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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 12.ユニコーン ③

「あなた、前に亜理那と一緒にいたじゃない」
5月くらいだったかしら、と少女は首を傾げる。
「…あ、そう言えば」
言われてやっとわたしは思い出した。
5月、亜理那が異能力者である事をカミングアウトした時に出会った背の高い子。
…確かに同一人物だ。
「やっと思い出したようね」
少女はそう言って笑った。
「え、何アンタ、コイツと知り合いなの?」
何で?とネロは少女に尋ねる。
少女はふふふとネロに目を向ける。
「…まぁ、知り合いの知り合いみたいなものよ」
まだ1回位しか会った事ないけど、と少女は続ける。
ネロはふーんとうなずいた。
「あなたが噂の、異能力者を知ってしまった一般人でしょう」
ミツルから聞いているわ、と少女はわたしに向き直って言う。

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視えるモノ その①

あの化け物との遭遇事件から1週間後。期末テストのせいでしばらく能力者の皆さん、そして宮城さんにしばらく会えなかったけれど、久しぶりにこの溜まり場に来ることができた。
「……ん、どうも、宮嵜さん。お久しぶりです」
「ん、お久しぶりです、宮城さん」
久しぶりに出会う宮城さんは、以前と変わり無い雰囲気で安心できた。
「そうだ、聞いてくださいよ宮城さん。1週間前、一緒に帰ったでしょう?」
「はい、そうですね」
「別れた後、変な化け物に会ったんですよ。怖かったです……」
「化け物? どんなのですか?」
あの後、記憶を頼りに描いたスケッチを鞄から取り出し、宮城さんに見せた。
「何度か夢に見たくらい、強烈な出来事でしたよ……」
「どれ……うっ」
絵を見た宮城さんは、短く呻いて顔を顰めた。そうしたくなる気持ちはよく分かる。かなり気持ち悪い姿の化け物だったし。
「こんなの見たことも聞いたことも無いですよ……」
「私だってあの時が初見でしたよ」
「あれ、二人とも中に入らないの?」
突然、トモちゃんが会話に割り込んできた。彼女は私たちのすぐ背後まで音も無く近付いてきていて、それはつまりあの謎の腕たちも目の前まで迫っていたということで、それが見える私と宮城さんは驚いて飛び退き、扉に勢い良くぶつかってしまった。
宮城さんはそれで更に悲鳴を上げ、私の腕を掴んでその場に倒れ込んでしまった。私も巻き込まれて彼女に覆い被さるように膝をつく。
「わぁ、驚かせちゃったみたいでごめん。でも、そんなに驚くところだったかなー……」
「い、いえ、突然だったもので……」
私はどうにか答えて立ち上がろうとしたけれど、宮城さんにすごい力で引き留められて動けない。
「宮城さん、放してくださーい」
彼女は無言で首を振り、まったく手を放そうとしてくれない上に、力はどんどん強くなっている。
「手ぇ貸そうか?」
トモちゃんが提案してくれたけど、丁重に断っておく。彼女に近付かれるのは、今の宮城さんにとってはきついだろう。
「私が落ち着かせるので、どうぞお気になさらず」
「そぉ? それじゃ、またね」
トモちゃんが部屋に入って行ったところで、ようやく宮城さんは落ち着いてきて、手も放してくれた。
「宮城さん、落ち着きましたか?」
「は、はい。ご迷惑をおかけしました……」

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その喉元に

ここは陰謀渦巻く街の中
そこで、自分の親友を倒した敵と交戦中の男がいる 名前はデンドロ
長時間戦い続けているのでどちらも疲弊してきた様子だった
急にデンドロはその場に膝をついた
敵はデンドロが戦う意思を捨てたと思い、抱擁した
するとデンドロは油断していた相手の喉元にナイフを突きつけた
「ハッハッハッ!俺がそんな甘い男だと思ってたのかい?」
ー敵が最期に聞いた言葉は嘲りに満ちていたー

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君に焦がれたこの夏を
待ちに待ってしまった今を
私の大きな冒険を
踏み出しかけたその一歩を
今、ぽっきりと折ってしまう君は
涙を隠す私のことを
この画面の向こうできっとまたすぐに忘れる