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異分子幻肢 その①

前回、あの溜まり場に行ってから3日が経った。このところ眠る度に毎日、夢に化け物が出てくる。あの時遭遇したのとはまた別の、見たことも無い化け物が。夢は自分の記憶が元になって作り出されているとはいうけれど、私の記憶や想像力から生み出されたとは思えない、奇妙な姿のものばかりだ。あまりにはっきりと記憶に残るものだから、目を覚ます度に夢日記の要領で化け物たちをスケッチしているけれど、どれもこれも正気とは思えない見た目をしている。私はおかしくなってしまったのだろうか。
新鮮な空気を吸って落ち着こうと、ベランダに出る。ふと下の方に目をやると、家の前の道を宮城さんが歩いていた。我が家の前を素通りした辺り、私を訪ねてきたってわけでも無さそう。
急いで寝間着を着替え、家を出る。宮城さんはまだ家の近くをうろついていた。
「宮城さん宮城さん!」
呼びかけると、宮城さんは少し間抜けた顔で振り向いた。
「宮嵜さん……? さっきあっちの方に行きませんでした? それを追ってきたんですが」
「いや、今起きたばっかりですけど。私のドッペルゲンガーでも見ましたか?」
「かもです」
「恐怖体験じゃないですか……」
「それより宮嵜さん、何故ここに?」
「私の家、この近くですもん」
「あー……そういえば見覚えありますね。千葉さんがいた時の。……まあ、まだ朝早いし、私は帰りますね」
宮城さんは小さく一礼し、道を表の通りに向けて引き返し始めた。
それと同時に、全身に走る悪寒。オバケと出会ったときの感覚だ。咄嗟に宮城さんを見るけど、彼女に反応は無い。
「宮城さんッ!」
どこにオバケがいるかも分からない今の状態でそれは危険だ。急いで宮城さんを追いかけ、その腕を掴んだ。

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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 12.ユニコーン ⑨

「あーいつもの場所?」
良いんじゃない?とネロは振り向きざまに言う。
「いつもの場所?」
わたしが思わず尋ねると、ネロはこう答えた。
「…え、墓地」
「え、は?」
思わぬ答えにわたしはポカンとする。
「墓地って…どういう事?」
「いやどういう事も何も」
新寿々谷の墓地だよ、とネロはムスッとした顔で言った。
「何で…」
わたしがそう尋ねると、今度は耀平が答えた。
「…だってさ、新寿々谷にはそれ位しか面白そうな場所がねぇんだもん」
別に良いだろ?と耀平は続ける。
わたしはえぇ…と返すしかなかった。
確かに新寿々谷には何もない。
しかしいくら何でも墓地で遊ぶのはちょっと…
「…バチとか当たったりしない?」
わたしが思わずそう聞くと、ネロはう~んと答えた。
「今の所、バチとかは当たったりしてないかな」
ひどい事はしてないし、とネロは笑う。
「まぁ良いや、とりあえず行こう」
いつまでもここにいちゃ暑いし、とネロは歩き出す。
そうだな、とか言って他の皆も彼女に続いた。

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夏の思い出

お金を握って
歩いていった
蝉時雨のなか
暑い夏の朝

カラン、とお店のベルを鳴らせば
あの人は掃除の手を止めて
「おはよう」と
出迎えてくれる

ハサミを手に持って
髪を切っていく規則正しい音に
少し眠気を覚えながら
学校のことや
習い事のこと
いろんな話をした
お客さんが徐々に増えて
ぼくが口をつぐんでしまうと
あの人は可笑しそうに笑った

その年の秋
伸びた髪を伸びた髪を切ってくれたのは
知らない人だった
あの人はもういなかった

さよならも言わず
さよならも言えず
夏が来るたびに
思う

けれど
今になって
思う

人との出会いは偶然ではないのかもしれないということ
そのひとつひとつが僕をつくっていくということ
そして
別れはまた新しい出会いを繋いでくれるということ

夏が来るたびに
思う

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Radio write.and brack.

何を思って
ここに来たのだろう。
何のために
歩いて来たのだろう。
黒いつまみを回して
今か今かと待ち望む。
移動するたび聞こえてくる、
信じられないほど不必要な。
白と黒の、ノイズ。

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漂泊の身の上を望む

何かに・誰かに縛られるくらいなら
いっそ鎖を食いちぎって逃げ出したい
自由の身になりたい
常々そう思っているのです
でも簡単には逃げ出せない
この現状が憎くてしょうがないのです