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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 5.クラーケン ④

「さすがにそれは知ってるよ!」
わたしはとっさに言い返す。…やっぱり、相変わらず美蔵は性格が悪い。
「…だからこれから行くとこ」
「あっそ」
美蔵ははつまらなさそうに言った。
何なんだか、こいつ…わたしはそう自分の中でため息をついた。
―美蔵、美蔵 健司。かつてわたしと同じ小学校に通ってた人。
人が好さそうだけど、皮肉屋で変わり者。
そのため多くの生徒から、”変人”とか認定された、クラスの異端児のような存在。
でも別に悪い人じゃない。…ちょっと口は悪いけど。
1回同じクラスになって、何度か話した事はあるけれど、話してて割と楽しい人だった。
…まぁ、こちらが理解できない事をちょいちょい言ってたが。
お互い別の中学に進学したので、小学校卒業以来、ずっと会っていなかった。
…だからと言って、久しぶりに会えて嬉しいというワケではない。それでも彼は相変わらずだったのでなんか安心した。

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じゃあ

じゃあ私は
巧くことばを
紡げるの?

まっすぐ
伝わるような
綺麗なことばを
あなたに送りたいよ

どうしたら
書けるの?

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バロックに幸あれ。

思いつき。ただの思いつき。
明日も部活と学校だと思ったら
なぜか足が重くなったの。
このままじゃ寝れない。
この暗がりにテレビをつけて
朝日が昇ってくるのを
ただ
見つめていたいの。
朝一番に貴方に甘えたいの。

………だめ?

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マネー

貯金が多い人の話より、借金が多い人の話のほうが面白い。

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よしなし

「子どもはピーマンが嫌いである。少なくとも食べていきなり好きになった人はいないだろう。なぜなら子どもの腸内にはまだ野菜のアルカロイドを分解する菌が育っていないからである。野菜の苦味は毒素と考えてよい。もちろん野菜を食べることで育つ。母乳の影響もあるだろうが。
 子どもに好き嫌いをしてはいけないというが、そもそも日本人の腸はピーマンなど外来の野菜を分解するのに向いていない。ピーマンやほうれん草が嫌いな子どもがいても蕪が嫌いな子どもはあまりいないだろう。トマトも野生種に近いような酸味の強い種が敬遠され甘い物が志向されてきたのは日本人に合うからである。
 ピーマンのような凶暴な文化を取り入れなければ大人になれないのが現代社会である。メタファーとしてのピーマンを、わたしは食べることができたのだろうか」
「おじさん、急いでるから早くしてくれる?」



「はーい。今日は最近、SNSで話題になっているパン屋さんに来ていまーす。……こちらのあんパンは一〇円。こちらのクロワッサンは五円。どうしてこんなにお安いんですかぁ?」
 レポーターがマイクを向けると、感情移入を拒絶する爬虫類の目で店主は言った。
「腐ってるんです」



「人類だってバクテリアから進化したものだ。バクテリアにだって意思はある。人間の意思はバクテリアの延長だ。それを自動機械ととらえるかどうとらえるかは自分しだい。バクテリアの記憶も脳の記憶も筋細胞などの記憶も同じものなのだ」
「君がそのバクテリアなのだ」
 だそうだ。


 久しぶりに銀座に出た。老舗デパートのレストランでフレンチを食べた。料理を写真に撮り、インスタにアップした。
 冷たいものが飲みたくなったのでコーヒーショップに入った。学生時代の友だちから、ラインが来ていた。結婚するのだそうだ。適当なスタンプを送っておいた。
 父からラインが来ていた。スルーした。
 ワンピースを買った。帰宅してから、インスタにアップした。いいねがたくさんついた。
 バスグッズを並べて撮影し、インスタにアップした。
 髪を乾かし、ネイルを落としながら動画を見ていたら眠くなった。寝不足が続いていたので、早めに寝ることにした。
 ベッドに入り、朝から一言も発していないことに気づいた。

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口紅

午後の西陽になにもかも色褪せてしまった
黄色いセロハンテープがついたアルバムを焼き払った灰が舞う 火の粉が舞う

ゴミ箱の傍らに落ちたティッシュに滲んだ真っ赤な口紅

───あんたの顔なんて誰も見やしないのになんで毎日顔をつくるんだい?



嗚呼なにもかも忘れてしまったな
生まれたところも自分の齢も、誕生日もなにもかも。言葉も文字もなにもかも。

──全部あんたには要らないだろう?無駄なものは早く捨ててしまっていいのさ。


嗚呼なにもかも忘れてしまったな

──あら、貴方はだあれ?

折れてしまった口紅の欠片を握り
鏡に紅を引く。


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高く高く

ヘリウムガスの風船と

二酸化炭素混じりの息で膨らんだ風船

そんくらいの違い

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蝕欲

おはよう
なき声がしたけど大丈夫?
かみなりがすごかったものね
すぐに朝ごはんにしようね
いただきます
たいやきはおやつに食べようね

い識が戻ったら
ただいまって
だれかに言ってみたかった
きもちの行き先がわからなくて
まだまだおなかは空っぽで
すきすぎてさめていくのを感じた

ごめんなさい
ちょっと魔が差して
そんなつもりはなかったの
うそみたいだけど
さわればわかる
まちこがれた最後の晩餐

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誰かの詞

字でわかることの美しさ
穢らわしさからの難しさ