秋風にからかわれた髪を
正す時に思い出すあの日
「ごめんね」
いいよ私はもう弱くない
いいよ私はもう泣かない
崩れた前髪はあの日よりも
素直に直ってくれた気がした
「はぁ…」
わたしは思わず呟く。
「りいら、前住んでた所には友達がいたの」
りいらちゃんは手の中のラムネに目を落としながら言う。
「皆といると、本当に楽しかった」
でも、と彼女は続ける。
「寿々谷に引っ越してから会えなくなっちゃって」
りいらちゃんはさらに続ける。
「りいら、寿々谷になんか来たくなかった」
皆とバイバイしたくなかった、とりいらちゃんは涙声で言う。
「あの街へ帰りたかった」
だから…とりいらちゃんは顔を上げる。
「知らない人をりいらの異能力…”リャナンシー”で知らない人を操って、元いた街に帰ろうとしたの」
りいらちゃんはぽつりと呟く。
「…どうして、知らない人と一緒に?」
1人でも帰れたんじゃ…とわたしは尋ねる。
君はどう思っていた?と
昨日の君の行動一つ一つ思い謎って
誰かに話してしまいような
秘密にしておきたいような
ぐちゃぐちゃなこの気持ちさえ
今は愛しくて不思議と楽しい気持ちなのです。
ここに君と来てよかった
この海に
きれいな海ときれいな君
海よりも君の方がきれいだよ
いつもこんなところまで来てくれてありがとう
これからも来ようね
次に来るときはもっと楽しいかもね
お昼ぐらいから来たのにもう夕方なの
君といるから時間が早く感じるんだよね
ここで君に一言だけ言いたいことがある
好きです、付き合ってください
ありがとう、君はそう言ってくれたよね
これからも一緒にここの海に来ようね
この海よりも君がきれいだよ
地獄のような東西線の朝ラッシュ
混雑を超えて辿り着くは異界駅
その名は「藤迫」
誰もいない訳じゃない
でも誰がいるのか分からない
だからこそ
空色の列車は今日も地上を行く
儀式が始まった。3度目の呼びかけで、効果が動き始める。ずっ、ずっ、って感じで、少しずつ動いている。
(……宮城さん)
彼女と目が合う。彼女は微かに首を横に振った。
(……つまり、霊の類は来てないってことか)
一応、こっちでも気にかけてはいるけど、あの双子が発する謎のオーラが邪魔で上手く判別できない。流石に神様を自称するだけはある。
あの不審者が質問を投げかけた。無くし物がどこかなんて、くだらない質問だ。
質問が終わって1秒くらい経って、指の下で硬貨が勝手に動き始めた。
(か、は、いや、カバン……の、そこ。底?)
こっくりさんは見事に答え、説教まで残していった。宮城さんに目をやると。泣きそうな顔でこちらを見ながら首を横に振っている。
念のためにトモちゃんの背後の腕たちを見てみるけど、ゆらゆらしているだけで硬貨には干渉していない。
(じゃあ、何が硬貨を動かしてるんだろう……?)
解答が終了し、硬貨はいつの間にか鳥居へ。
「はいはい! 次わたしがやる!」
硬貨に置いていない方の手を上げて名乗りを上げたのは、謎オーラの双子の片割れ、陽菜ちゃんだった。不審者が促したので、陽菜ちゃんは身を乗り出して質問を開始した。
伝えたいことがあるのに
言葉にした途端
それらは意味のないものになってしまう
忘れたいことがあるのに
言葉にされた途端
それらは心に刻まれてしまう
隠したいことがあるのに
言葉になった途端
それらは逃げていってしまう
あなたに出会えてしまったから。
「友達なんかいらない」なんて、二度と言えない。
かつては東京と西日本を結ぶブルートレイン、今は東京と青森、青函トンネルを抜けて函館近郊を結ぶ新幹線の名前となった「はやぶさ」
ロシアにもハヤブサという意味の名前が付いた特急が走っている
その名も、特急Сапсан(サプサン)
こちらも日本の新幹線と同様、南の都と北の歴史ある港町を結ぶ高速鉄道だ
東京とモスクワ、函館とペテルブルク
比較なんかできない
どこも個性溢れる美しい街さ
6:32に出るはやぶさ1号新函館北斗行き
その約5時間後、現地時間の5時40分にモスクワ・レニングラーツキー駅を出る752番列車、通称サプサン1号サンクトペテルブルク・モスコフスキー行き
北海道から宗谷、間宮の海峡を越え,更にはアムールやウラルの山々、ヴォルガ川も越えて受け継がれたあの速い鳥の名を得た特急は今日も,子供たちの夢を、地元を離れて働きに出る若者を、憧れを乗せ、北の大地を駆け抜ける