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片道切符

「黄泉比良坂まで」

人の行き交う仄暗いプラットホーム
たったひとつの荷物を抱え
錆び古びた列車に乗り込む

無音の喧騒
いちばん端の椅子に座り
列車の揺れに身を任せる
ゆらり ふわり
心無しか少し身が軽くなっただろうか

幾つもの踏切 鳥居 卒塔婆を
ゆっくりと通り過ぎてゆく
隣の乗客は徐ろに煙草を取り出した

誰の顔も分からない逢魔時

ふと窓の外
恐ろしいほどに鮮やかで
どうしようもなく美しい
真っ赤な夕焼け
燃え盛る一面の死人花

嗚呼、綺麗だな
なんて興味無さげな声を舌先に転がす

「もうすぐ日が落ちます」
手練たような掠れたアナウンス

夕焼けはどこかへ溶けて消えてしまった


あなたは何処へ向かったのだろうか
どうか私の向かう先に
その真っ白な死装束のまま
待っていてくれますように

どうか何も変わらぬままに


死に急いでいた
死に急いでいた
彼に頼み込んで
ようやく死んだのだ

後悔しないように
あなたと離れ離れにならないように
ひどく死に急いでいた

回る
回る

すっかり冥くなってしまった
あなたな未だ待っていてくれるだろうか
ぽつりぽつりと灯籠に灯が入る
幽冥に滲んで川を下ってゆく

片道切符を握りしめて
この汗ばんだ手に
くしゃくしゃになった紙切れをひとつ
ただただ大事に握りしめている

嗚呼何もかも忘れて仕舞いそうだ
あなたの顔もその声も名も
眠たくて仕方がないな


終点に着くまであなたは
待っていてくれるのだろうか

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夕方

二人きりの教室で
5時のチャイムを真似てみせた
あの日の君の赤く染まった顔が
とても綺麗だったと
それだけは覚えている

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ねこ

猫 死んでたよ 道端
お前 思い出した

好きだった 世界から
お前 いなくなった

世界で1番が何とか 興味ねぇよ
ふざけんな 早く 会わしてよ

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世にも不思議な人々に訊いてみた ver.キタ

Q:どーも皆さんこんにちは。ナニガシさんですよ。今回は我らが不審者、キタさんに色々訊きたいと思います。
A:はいよろしく。
Q:まず第一問。自分の能力を漢字一文字で表すと?
A:『視』。『みる』は沢山あるけれど、可視化という意味でやっぱりこれだな。
Q:次。自分の能力当たりだと思う?外れだと思う?
A:これ以上無いほど当たりじゃない?
Q:さいですか。次。本名教えて☆
A:ナイショ☆
Q:駄目か。
A:駄目です。
Q:仕事教えて☆
A:教えない☆
Q:くそう。何か質問ある?
A:このシリーズどこへ向かってるのさ?
Q:ああ、それね。それなんだが、実はただ単に日々思いついた『こんな能力あったら面白いな』っていうのをオマケの物語と一緒にあげてるだけなんで、どこへ向かうとかは無いんですよねー。
A:そうなのか。
Q:そうなのです。まあそういうわけで、本日はありがとうございました。

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世にも不思議な人々特別編 言葉の旅

「なあ、おい……」
「んー、何ー?」
「これ、お前の仕業だよな……?」
「これって?ああ、それ?そうだけど?」
「やっぱりお前か!ふざけんな!早く元に戻せ!何で俺、クトゥルフ神話の旧支配者みたいなことになってんだ!」
「私の能力で『ウナギ』って言葉のイメージを君に定着させたからね」
「くっそ、この前は『水』だろ、別のときは『吸血鬼』だったろ、また別で『本』のときもあったよな、確か」
「『筆』もやったよ」
「そのへんはまだ分かった。けど何で『ウナギ』でクトゥルフなんだ?」
「だってウナギってさ、深海で生まれるでしょ、ぬるぬるぬめぬめでにょろにょろしてるでしょ、よく分かんない生態してるでしょ、そのイメージを合わせた結果がそれだよ」
「何なんだよそれ。じゃあ『人間』とか定着させれば良いじゃあねーか」
「良いけど、私が人間に対してどんなイメージを持ってるか分かってる?」
「ああもう分かった。止めてくれ」
「っていうか君の能力で元に戻れば良いのに」
「ああ、その手があったか」

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空日記

PM16:30

柔らかくなった青に一筋のひこうき雲

ファスナーのようなそれを開けたら

どんな世界が広がっているのだろう

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種を蒔く人

今夜は汗ばんで寝付けないから
一晩かけて私と貴方の相性を教えて
代わりに私は貴方に愛情を注いであげる
シングルサイズの海に溺れてないと
貴方と私を繋いでないと
愛が溢れて嘘になっちゃう
白く白く白々しくなっちゃう
愛を注いで 愛で繋いで
手を繋ぎながら唇も繋いで
離れても光ってる糸を残していって
才能の螺旋を感じたいの
お腹いっぱいにしてくれる?

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美容師になります。

すきとか
きらいとかよりも
ばいとのほうが大事だった
さいごの青春のなかにいたのは
みみをだした君でした。

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本日の魔法講座 その496

くるぶしまで浸す「明後日が嫌」の波に
3ヶ月さきに聴くあなたのうたを灯そう

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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 6.ハルピュイア ⑮

「…ネクロマンサー」
鷲尾さんは彼女の手にある黒鎌を見て、ぽつりと呟いた。
「え、鷲尾さん知ってるの?」
思わず聞くと、彼女はちょっとびっくりしたように答えた。
「…ま、まぁ、”ネクロマンサー”は”異能力者”の中でも有名な方だし…」
「マジか」
「まぁな。”ネクロ”はかなり強い能力だから、出会った事なくても噂とかで知ってること多いからな。あと異能力者って自分の能力の前の持ち主の記憶引き継ぐから、それで前の持ち主が出会ってたりして知ってるって事も多いし」
”ネクロマンサー”の名が意外にも知られている名前である事に驚くわたしに、耀平がさらっと解説する。
「そうなんだ…てか、ソレどっから出てきた」
そんなものさっきまでなかったよね?とわたしが聞くと、…コレ?と赤紫色の目を鎌に向けながらネクロマンサーは答えた。
「…”具象体”。”異能力”のどんなに引き継がれても変わらない”意志”が具象化したモノ。でもこんなモン出せる奴はごく一部だから勘違いすんなよ」
「…はぁ」
何か彼女にしては難しすぎる言葉の数々に、わたしは圧倒されてしまった。