…そう考えると、やっぱり普通の人間である自分がこういうモノを知ってしまった事って、かなり大変な事だと改めて思った。
「…あの時代らへんだと、異能力者同士でも疑心暗鬼だった感じだよね」
不意にネロが呟いた。
「まーそうだな。同類だけど、自分にかけられた疑いを晴らすために他の能力者を売ったり、な…」
「それで巻き込まれた異能力者結構いるはず」
「…実際過去のレイヴンはそれで処刑されました」
「え、処刑とかあっさり言っていいモンなの⁈」
みんなががちゃがちゃ言う中、平坦な口調でかなりおぞましいことを言った黎に、わたしは後ずさる。
「…いや、実際にあったことだし」
言った張本人は、別に驚くわけでもなく淡々と答える。
「まぁ、マジメに考えればあの時代結構どうかしてたよな~」
「だよね。”魔女”や”魔法使い”だけじゃなくて、所によって異能力者は、”悪魔”やら”化け物”やら、すごい時は”神の化身”的なモノとか…」
「そもそも光る目や、能力発動時と非発動時で、同じ人格の別存在という感覚自体が普通の人間離れちゃってるから…」
「…やっぱり、世のオカルトな事って、かなり異能力者が絡んでるような気がする…」
鷲尾さんがそう言ったところで、がやがやと話していた一同はうなずいて沈黙した。
光も水も届かない。
あたりまえの幸せは
量産型の便利への甘えは
壊れて、はじめて、気がつくものだ
「数日後には元に戻るだろう」
あら、随分と呑気な顔ね。
いただきますを
言わない君が
嫌で厭でたまらなくなって
空の先の宙をのぞいたら
君がいた
君は僕に「大好き」って
言ったけど
僕は君に「大嫌い」って
もう言えないんだよ
君もだよね
お互いすれ違ったままさ
大好きだったよ。
泣きたくなる様な青空の下
バスの窓から外を見ていた
馴染みの街の見慣れない景色
ずっと夢を見ていたかった
ずっと笑っていたかった
空に溶け切らない乾いた笑い
残るのは虚無感
現実なんて何処にも無い
全てが仮定
ぐるんぐるん廻り続ける世の中
伸ばした手は空を斬る
夢なんて見なきゃよかった
ふーん なるほど かなり
どうでもいい
ふーん やっぱり ひどい
あめだ
ふーん なるほど かなり
すてき
ふーん どうでもいいのに
きくよ
書き殴った汚い言葉達は
破っても破っても
なんで僕から消えないんだよ
幸せってなんだ
寂しいってなんだよ
「つーかーまーえーたァッ!」
伏見は一つ目小僧のほぼ真上から首と右腕を、安芸は地面を這うような低い姿勢で両脚を捉えた。
「よーし捕まえた……ってあれ?何だこれ?」
しかし、彼らが捕まえたのは、一つ目小僧のものらしき右腕と両脚の膝から下、そして生首だけだった。
「うわっ、気持ち悪っ」
伏見がそう言っている間に、それらは消えてしまった。
「……お華さんや、どう思う?」
「これがあの一つ目小僧の能力なんでしょうね」
「もう一度だ。今度は声を出さないようにしなくっちゃね」
「やっぱりあれが原因でしたかね?」
再び追跡開始。今度は無事に組み伏せた。
「ぐああ、離せー」
既に人間の顔に戻ってしまった一つ目小僧が抵抗する。
「いいや、駄目だね」
「一体何が目的だ!?金なら無いぞ!」
「いや、別にそういうんじゃあ無いんだ。ただ君さ、能力者なんだろ?僕らも同類だからさ」
「え!じゃあお前達も異能力者なのか!?」
一つ目小僧を組み伏せたまま、会話が始まった。
「ああ、その通りだ」
「へえ、じゃあいつその能力に気付いたんだ?」
「いや、別に、手に入った時に自覚したんだが」
「ん?じゃあそっちの子は?」
「んー、気付くっていうのはちょっと変な言い方ですね」
「思い出した、の方が正確か?」
「いや、後天的に身に着いた能力だし」
「……は?」
一つ目小僧が倒されたまま、右手を軽く握った。その瞬間、伏見の腕と言わず、脚と言わず、頭と言わず、首と言わず、肩と言わず、腹と言わず、体中に人間の右手のようなものが取り付いた。
「うわ、何だこれ」
「お前ら一体何なんだ!?少なくとも俺の仲間でだけは無いね!」
そう言って軽く右手首を上げると、その動きに対応するように取り付いた右手が一斉に伏見の身体を引っ張り、引き剥がした。
「後天的、だぁ?何ふざけたこと言ってるんだ、能力は前世から引き継がれるもんだと相場が決まってんだぜ!」
そして一つ目小僧はまた逃げ出してしまった。
一つの言葉が支えとなる…
一つの言葉が刃となり盾となる…
一つの言葉が全てを可能にしてくれる鍵になる…
言葉が先に導く進む道となる。
二人揃って一人の人
一人では立てない。二人だから支えられる…
一人では見えない。二人だから乗り越えられる…
一人では淋しい。二人だったら暖めあえる…