こんな夢を見た
______________________
友達のAちゃんとは過去に仲よくしていたが、性格や考え方が違いすぎて合わなくなり、昔に比べて少し距離があった。
そのとき私は教室にいた。他にもクラスメイトは15人くらいいた。そのなかにAちゃんもいた。Aちゃんは包丁を持っていた。そして他のみんなに構わず、一直線に私に向かってくる。刺されそうになったが、必死に避けたり止めたりした。
______________________
あのとき私は、必死に生きようとしていた。おかしいな。こんなにも死にたいって思っているはずなのに。なんで生きようとしていたんだろう。
生きなきゃいけないよ、と誰かに言われた気がした。
沢山の街があったり国があったりする
でもそれは世界から見れば宇宙から見れば
世間単位の規模でしかない
なんて簡単な構造なんだろうと思えるくらい世間は小さいよ
次が見たいならさ
飛ぼうよ 世界へ
企画は、何のレスポンスもないまま終わった。
スポーツジムに入会した。もちろんプールつきのやつ。
自分にはこれしかないんだ。
水泳選手は無理でも、インストラクターだったらいける。
学校帰り、久しぶりに水に入った。
三往復したあたりで、わたしは何者かに排水口に引きずり込まれた。
半身を起こすと、少し離れた所に河童がいるのが見えた。
河童が口を開いた。
「俺の棲家の情報を誰からきいた」
「情報?」
何を言ってるのだろうか。ここは、寒い。
「小説に書いただろう」
「……あれは、山椒魚の話ですけど」
「とぼけるな。とにかく、誰から教わったのか吐くまで帰すわけにはいかない」
わたしは安易に作家を目指したことを本気で後悔した。
「誤解です。帰してください」
河童が近づいてきた。小六のころ妖怪大百科で見た河童とリアルのやつは全然違ってた。干した毒蛙みたいな顔をしていた。
首筋に息がかかった、腐った卵のにおいがした。わたしの恐怖心はマックスに達した。瞬間、脳内に強烈な光が広がるのを感じた。
覚醒したわたしは左手をチョキにして目つぶしをくわせ、間髪を入れずグーにした右手を河童の頭頂部にたたきつけた。
河童の皿割れた。
小説投稿サイトをスクロールしてたら、『本気で作家を目指す女子高生の集い』という企画が目にとまった。
水泳部を引退してからとくに目標もなくだらだら過ごしていたわたしはこれだと思った。
小説を書いたことはないが読むのは好きなほうだ。
企画主の小説を読んでみた。
本気で作家を目指すだけあってやはり上手い。
初心者の作品なんかボロクソにけなされておしまいだったりして。
同性同士の集まりだから派閥みたいなのができるかもだし。
でもこれきっかけでデビューできるくらいのレベルになるってことも。
とりあえず書いてみた。
あなたは女子高生、校内の水泳大会に向け、市民プールでこっそり練習することにする。あなたはおとなしいが負けず嫌いで、かつ、努力しているのをひとに見られたくないタイプ。
入念に準備運動をし、水に静かに入る。息を整え、背泳ぎを始めようとする。すると、監視員が笛を鳴らす。
「ちょっと君!」
自分のことのようである。あなたは怪訝な表情で監視員を見返す。
「今日は背泳ぎ禁止デー!!」
いつものあなたなら、何それ、と思いながらもしたがうのだが、今朝お母さんとけんかしてむしゃくしゃしていたのと、夏の解放感から、無視して背泳ぎを再開する。ターンしようとしたところで、あなたは排水口に引きずり込まれ、意識を失う。
ひんやりとした空気。あなたは湿った岩の上にいる。身体を起こす。暗闇に目が慣れると、奥に何かがいるのがわかる。
「おはよう」
「……ここは?」
「わたしの別荘だ」
「あなたは?」
「わたしは大山椒魚だ」
「ここから出たいんですけど」
「無理だ。出口はわたしがふさいでいる」
「出してください」
「無理だ」
「どうして?」
「お前は若くて美しく、健康だからだ。手元に置いておきたい」
あなたは立ち上がり、大山椒魚をどかそうと試みるが、びくともしない。
一か月が過ぎた。あなたの命は終わりに近づいている。
「怒っているか?」
大山椒魚がきいた。
「……怒ってなんかいない……怒ったら……自分との関わりができてしまう……わたしとあなたは、何の関係もない」
あなたはこときれる。大山椒魚が、さめざめと泣く。
せめて嫌いって言ってくれればちゃんと諦めたかも知れないのに
どうして友達としては好きだけど、って言うの?