キミの頬はリンゴみたいに真っ赤だ。
ああ、なんて美しいんだろう!
食べちゃいたいくらい好き...なんてね。
はははっ!冗談だよ♪
寿々谷市中心部から電車で約15分。
寿々谷駅の隣、新寿々谷駅は寂れている。
一時期は寿々谷駅より栄えていたらしいが、今となってはそうでもない。
駅前は閑散としており、人通りも少なく、商店街はシャッターが目立つ位だ。
駅の利用者数も少なく、あそこを使うのは地元民か近くの高校の生徒位と言われている。
わたし達は今、そんな駅から出た所だ。
「う~暑い~」
「じゃあネロ、そのパーカー脱げば?」
「え、やだ」
暑いのなんのと言いながら人気のない改札を抜けたわたし達は、これまた人気のない通りへと向かって行く。
「…それで、新寿々谷に来たのは良いんだけどさ」
わたしがふと言うと、皆の視線がこちらに集まった。
「結局どこ行くの?」
わたしがそう尋ねると、ネロはう~んと答えた。
「正直どこへ行くかハッキリ決めてないんだよね」
何をするかもあんまり考えてない、とネロは言う。
「…どうする?」
やっぱり”いつもの場所”に行く?と耀平はネロに聞いた。
からだは借り物 いのちはケモノ
やはりそのまま 仕掛け会おう
コップは入れ物 麦茶はへどろ
飲み込み吐き出すばかりだろう
かりのからだにケモノのいのち
砕けちるままに
炎燃やすばかり
どうしようもないんですこの気持ち。
どうやったって忘れられないんです。
あなたを好きになるのは構わない。でもファンでいたかった。
恋愛感情なんて抱かなければよかった。
どうやったってどうやったって
あなたに会えないのは分かっているんだ釣り合わないってわかっているんだ。
忘れられない。
あなたに恋するのは止められない。
俳優さんに恋してしまった今日この頃。。。泣
部屋の中を探しても、宮城さんは見つからなかった。代わりに、彼女の靴が既に玄関に無いことを発見した。
部屋を出てみると、宮城さんはすぐそこで待っていた。
「ども、宮嵜さん。帰りご一緒させてください」
「あっはい」
何だか覚えのあるやり取りを交わし、雑談しながら帰途につく。
「……あの、宮嵜さん」
世間話の中、唐突に真剣な声で宮城さんが私の名前を呼んだ。
「何ですか、宮城さん」
「宮嵜さんの能力について、一つ考えたことがあるんです」
「はい」
「たとえば、宮嵜さんには扉の肉塊が見えませんでしたね」
「まあ、そうですね」
「でも、部屋の中にいたあの人影は見えてた」
「……? あ、あれか」
そういえばそんなのもいたっけ。ほとんど忘れていた。
「私の『眼』で見た限り、あの人影は相当の悪霊だったんですよね。見えないフリしなきゃ詰みでした」
「扉の奴は?」
「ただそこにいるだけの、只管気持ち悪いやつです。生理的に無理ってやつです」
「それで、宮城さんの考えとは?」
「はい、もしかして、相手の危険度によるんじゃないかと。ヤバい奴だけ見えるみたいな」
「ふーむ……あ、そういえば、宮城さんに似たオバケに会った時の話なんですけど」
あの日の柴犬の話をする。謎の獣のオーラ、柴とは思えない吠え声、オバケを退散させたことまで。
「ふーむ? それなら、危険度というよりはその純粋な強さといった方が良いんでしょうか?」
「どうなんでしょ……可能性の一つとして頭に入れときましょう」
そして、その時にふと気がついたことも尋ねてみた。
「あと、アイカちゃんは?おやすみ?」
その子は周りを少し見渡してから答えた。
「マオもよくわからないんだけど…、アイカちゃんは、お休みだよ」
「なんで?」
「え?律ちゃん、知ってるんじゃないの?」
もともと大きな目をさらに広げて言う彼女に、私はさらに目を丸くした。
「なんで?なんで私が知ってると思ったの?」
「だってさ、アイカちゃん、金曜日帰る時ずっと『律ちゃんのせいだ、律ちゃんひどい』って言ってたもん」
そう説明されても、私はただ首をかしげるばかりだった。
アイカちゃんに何かした覚えは、ないんだけどな。
とりあえずその子にお礼を言って、次は美亜を捕まえた。
「ねえ、なんかみんなが変な感じなんだけど。あと、アイカちゃん、金曜日何か言ってたんでしょ。何を言ってたの?」
畳み掛けるように質問する私に、美亜は少し驚いていた。
「えっとね、みんなが変なのは多分アイカちゃんが原因だよ」
美亜は私がジャングルジムから落ちた後の話と、金曜日のアイカちゃんのことを教えてくれた。
幼稚園児の話すことなので辿々しく、とても長い話だった。要約すると、アイカちゃんは私がジャングルジムから落ちたせいで貴方から嫌われた、と騒いでいたらしかった。
私が病院へ運ばれた後、アイカちゃんとそのお母さんは私の家に来た。その時母は私に付き添っていたので、少しの間留守番していた貴方が出た。
隣でお母さんが必死で謝ってるのに、アイカちゃんは特に気にすることもなく、ワンピースの汚れを払ったりと退屈そうにしていたらしい。
アイカちゃんのお母さんが電話か何かで外に出た時、アイカちゃんはいつも通り貴方に甘えようとした。でも貴方が彼女に向けたのは、悲しみと怒りとが入り混じったガラス玉のような瞳だった。
そして貴方は、無言で病院へ向かった。