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屋台巡り

人が消えた屋台の並びにも
灯りは煌々とゆらめき
流し灯籠と屋台の電飾
地面に落ちて燃える提灯
辺りには食べかけの残飯と
浴衣やなんやらが散らばり
僕はたった一人で
街路の真ん中を歩く
やがて提灯の炎は
その体躯を引き伸ばし
巨大な紅蓮の怪物となって
僕に覆い被さる

この怪物と一緒に
祭りの屋台を巡るんだ
君が待つあの場所まで
もう少し待っていてくれ

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後輩

親の性欲で産まれ、

身勝手な愛に育ち、

飽きられ、

迷惑がられ、

それでいて彼らの責任に寄生し、

翔ぶことも許されず、

またそんな勇気もなく、

上手に生きる事もままならない。


全てが楽しい事だけなら、生きていたいと思えるだろうか。

辛い事だけなら、簡単に翔べるだろうか。



「先輩。この先の人生が、必ず楽しくなると約束して下さい。」





二つしか違わない後輩の言葉に、僕は何も言えなかった。

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下町裏物語  一百鬼夜行編一

空が橙色に模様替えし、夜がインターホンを押す時刻の縁側
「ねぇおじいちゃん百鬼夜行って何?」
今年小学3年生になった雷太は言った 
「百鬼夜行ってのは、読んで字の如く。百を超える鬼や妖怪達が夜に行進することだよ」
「へぇ〜行進かぁ〜…なんだか運動会みたい」
そう言って雷太はくすくすっと笑った
その時、おじいちゃんが思いがけないことを言った
「雷太、百鬼夜行見てみたいか?」
「え?見れるの!?」
「あぁ見れるさ。お前がソレラを信じるならな」
「ソレラって何?、本当にいるの?」
「…人間が皆寝静まった後、この紅月町の火輪神社をソレラは通る。どうだ行くか?」
「うん…行く!」
雷太は戸惑いながらも少し、いやかなりワクワクしていた。今年で151歳となるおじいちゃんが、いまだに真っ黒な目を紫色に輝かせる満月の夜はいつも何かが起こるサインなのだ。やけに夜になると元気になるおじいちゃんは雷太にこう言った。
「このことはお母さんには内緒だからな。夜遅くにお前を連れ出したことがバレたらワシはもう…お前のお母さんは鬼より怖い」
「あはは、おじいちゃんはお母さんに頭があがらないもんね」
おじいちゃんはその長い後頭部をポリポリとかいた
どーんと言う音が町中に鳴り響く。おじいちゃんにとって何度目になるのだろうか。紅月町一番の大イベント、
紅月妖蘭花火大会が始まった。

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8月3日0:00 START

赤い唐傘持った着物姿の女の子
りんご飴持って走り回る一つ目の童子
浴衣姿の妖艶な九尾のお姉さん

近づいてくる祭囃子

さあ 始まるよ

星たちが輝く夏の空の下
繰り広げられるは不思議な祭り

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乱視を無理に矯正するように
目の奥に緊張が走る。
焼きそばを握りつぶしてしまう程に
全身が強ばっている。

とん と肩を叩かれ、ビクッと振り返る

「相変わらずハルク並だね、そーいうとこ」
「やめてよ。ハルクじゃ別の怪人だろ?」
「…いるんだねぇ。こんな所にも」
「うん…しかも凄い数…」
「正義のヒーローやっちゃいますか?」
「ださい台詞だな。てか俺ら正義のヒーローって感じじゃないでしょ。」
「悪vs悪?」
「言えてるかも。」

握りつぶした焼きそばをゴミ箱に投げ、
自分の体が舌から順に蛇化していく感覚に包まれる。
これがなんとも気味が悪い。
自分でも好きになれないのだ。

「いこうか?」
慣れない狐顔に顔を引き攣らせながら
隣の化け物はニタリと笑った。
「なんでお祭りで悪怪狩りなんてしなくちゃいけねーんだろーね。」
「見て見ぬふりすりゃよかったね。俺らほんとワーカホリックだなぁ。」

人混みをすり抜けながら、鎌鼬やら人魂やらを次々に捕まえる。
狩るとは言ってもとっ捕まえることがほとんどだ。

「ふぅ。とりあえずこんな所かな。」
「おい…おい。」
「なんだよ」
「なんか今日…変じゃないか?」
「え?」
「土日のお祭りだからかな…『もっと来る』気がする。」
「もっと?」
小さくなった網の中でモゴモゴとうごめく魑魅魍魎に目をやる。小型妖怪は妖気で閉じ込めるのが大抵だ。
「ぬらりひょんの臭いがした。それから小豆洗い。酒呑童子…」
「嘘だぁ。お祭りだから変な感覚するだけだじゃない?」
「そうかな…」
ぐふっ…!
「い、いってぇぇええ!」
「え?どうした?」
「やっぱ、いるね。今パンチくらった。」
「やっぱり?!待って、すぐ本部に連絡するから」
「いいよ、それより鬼呼んで、あいつも今日非番だろ?」
「毒が回ったらどうすんだよ!…もしもし!?オロチがなんかにやられました。腹です。少し裂けてます。」
キュービの緊張気味の言葉尻から、今年の夏祭りはちょっとめんどうなことになりそうだと、痺れる腹部を押さえながら、逆に冷静だった。

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神の夏祭り おまけ

別に誰もいない夏祭りでもよかったんだが…
花火が…見たかったんだ!