眩しそうに細める君の視線の先に、
私がいるかどうかよりも。
私の幸せなんかよりも。
楽しそうに笑う君の世界がどうか
幸せで在ってほしいと思うのです。
君の幸せの方が、ずっと。
「アンタ、名前何て言うの?」
ネロがそう尋ねると、少女は”風見 恵梨(かざみ えり)”です、と名乗った。
「…異能力者としての名前は?」
「それも言わなきゃいけない?」
恵梨、と名乗った少女はネロにそう聞き返す。
「当たり前だ」
一応、知っている異能力ならどんな異能力か分かるし、と耀平は言う。
「そうですか…」
恵梨さんはそう言って諦めたようにうつむくと、すぐに顔を上げた。
「わたしの異能力者としての名前は”エルフ”と言います」
異能力は、自分の姿を透明に見せる能力です、と彼女は付け足す。
ふーん、とネロはうなずいた。
「制服的にはそこの寿々谷高校の人?」
耀平が聞くと、まぁ、と恵梨さんは答えた。
「んで、本題なんだが…」
そう言って、ネロは恵理さんに向き直る。
「なぜアンタはウチの黎をつけて来たんだ?」
貴方の言葉になりたい
暑さで狂あして欲しい
倒れたってもとめてよ
適当基準で生きて
最高基準の君がいるの
ほんとに分かんないけどさ
熱中して堕ちちゃいたい
呂律だってどうでもいいから
気持ちだけでも伝わってよ
なんとなく今日は顔を上げて歩いてしまったから、見えてしまった。
キラキラ輝く人たちが。
顔、顔、顔。
一気に苦しくなる。
先輩のストーリー。お友達と仲良さそうで。
眩しくて、羨ましくて。
一気に苦しくなる。
人間関係はこれから作っていかなきゃいけなくて。
知らない人、人、人。
私はどう映るの?
一気に苦しくなる。
この想いはどうしようもなくて。
あなたのトラウマになってしまったら。
あなたとの関係が途切れたら。
一気に苦しくなる。
溺れそうなこの手を取ってくれる人は、どこ?
また今年も、なんて嫌。
もうすぐ5月だ。
静夜の鼻唄
息苦しい時 声を出すのも怖くなった時
誰かの鼻唄が聞こえてくる
その途端、胸につかえた塊が溶けていく
穏やかな気持ちになれる
姿の見えない誰かに、ありがとう
病は食から
人は食べたものでできている
だから「食」という字は人が良くなると書く
Ⅰ
Ⅰ
暑そうに前髪を浮かして
腕まくりして
暑いねって上気してる
そんなのを見つめてるうちに
体温が浮かんでく
見つめていく
逸らして落ちて
そっぽを向いて頬が緩んで
夏の匂いは
君の弄ぶ世界のひとつ。
Ⅰ
Ⅰ
✧*
スカートのギザギザと
月明かりが噛み合って夜は動く
電子音は届かない
窓を少し開けたら 街が広がった
会話より大事な沈黙
でも悲しいときは雄弁でいて
埋め立て地は いつまでも光ってる
猫の目が4つ いつまでも光ってる
「いや、知り合いじゃないんだけど…」
この間会ったんだよね、とわたしは説明する。
「この間って何だよ」
耀平はすかさず突っ込みを入れる。
えーとね、とわたしは答える。
「先週駅前でこっちを見てたから、気になって話しかけたんだよね」
でもまさかもう1度出会うなんて…とわたしは呟いた。
「あ、あの…」
高校生が発言したから、皆の視線が彼女に集まる。
「わたしの事、忘れてませんよね…?」
「忘れるも何も」
そう言ってネクロマンサーは彼女に黒鎌を向ける。
「さぁて、この後は事情聴取といきますか」
ネクロマンサーがそう笑うと、高校生はひぃぃぃと後ずさった。
かくして事情聴取が始まった。