「昨日」から「今日」になって、朝日が昇って、目が覚めて。
そんな当たり前の毎日だけれど。
絶対に、そこに「同じ日」は存在しない。
当たり前かな。でも、頭ではわかってたけど、体ではわかってなかった。
これだけの、たったこれだけの、小さなことがわかっただけで、
少し、だけど、たしかに世界は変わった。そんな気がした。
「昨日」から「今日」になって、朝日が昇って、目が覚めて。
「よし」 大丈夫。今日もやっていける。
誰に聞かせるでもなく呟く。 「おはよう。」
「そんなに気になる?」
自分の魔力、と少女は首を傾げる。
「…」
黒い人物は黙ったままだ。
少女は呟いた。
「もしかして貴方、いわゆる…」
「お前に何が分かる」
黒い人物は少女の方を向いた。
「貴重な存在として奇異の目を向けられ、狙われる俺の、何が分かる」
黒い人物は少女を睨んだ。
少女は暫くポカンとしていたが、不意にふふふと笑った。
「貴方もそういうモノなのね」
少女はそう言って続けた。
「わたしも、似たようなモノよ」
黒い人物はは?と呟く。
「…何が言いたいんだ」
少女は笑いながら答える。
「いいえ、こっちの話」
少女はそう言って黒い人物に向き直った。
「…そうかい」
黒い人物はそう呟くと、濡羽色の翼を広げて空へと飛び立った。
少女は建物の屋上から、その様子を眺めていた。
ふと、思ったけど…
止まない雨はない。
明けない夜はない。ってよく聞くけど
そんなこと分かってるよ
雨雲はいずれ風に吹かれてどこかにいくし。
夜だって朝日が昇って空が明るくなる。
でも、雨が降っているとき。真っ暗な夜。
そんな時にそばに寄添ってくれる人がいると
ホッとするし安心する。
そんな友達に出逢えるといいな。
そして、出逢えてるといいな。
あなたはここまで
辛いことに向き合いながら生きてきたんだね。
死にたいことがたくさんあっても
小さな希望を信じてこれたんだね。
素晴らしいよ。
あなたの命は無駄じゃない。
あなたの命を輝かせて。
まだ私も輝かせ方は知らないから、
一緒にみつけよう。
だから、いきてて。
あの人がそう教えてくれたから、僕はその通りにするだけだ。
あ………………ごめんなさい。
世界が戦う。
人が人ではなくなり、怪獣のように暴れもがく。
家族、友だち、親戚、知り合い、他人。
自分と同じ人間を目にすると、争う。
人が凶器となり狂気に満ちた目をする。
まっさらな雪も赤い血に染まる。
ある少女が世界の頂上で踊り出す。
その少女の顔は穏やかな笑顔に満ち、涙が光る。
それを人々が見上げ、叫び、涙をぬぐい、叫ぶ。
久々の太陽のあかりに呼吸が苦しくなる。
そして笑みがこぼれる。
笑顔と幸福で満ちたこの世界にもう少女はいない。