最初はおどおどしながらやっていたが、だんだんと楽しくなってきた。
みんなで輪になって、笑って、演奏した。
演奏が終わると全員一斉にパタンとたおれた。
「楽しかった!」
気づいたら懐かしいような人の声があった。楽しそうな子供の声。
周りを見回すと、見覚えのあるような楽器たちが並べられていた。
私はその楽器たちのもとへ行き、少し音を鳴らした。
その時の顔はきっと笑顔だったに違いない。
その遠く後ろで、またまた見覚えのある人たちがみゆを見つめて微笑んでいた。
あぁ。私は一人になってしまったんだ。世界で独り。
あぁ。もう誰もいなくなってしまったんだ。もう誰も…。
そう考えているとき、どこからか音がした。
ドンドン、カシャン、ジャーン…。
その音のする方を見ていると人の姿が見えた。
まだ誰かいたのか…。
「やあやあやあ、お名前は?」
「え、みゆです」
「みゆ!今から僕ら、ここで演奏をするのだが一緒にどうだい?」
「え?」
「やろうよ!そうだな~。じゃあタンバリンでどうだい?」
私の手のひらにタンバリンが乗せられた。
「じゃあ、始めるから、それに合わせて叩いたり、振ったりしてね」
屋上へと階段を登る。
左手にはトイレットペーパー。
「自分が落ちるのは怖いけど、コイツなら…」って。
ごめんよ。
身代わりにして。
さて、ドアを開けると柔らかな風が僕をなだめる。
「大丈夫。身代わりが落ちるだけだから。」
そう僕は口にして、フェンスに歩み寄る。
「バイバイ。」
トイレットペーパーが風に煽られながら落ちていく。
あーあ、こりゃ生徒指導だなー。