙しきることはできない。
「ふふふ、当たりね。どっちにしろ”ココアシガレット”のソーダ味バージョン買いに行くんでしょう? 私にはお見通しよ?」
「”サワーシガレット”な。いい加減名前覚えろ… てか、お前も行くんだろう? 駄菓子屋」
あら、お見通しなのね、と彼女はにっこり笑う。
「まぁな…お互いに色々お見通しなんだよ。そうでなけりゃこんな風に会話するようなことはなかろう?」
「そうね。一応私の方が年上だし、学校が違うのにこうやってお喋りできるのは、お互い似たようなものだからね…」
そう言い終えて、彼女はふっと目を細める。
「…こういうのを”腐れ縁”とかって言うのかしら」
それを聞いて、俺は違うな、と苦笑いした。
「…”悪友”が一番ちょうど良いな。…俺達は」

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もしも

君が僕の近くにいたのなら
こんなに好きにはなれなかっただろう
でも
君が僕の近くにいたのなら
こんなに苦しくはなかったはずだ
恋って
皮肉なことに近いのがいいとは
限らないのかもしれない

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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 3.セイレーン ⑨

「あの~、わたしが言うのは何か変な感じがするんですけど、…セレンさんの能力、上手く使ったら夢叶うんじゃないのかな…」
自信なくうつむきながらわたしは言った。
そんなわたしを見ながら、セレンさんは苦笑いした。
「まぁ、ね…確かに、”セイレーン”の能力って、上手く使えば人の注目集めて、有名になれるかもしれないけどさー…やっぱり、違うんだよねー」
セレンさんは、遠くの方を見つめながら続ける。
「結局さ、能力使って人の注目集めたとしても、それは”アタシ”じゃなくて、”セイレーン”の力なんだよねー。アタシ、”船戸 セレン”の力じゃない―歌手になりたいと願っているのは”セレン”だから、アタシの力で頑張らないと」
「…やっぱ、そうですよね…」
”使わない理由”は、なんとなく予想がついていたから、返答が思った通り過ぎて、聞いた自分にちょっとあきれてしまった。
「あと、”異能力”って、使い方間違えると危ないから…」
え、とわたしは思わず言った。どうして…?
「例えば、”セイレーン”。『周りの人の意識を集める』能力なんだけどさ、あんまり長時間使っていると、周りの人の”意識”がアタシに集中して、周りの人が周りの人自身がやっていることに対する注意が散漫になるでしょ? …色々事故とか、トラブルとか起こるかもしれないから、アタシも、”セイレーン”も、この能力はむやみに使いたくないんだ… ま、光る目が目立つから、ってのもあるけど」

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みんな、聞いて。

寂しくて泣きたくなる日もあるよね。
辛くてなにもできない日もあるよね。
でも、君だけじゃないよ。
僕達はひとりじゃないよ。

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世にも不思議な人々⑦ 彼女らにも名前を

少女1「こんにちはー…」
キタ「おお、いらっしゃい。待ってたよー」
オータロー「あれ、確か……」
ラモス「あれだ。この間間違えて入って来た奴。……と、もう一人いるな」
少女1「こちら、私のお友達です。彼女も能力者なんですよ」
少女2「………」ペコリ
キタ「ああ、喋れないのか」
少女2『でも、こうやって会話できます。こちらからの一方通行ですけど』
キタ「へえ。面白い能力だ」
オータロー「え、何があった?」
ラモス「雑談はここまでにして話進めんぞ。今回はお前らに名前をつけようと思う」
キタ「つけるの僕だけどな。で、君、能力はどんなの?」
少女1「私のは、『メトロポリタン美術館』の能力で……」
少女1の能力『良イ?私ノ言ウ通リニ説明スルノヨ?』
少女1「えーっと………。『私ができると心の底から信じたことなら、何でもできる』、です」
キタ「ありがとう。そうだな……リータ。リータでどうだ?」
リータ「分かりました。それで大丈夫です」
少女2『ねえ、私は?』
キタ「そうだったね。何て曲なんだい?」
少女2『みんなのうたで、初めて流れたボカロ曲の「少年と魔法のロボット」です』
キタ「OK。じゃあ…、マホ。これで良い?」
マホ『はい!ありがとうございます!』
ラモス「案外とあっさり終わったな。何か話題ないか?」
オータロー「そうだな。今日来るとき見た変な奴の話とか?」
キタ「どんなの?」
オータロー「この暑いのに、コート着てフード被って歩いてた。流石に袖まくりはしてたけど」
マホ『えっと、不審者だね、ねぇリータ』
リータ「そうだね、マホちゃん。不審者だ」
キタ「不審者だね」
ラモス「不審者だな」
オータロー「これは新キャラか?」
キタ「真相はまた今度な。今日はもうお終い。解散!」

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Ω

憧れていた青春が始まった気がした

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もう一歩、前へ。

一つ、二つ、三つ、四つ。強くなるため、勝つために、ただ前へ。

五つ、六つ、七つ。まだ進む。強くなるため、勝つために。

立ちはだかるもの斬り伏せて。王の首は頂戴いたす。

すれ違いざま斬りつけて。王のもとには行かせない。

敵地に辿り着いたらば。僕も強くなれるはず。

ここが敵軍最奥か。私の力、見せてやれ。

ここまで来たらこの力。王を討ち取るために使おうか。

我らが敬愛する女王よ。貴女の遺志、私がきっと繋ぎましょう。

王手。お前の『詰み』だ。

チェックメイト。貴方の負けです。

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協調性

「みんなと仲良くしましょう」
「周りともっと関わりましょう」

僕は隣であの子が笑ってくれたら
それだけでいいのに。