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ウイルス

君が普段から言ってる何気無い一言も
僕にとっては一生かけても言えないとても難しいこと

僕にとってはいつも通りだけど
君にとってはなかなかできないことかもしれない

僕にとっては命を懸けても手にいれらないものでも
君にとってはいつでも手に入れられる小さなものなんだ

仕方ないって簡単な言葉にまとまってたまるかって思うけどやっぱり仕方ないこと

人生なんてそんなもん
まぁ君より優れてるとこなんて全然ないんだけど
ほんの少しの優れてる部分は何を犠牲にしても守り抜く

絶対

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恋文

縦書きの 恋文を 途中だと 言い張って
あまりにも 雑な字で まるで落書きみたいだね
宛名のない 封筒に 手の平のなかで皺をつけて
勝手にバッテン貼り付けて
抽斗のなかにしまい込んだ
葉書のなかに詰め込んだ文字たちが
疼きながら 精一杯 藻掻きながら
ぼくをポストまで連れていく

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一品物

恋愛、友情、挫折、屈辱などの食材は、
育った環境で善し悪しが変わる。
ただ、どんなに質が悪くても、
思考という火力と知識と経験で味付けをして、
時々休養で味見をしてバシッと味が決まれば。
それがアイデンティティ

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桃太郎ローン

 むかし、桃太郎がいた。桃太郎は桃から生まれただけあってカリスマ性があった。ゆえに自然と金も集まる身分となった。桃太郎は中学時代の同級生、商工会のみなさんなどにおされ、大統領に立候補した。公約は、武器を捨て平和な国家を作ろう。桃太郎は見事大統領選に勝利した。
 桃太郎が大統領に就任してから二日後、桃太郎の国に鬼が攻めてきた。桃太郎の国は三分の一の人口を失った。なぜ三分の一ですんだのか。降伏したから? 反撃したからだ。桃太郎は他国に搾取される道より公約違反を選んだのだ。桃太郎は武器商人に通じている高校のパイセンの力太郎に頼んで武器を調達し、傭兵を雇って鬼を撃退したのだ。
 精神文化が高くなり、平和路線を目指したとたん野蛮な国が攻めてきて滅ぼされるのが世の常。でも大丈夫。お金さえあればね。急な出費には24時間いつでも審査オッケー。キャッシングなら桃太郎ローン。

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サーカス小屋    #ピエロのカフカ

「生きていてよかった」「即死となりうる状況だったんだよ」
「もう、綱渡りは無理だけど……」そのあとの言葉を続けられる者は、誰もいなかった。
「本当に、運がよかった」本当に運が良ければ、こんなことにはならなかった。
あの日、私は「綱渡りのサン=テグジュペリ」の名をもらった。猛獣使いのアンデルセンと共に、ライバルたちからの、痛いほどに冷たい拍手を受けた。
 私は今、幸せの絶頂にいるのだと思った。襲名できなかった者たちの視線の矢でさえも、心地よく思えた。でも、人生はそう簡単なものではないらしい。
 真夜中に、私たちの瞭の部屋が燃えた。私は、ルームメイトで唯一の生き残りだった。
 理事長は、私を気の毒そうに気遣ってくれた。優しい言葉の方がきつく刺さるのだと、初めて知った。
 綱渡りは、我らがサーカスの花。美しい者のみが、その名を名乗れる。私のサンテグジュペリ人生は、一日足らずで終わった。顔の右半分が、ひどいやけどを負った。よりによって、観客の方を向いた右側。私は、見た目で役を下ろされるような、こんなサーカスにあこがれていたのか、と自分に落胆した。
 今、私は、二位の実力を持った「サン=テグジュペリ」の前座を務めている。
 顔を隠す、ピエロの仮面をかぶって。
 屈辱的だと思った。新たなサン=テグジュペリ」を、呪ってやりたいと思った。でも、現に今、私はジャグリングを披露している。心なしか冷やかしに聞こえる拍手を背に、ステージを後にする。
 サン=テグジュペリ」が私と入れ替わりにステージに立つと、大きな歓声が上がった。私はそっと、三面鏡の前でピエロの仮面を外す。醜いやけど跡に自然と目が行く。思わず化粧台を思い切り叩いた。
「誰が 助けてくれと 望んだ!」
なぜ、あのまま死なせてくれなかったのだろう。それは、人間の優しさであり、醜さなのだろうか。

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メランコリックガール

深夜二時雑音だらけのラジオスピーカー
宵闇に吸い込まれていった少女
それでも変わらず日が昇る
排気ガスに吹かれ揺られるロングヘア
片耳の聞こえなくなったイヤホン
何にも聴かず耳に差しているだけ

あの子の縫い目はほつれたまんま
自分でさえ手が届かなくって
夜海の奥底にたったひとり蹲って泣いている

私はひとり山椒魚
みんな早足私をすり抜けて雑踏
また日が昇り夜が来る

誰も知らないメランコリックガール