つま先立った君が広げた
その手を離さないようにして
君の手を掴んだまま離陸
滑走路を小さく見下ろして
口から飛び降りようとする
自殺志願者の言葉たちを
上手く喉の方に押し込めて
目を見開いて、目を凝らして
もっと擦りむいてしまえよ
内側が見えてしまうまで
痛々しいまま君と踊るよ
ありのままが垣間見えるまで
ずっと、もっとこのまま
で、いたい
「やった、やった」と喜ぶ僕と
「いやだ、嫌だよ」と首を振る僕の
あいだで跳ねる心臓に
もう二度と嘘をつかせないで
タマネギを切って出た涙と
今僕が流した涙のさ
違いってなんだろう、分からないな
意外と同じようなモンかなぁ?
もっと擦りむいてしまえよ
それで泣いて抱えて歩いてけよ
もう良いんだって、沁みるんだって
痛さを身体が覚えてしまうまで
今日は遠足で動物園に来ていた。
「おっ、先生見つけた!」
私は本部から抜け出してきた先生を見つけ出す。
「もう本部にいなくていいの?」
『あぁ。私だって周る権利がある。それに、問題が起こらなければ私も周れる(笑)。』
先生はニコッと笑う。
『さぁ、一緒に周ろう。』
「うん!今日はアルもいないしね(笑)。」
『お土産買って帰ろうか(笑)?』
「そうだね、きっと今頃悲しんでるよ(笑)。」
私はそう言いながら歩き出す。
『君は私と居るところを見られても恥ずかしくないのか?』
「ん?いきなり何??」
『私は嫌われものだし、せっかくの遠足を私と周るなんて勿体なくないか?』
「ん?何言ってるかわかんない。私は先生が好き。それだけで良くない??うん。それだけでいいよね?先生。」
『強引だな(笑)』
先生は嬉しそうに、でも恥ずかしそうに笑う。
「強引に決まってるでしょ(笑)?ほら、ライオンだよ?可愛くない??」
『あぁ。可愛い。』
先生は写真を撮りながら言う。
「先生もさ、同じくらい可愛いよ?」
『なんだそれ(笑)?』
「も〜、結構本気なんだけどな〜(笑)。ほら、私、蛇見に行きたい。」
『蛇はあっちだな。』
「先生。私は先生の一番いいとこ知ってんだ。」
『え?』
「あっ、言わないけど。でも、先生と居るとこ見られても恥ずかしくないよ。」
私は先生を見てニコッと笑うと先生が指差した方へ歩き出す。
先生の横に並ぶと、私は先生の横顔写真を撮りながらまた一つ、先生の事を愛おしく思っていた。
そして、アルへのお土産に、3つのお揃いマグカップを買って帰った。
そういえば、俺は俺の話をしていなかった
伊織タケルは独りである
有り体に言えば天涯孤独ってやつだ、だからなんだって話だけど
俺は親を知らない
とはいえ金だけは残したらしくて不自由はない
安かろうと狭かろうと帰る場所があるのはいい
数年前、そんな俺に親だと紹介されたのが夢の墓と呼ばれてる小さな丘だ
紹介したのははたして誰だったか...まぁここが親とかそんなバカな話があるかとも思ったが、この場所が美しいとは思ったのは事実だった
「ただいま」
「おかえり。…ねぇ、いっつもどこで遊んでんの。誰と遊んでんの。ケンくんママが大学生くらいの男の人と遊んでるって言ってたんだけど」
ママは僕の答えを待たずに言った。
「…うん。カズにいちゃん!優しいよ!」
「正気?学校で習わなかった?『知らない人と遊んではいけない』って」
「でも、本当に優しいもん。不審者なんかじゃないもん!」
「ふ~ん。どうなっても知らんからな」
知ってたまるか!もう、こんな家出てってやる!
靴を履いて家を飛び出した。
さっきより空は暗くなっていた。こんな時間に1人で外に出たことはない。自分から出てきたくせに弱音を心の中で思った。
「…カズにいちゃん」
「…」
カズにいちゃんはなぜだか知らないけど、そこにいて、抱きしめてくれた。
「もう、カズにいちゃんと遊んじゃダメなんだって」
「…」
「僕、もっと遊びたいよ」
「…そうか。…もし俺が今、君を連れていくって言ったらどうする?」
「えっ。…分からない」
「じゃあ、少しは怪しんでるってことか」
そうじゃない。そうじゃない。
「そうじゃない!」
「じゃあどうなんだ」
僕は答えられなかった。これは算数のテストなんかよりもずっとずっと難しい問題だった。でもカズにいちゃんはぎゅっと抱きしめてくれて、僕が答えるのを待っていてくれた。
どのくらい経ったろうか。
僕は見たことのある景色を眺めていた。
買ったばかりの新しい服を着るだけで
なんだかウキウキしちゃうのは
君に会って見てもらうのがうれしいからかな