多分、多分だけど、半分確信もしている。いや、どうだろう…どうかな。いや、多分。
僕は今、大気圏に突入している。
理由はわからない。寧ろ教えて欲しいくらいだ。月面旅行の計画なんて立ててないはずだが。
「あら、だぁれその子、お友達?」
見知らぬ背の高い女子生徒は、どこかわざとらしく尋ねる。
「うん、友達、ついさっき友達になったんだけどね」
亜理那がそう答えると、誰かは知らない女子生徒は、チラとわたしの方を見やった。
「…面白そうな子ね」
彼女はそうとだけ言って笑うと、亜理那にじゃあねとだけ言って、階段を階段を駆け上がっていった。
亜理那は、うんじゃあね、と彼女を目で追いながら手を振った。
「…今のは…」
わたしは思わず呟いた。
「あ、あの人? まぁ知り合い的な? そういう感じ~」
亜理那は笑顔で答える。
「もしかして異能力者?」
わたしは間髪入れずにさらに聞いた。というのも、何となくそんな気がしたからで。
「あ~、そこらへんは言えないな~」
だが、彼女はそう言って笑うだけだった。
そして、ほらサヤカ、帰ろう、と言って階段をまた下りだした。
…どうして亜理那は、彼女が異能力者かどうかハッキリ言わないのだろう。そして今のは一体…誰?
わたしはさっきの女子生徒の事を気にしながら、亜理那に続いて階段を下りて行った。
〈4.フェアリー おわり〉
「で?そのmorisakiとかいうポエマーが2Aの浅香君だと?」
「まだわかんない!かもしれないってこと!」
「そ、そう…」
「あんな凄い詩書く人が隣のクラスとかやばいでしょ!」
「ポエム書いてるとか浅香君がヤバそうだけど。」
もう40日目となる僕らのかくれんぼ。残るニゲビトはあと5人らしい。コンクリートに囲まれたGPSは反応が無くなってしまうことは僕だけが知っているらしい。車椅子をのろのろと進める。鼠色の雨雲に、レッチリのカリフォルニケーションが似合いそうだ。さて、そろそろかな。
月の満ち欠けと
火の海の海月を
水槽に移しながら
木陰で火葬場を見ていた
金網の向こうでは
土葬が基本
日和った頭を閉じ込める
生きることはそんなに辛いですか?
復讐はいけないことですか?
赤い空が見たいと願うのは
中二病の始まりですか?
きたない大人にあこがれるのは
異端者のすることですか?
愚者は社会に出てはいけませんか?
空気が凍ったら笑ってもいいですよね?
誰かに助けを求めれば、
私は救われますかね?
もしそれができたら私は天に帰りたい。
赤い紅で花を咲かせて
良い香り?
冗談じゃない
水やりは貴方の仕事
花の匂いは知らないの
私、美しさなら知ってるわ
「それがね、僕の思い込みだったみたい」
「そうなんだ」
「うん。きっと相手はどうでもよかったんだよ。 僕のことなんか。」
「そうかな」
「なんで?」
「いや、なんとなくね。」
「そっか」
「うん、きっと君のこと相手はずっとずっと好きなんだと思うよ」
「なんで?」
「いや、なんとなくね、そうおもったんだよ。」
倒れた原因は、「有り得ないくらいの高熱」だそうだ。
医者が言うには、
「よくあれだけの熱で、学校に行けて授業が受けられたものだ。あのまま倒れ続けていたら、確実に死んでいた。偶然通りかかった人がいたから、失明だけで済んだ。失明だけで、本当に良かった」そうだ。
しかし正直私には、どうやってここにいるのかとか、危機一髪だったとかは、どうでも良かった。それどころか私は、医者の言う「失明だけで良かった」という言葉に憤りすら感じた。私に重要だったのは、今から一生全く目が見えないという事だけだった。
『もう、本が読めない』
その事実は、本が一番大切で、読書で生活がまわっているような、孤独な十七歳の少女には耐えられない現実だった。
入院してから一週間で退院した私は、「一人じゃ歩けないから」と、車椅子に乗せられた。私の緊急事態に母が呼んだのだろう。退院する日、父が来ていた。そして、私達は車に乗り、父の運転で私は自分の家まで帰ってきた。車から降りた車椅子の私を母が押し、家の中に入った。母に車椅子を押されながら、私は何も考えられず、ただ車椅子の上でボーっとしていた。しばらくすると、ドアが開く音がして、
「ほら、あなたの部屋よ」
と言いながら母が私を部屋の中に入れてくれた。私はあまり働かない頭のまま、記憶の中の自分の部屋を思い浮かべた。
自分の机・ベットやタンス、机……。そして、部屋の大部分を占めている本棚……。
それを思い浮かべた途端、私は母に
「ごめん。ちょっと気持ちを落ち着かせたいから、一人にして」
と言った。母が部屋から出て行き、ドアが閉まる音を聞いたのを合図に、私は車椅子から立ち上がった。そして、手探りで机などから伝い歩き本棚につくと、そこに入っている本を掴み、床に投げつけた。そこから私は、手当たりしだい本達を投げていった。
「……んで。……、なんで……。なんで。なんで。なんでっ!!」
落ちた本で足が滑りそうになる中、そう叫びながら本を投げ捨てていると、涙がとめどなく溢れてきた。
「なんで!! なんで……。……なんでっ……」
~続~