またね
って微笑む彼女は綺麗だ
今日もいつもと同じ速さで
ぴゃぴゃっと手を振って
一度ドアの向こうへ消えたかと思えば
またドアから頭を出して
ばいばい
って少し涙目で
明日も会うのにな、って俺が笑うと
その13時間が待てないの、と呟いた
そんな彼女の横顔は
ほのかに紅くて思ったより色っぽく
俺も待てる訳ないよ、と言いそうになって
堪えた
今日がとじていく
じゃーな
って笑ってる彼は優しい
今日もしれっと車道側を歩いてた
今だって私の家の門を開けたのは彼だ
そんな彼から離れるのが哀しくて
玄関に入ったけれど出て
ばいばい
って少し泣きそうになってしまうのは
これで何回目だろうか
これくらいならバレてないよね
一応顔を隠しながら言ってみる
その13時間が待てないの
彼の目が一瞬揺らいで
止まった
ドアを閉じて
今日も一人で泣く
君
あと何時間で に会えるかなぁ
彼
二人を見た太陽がちょっぴり急いで動く
明日は早く来るだろう。
命綱無しの綱渡り、ギリギリのバランスを楽しんだ後は、ぐらりと崩れて落ちるばかりだ。
猶予は数瞬。さあ、受け身の準備だ。
瓦解する余震が
揺り落とす恋模様
まだ糸に寄り添えるのは
傲慢が勝ったから
お星さまになった”彼”が目の前に現れてから、
放課後が楽しみになった。
夕日が沈むまでの間が、私と”彼”が話せる時間だと知らされた。
「なに泣いてんの」
と彼が以前のように話しかけてくれることが
とても嬉しかった。
文芸部の活動も、私だけ教室でするようになった。
始めの頃、”彼”は
「やり残したことがあったから来てん」
と言った。
そして昨日、”彼”は消える前に言った。
「僕もう来れへんかも
やり残したこと、出来たもん
詩(うた)に気持ち伝えられたしさぁ」
「まぁ、な、一人で泣いてても似合わんし
笑ってな、笑顔似合ってるぞ~」
それから一週間経っても、”彼”は現れなかった。
本当に一人になってしまった教室で、
隼人からもらったノートを広げる。
冷たい風が頬を刺す。
今日は何を書こう。そろそろ吹っ切らないとな。
隼人が戻って来る訳でもないんだし、、
また、泣きそうになる。
泣かない。私には笑顔が似合うらしいから。
私は、今日も教室で詩を創る。
紡げ、詩。
【終】
ねぇ、いいの
ほんとうにこのままでいいの
後悔しないの
大丈夫なの
文末にはてなを付けたら
まだ引き返してしまいそうだからさ
…わたしって弱いのよ。
と、
文末に句点をつけて
彼女は前を向いた。