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アール・ティー・エー!

「トナカイ達のコンディションは万全!プレゼント、良し!パスポート、良し!装備も完璧!妖精、各国への根回しは!」
「完了シテマス!」
「よし!」
「お、北半球4号。準備できたのかい?」
「よ、南半球12号。お前は良いよな、サーフィンで登場だろ?カッケエよ」
「いやいや、やっぱサンタは橇とトナカイがロマンだろ……って、長話し過ぎたな。早く行こう」
「おう。さて、前回は4時だっけ。あと5時間か。4時間で終わらせるぞ!」

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厚顔

130円のシュークリームがぼとりと落ちる
吐き捨てられた真っ黒なガムはもうずっと昔からこの街を見ていた
吸い殻と絆創膏、ひどく甘いカスタード
ビルに翻したスカートの裾、女の子と目が合った
坂の上の異界を抜けて
ネオンの灯り切らないうちに
歩道橋の一夜の残骸
交差点の向こう側、必死でだれかを探していた
幾多の人の波の中
だれとも分からないだれかのことを
紙人形に揉まれて彷徨う亡霊
花束を抱えて歩く少女
すれ違いざまに右目を覗き込んだ

生きることと同義のように
嘘と嘘を囁き合っている
貴方の嘘を嘘と知りながら
私の吐息さえも嘘だった
硬貨と指先が触れる
もう貴方の顔も声も忘れてしまった
名前も知らない暇潰し
纏わりついた匂い、静かに息を止める
好奇心と吐き気、下手な常套句
笑ってしまうくらいチープなおままごと
手も振らないで背を向けて
おもちゃのような虚構も食べ飽きた
暇潰しにもならないアスファルト

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変態

凍てつく寸前の月を
人差し指と親指でつまんだ
羽化する前の明日が溶け出した

絶対零度ってなんだっけ
雨にすら温もりを感じる手の甲

ツイてなかった 間が悪かった
帰りたい もう帰りたい
毛布の中で液体になって
生まれ変わってやり直したい

形成されない理想と偏頭痛
全部ぜんぶ低気圧のせいして

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CHRISTMAS CARD

半袖のサンタクロース
サーフボード 乗りこなし
この街に来て初めての
私だけ真夏のクリスマス

この頃は電話してばかり
北の国に住むあなたに
目を閉じれば近くにいる
光る水しぶき 粉雪みたい

あなたに見せたい景色があるの
砂浜に書いたメッセージ
水平線で折りたたんだ
飛び出す仕掛けの Christmas Card

サングラスをはずしたら
言い寄ってくる男たち
あなたよりもステキな人は
どこを探してもいないわ

イラストみたいな街を駆け抜け
封筒に詰めた溢れる想い
イヴに間に合うように…
ポストにいれたの Christmas Card

どんなに2人離れてたとしても
サンタは愛をとどけるよ
地球の反対側までも…
大好きなあなたへ Christmas Card

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虚言

夜の海みたいに深いのね
貴女のその瞳
流れ落ちる一粒一粒が
すべて嘘だなんて
貴女は信じられないんでしょ?

海に沈んでいく五本の指みたいに綺麗ね
貴女のその身体
本当の自分を目指してるんでしょうけど
自分を偽ってる時点で
その"本当"はただの"理想"なんだって
どうして判らないのかしら。

虚言よ虚偽よ

嘘はバレなきゃ本当なのよ?

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それが嘘とまでは言わないが、お前たちのせいで茶番になってるんだよ

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霧の魔法譚 #15 6/6

魔法使いたちを襲った大攻勢は、目立った損害もほとんどなく魔法使い陣営の勝利に終わった。
変わったことと言えば沖合に突如出現した謎の濃霧を偵察隊が捉えたそうだが、目立った動きはなくほどなくして消滅したらしい。おそらくファントム側の攪乱作戦が不発に終わったのだろうと多くの者がそう考えた。いずれにせよ勝ったのだから問題はないと誰も深く考えなかった。


霧に隠されたもう一つの大攻勢。一人の少女が抹殺したファントムは深海の底に消え、誰の記憶にも残ることはない。


霧の魔法譚<終>

***

大変大変長い間が空きました。覚えている方いるでしょうか。いたら嬉しいです。
夏からの課題(!)、何とか無事終わらせることができました。終わりましたよテトモンさん!
本当はもっと短く、こう、フランクな感じで終わる予定だったのですが、書き込みを引き延ばしているうちにグダグダと内容まで長くなってしまい……。お話の展開まで暗くなってしまいました。クリスマスイブにお目汚し失礼します。
霧の魔法譚は以上で終了です。見てくださった方、反応していただいた方、そして長文を載せてくれたKGBさん、長らくお付き合いいただきありがとうございました!

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霧の魔法譚 #15 5/6

だからこそ、なぜ戦争を再現なんかしたのかなんて単純な疑問も浮かぶ。
(不謹慎なこと言うなら効率悪いし。私だったら海を丸ごと奈落にしてしまうとか。全部魚とか鳥とかに変えてしまうのも魔法使いっぽくていいな)
何でもできるのならば問答無用でファントム丸ごと消してしまえばよかったのにと思う。わざわざこんな大掛かりなことしなくても、もっとスマートな方法があるのは確かだ。
なぜなのか……は、でも何となく分かる気がする。後部座席に座る小さな女の子は、あれはあれで100年も昔からやってきたようなものだ。当時の大量破壊の象徴と言えば戦争を置いて他にない。彼女的にも戦争によってファントムが破壊されていく様をイメージしやすかったのだろう。
そう考えると一抹の寂しさを感じる。

「……ほんと、すごい魔法なのにな」

呟きは轟音にかき消されて、自分の耳にすら届かなかった。

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霧の魔法譚 #15 4/6

にしても。
(戦争だよな、これ。どうみても)
この国のかつての国旗が描かれた戦闘機と、海に浮かぶ重厚感漂う真っ黒い戦艦。当時の新聞か本でも読んだのだろうか、それにしてもすごい完成度だと感心する。さっきまでの静謐な空気は雲散霧消し、まるで戦争モノのCG映画の中にいるかのような錯覚を覚えた。
また一つ、儚く散った戦闘機の残骸が海へ落下していく。
流れ落ちた屑鉄は命無き亡霊兵を巻き込み、海の底へと引きずり込んでいく。雨垂れのように、落ちては砕けファントムを破壊する。今や奇麗に整列していたファントム兵たちはもう見る影もなく、明らかに壊滅状態だった。
(……あれだけいたファントムがたった一人の魔法使いの手で壊滅、か。ほんと、何でもできすぎて嫉妬してしまいそうだ)
霧の魔法使いは何かを誇る顔一つすることなく、おそらく今も閉じた瞳の奥で飛行機を落とし続けているのだろう。
その気になれば自分たちのもとに銃弾や砲弾の一つでも届かせることができる……いや、もっと単純に、自分の死を想像されれば私は死ぬのだ。何でもできるとはつまりそういうことだ。

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霧の魔法譚 #15 3/6

「シオンの魔法は現実を歪める力だ」
さてと前置きをして、目の前で繰り広げられる惨劇を前に大賢者が語りだす。

「具体的には、”自身を内包する霧の範囲を彼女の思い通りに書き換える”能力。霧が深ければ深いほど、広ければ広いほど、彼女は思い通りに現実を書き換えることができる」
現実を歪められたこの海は、今や激しい戦場と化していた。
戦闘機から吐き出された閃光が次々と煙を引き裂き、戦艦を容赦なく叩きつける。戦艦の至る所に設置された砲台は凄まじいマニューバで飛行する戦闘機を捉え続け、次々と撃ち落してゆく。
空から落ちる燃えた屑鉄が海へと落下し、凄まじい衝撃とともに水の柱が上がる。轟沈した戦艦からは爆発が起き、黒々とした煙が空を覆いつくしていた。
耳を聾するほどの轟音が四方八方から絶えず鳴り響く。地響きのような重低音と空気を切り裂く甲高い金属音が組み合わさり、容赦のない暴力が骨の髄まで打ち据える。激しい衝撃は脳を揺らし、耳鳴りと頭痛を引き起こす。
撃ち落されても撃ち落されても戦闘機からの攻撃は止むことがなく、戦艦からの砲撃も苛烈さを増す。海へ叩きつけられる鉄の残骸は増える一方で、攻撃に耐えきれなかった戦艦も次々と沈み炎を撒き散らす。
「その圧倒的な万能性からファントムを屠れる数で言えばまず間違いなく五指に入るほどの、非常に強力な魔法だ」

炎は火の粉とともに空まで昇り、大気を焼き尽くさん勢いで煙を赤黒く染めてゆく。

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霧の魔法譚 #15 2/6

「大賢者っ! ひっ飛行機っ、墜ちてきて……ぇぇえええあああああっぶねええ!!」

自分たちのもとへ一直線に墜落する火の玉を避けようと、イツキはハンドルをいっぱいに回して軌道から逸れる。すぐ真横を通過していくのを生きた心地がないまま見送ると、続く二つ目が接近中であることに気が付いた。
「落ち着けイツキ。そいつは我々には当たらな――」
「ああああああああぶつかるーーーーー!!!!!」
「人の話は聞こうか」
ゴンッ、とイツキの頭が鈍い音を立てる。イツキの口からはヴェッという音が漏れた。
首の後ろでも叩いて気絶させようかとも思ったが、頭頂部への鉄拳制裁だけで黙ってくれた。悶絶しているようにも見える。
「あれはシオンの魔法だ。シオンが操っているから私たちに当たることはない」
「……。……何でも暴力で解決しようとするのやめない? あなた大賢者でしょ?」
「逆にイツキが下手にハンドルを動かしたりするとシオンの予想を外れて当たりかねない。できれば停車させてくれないか」
「聞いてねえんだよなぁ……」

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霧の魔法譚 #15 1/6

この国はかつて戦争をしていた。
数年前に習った記憶なので詳しく覚えていないが、目的は確か領土の拡大だったと思う。
現代人にとっては「そんなことで?」と思うような理由で、実際歴史を習っていた時の自分も「そんなことで?」と思うくらいの理由で、でも当時の人たちにとっては多分とても大事だったのだろう。あるいは一部の人たちだけかもしれないが、それはともかく。
この国はかつて戦争をしていた。長く、激しく、国の誰もが疲弊し、そして誰も何も望むものを得ることができなかった負け戦だ。
いよいよ戦争も終盤という頃には敗色濃厚だったにもかかわらず、「敗戦」の二文字から目を逸らし続け、その勢いでがむしゃらに戦い続けた。やめておけばいいのに、誰かが起こしてくれるかもしれない奇跡を願って死地に兵を送り出し続けたのだ。
その結果、血みどろで泥沼の戦いとなった内の一つにその戦いは数えられる。
空に浮かぶ無数の火の玉と、説明書きに「すべての戦闘機が撃墜された」という文字。教科書にはその戦いを切り取った白黒写真が掲載されていて、戦いの名前は思い出せないのにそっちのイメージは強烈に覚えている。

「…………」

そんなことを思い出したのには理由があって、イツキは呟けずにいる口そのままに空を見渡した。
イツキの瞳を、オレンジ色の炎が揺らす。
燃える空に浮かぶ黒い影が火の玉となって墜落していった。