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緋い魔女(再掲) Act 9

「…ていうか、なんで報酬に俺を要求した⁇」
少女の後を追いながら使い魔は尋ねる。
「やっぱりあの”ヴンダーリッヒ”の最高傑作だから? それとも…」
少女は使い魔の話を遮るように足を止めた。
「別に、お前なんか欲しくなかったけど?」
その言葉に、思わずはぁ⁈と使い魔は叫ぶ。
「テメェ一体何を考えて…」
少女は溜め息をつきながら振り向いた。
「…大体、私に依頼を持ち掛けてくる人なんてね、自分たちの手に負えないような面倒ごとを、今話題の”緋い魔女”に解決して貰おうって考えてるのがほとんどなのよ」
それに、魔術の世界で”神童”だの”天才”だのって持て囃されてる魔術師が、自分の元に来るだけでも良い自慢になるでしょう?と少女は笑う。
「この間も1つ依頼を片付けたから、久しぶりに家でゆっくりしようかしらと思ってたんだけどね…ちょうどそこにあの領主が依頼を持ち掛けて来て…」
少女は不機嫌そうな顔をする。
「この間の依頼でそれなりに報酬を貰ったし、何しろ面倒臭そうな精霊退治を依頼されちゃったから、断ろうと思ってたんだけど」
そう言いながら少女は目を瞑る。

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淡い光

月を見に、走り出る。
月は、雲に隠れている。
おぼろげながら、透けて見える月の光を見ていた。
気づいたら、君が隣にいた。

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帰還

貴方の音がきこえるところ
ちょっと調子の外れた笑い
あの日のよりかかりデュエット
ふたりきりの微笑み
誰もいないみんなの予感
そういう世界観に懐いていたい

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月蝕

空の切り傷が鈍く光っている
痛いよね。
でもね、その傷を見ようとした人たちの顔は
自然と上を向いている。
その傷は絶対、無駄じゃないよ。

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紡げ、詩。【第3話】

手紙を開くと、私の予想していた通りの字が見えた。
そしてその筆跡は、私のノートに書き足された詩の筆跡と同じだった。
『なんでこの人が』
当然、誰も答えてはくれない。

手紙には、以下のように書かれていた。
以前読んだことはあるが、もう一度読むことにする。
《蒼井 詩様
 お誕生日おめでとう!!
 蒼井さんとは結局3年間、クラス一緒だね
 クラスメートの為に毎日色々やってくれてありがとう
 僕にも出来ることあったら言ってな~
 プレゼントは
 この前欲しいって言ってた筆箱と、
 蒼井さんは文芸部やから使うかと思って、
 ノートにしたよ!よかったらどーぞ!》

ここまで読んで、
封筒の中に何か入っていることに気づいた。
一回目に手紙を読んだ時には気づかなかったものだ。
『メモ…』
《蒼井さんへ
 ノートの中のどこかに、僕が書いた詩があるんよ
 その日付に見覚えがあったら、明日の放課後、
 屋上まで来てください
 見覚えなかったら忘れて!  小林 隼人》

『何これ…知らなかったよ…』
視界がぼんやり輝いた。
頬にしょっぱい雨が降る。
しばらく一人で雨の中にいた。

「なぁに手紙読んで泣いてんの」
後ろから声がした。

【続く】