「何だよさっきの話って」
ナツィが不思議そうに呟く。
ピスケスはふふふと笑って話し出した。
「最近”学会“が追っているホムンクルスの話よ」
…人造人間か、とナツィは呟く。
「ええそうよ」
ピスケスはそう言ってティーカップに口をつける。
「人造人間って今学会の規則で禁止されてるんじゃなかったか」
ナツィが言うとピスケスはうふふと笑った。
「それがね、ある魔術師がこっそり作ったらしいのよ」
その魔術師はすぐ学会にとっちめられたんだけどね、とピスケスは続ける。
「でも肝心のホムンクルスが逃げ出したらしくて」
「それマズくね?」
ナツィは思わず遮る。
「学会は何をしてるんだ?」
呆れたようにナツィが呟くと、ピスケスはふふふと笑った。
真っ黒に塗りつぶされた
空白のページ
対をなすのは
はるか空の上
満天の星
非常に明るい天の川銀河
はるか下方の雲の切れ間に
猫の目よりまんまるい
大きな大きな満月
地上の星にマスクされない
シーンに言葉はいらなかったのだろう
言葉のいらない詩ってあるだろうか
焚火
イルカ
パントマイム
昨日燃やした僕の詩
あのころの僕に幸せはなかった
幸せが欲しいと叫んだ詩は
その実自己顕示具現の言の葉
「独りの僕」に酔いしれた馬鹿
あのころの僕に幸せはなかった
幸せが欲しいと嘆いた歌は
似たもの同士を引き合わせては
真夜中笑って語らう仲間
あのころの僕は幸せだった
幸せなんだと綴った唄は
いつしか僕から言葉を奪った
満たされたゆえに失う何か
今でも僕は幸せなんだ
けれども二度とは叫べぬ詩が
不幸せゆえの希望とすれば
意図せず心は霧をはらんで
満たされぬゆえの願う力が
あのころの僕を輝かせたか
ただどうしても埋められぬ隙間
僕から離れた美しき言葉
ここにはもうない魂の詩
朝7時52分
いつもの十字路で待ち合わせ
「おはよう」を合図に手を繋ぐ
他愛ない話をしながら
飽きるほど通った道を2人で歩く
そうして1日がやっとはじまる
君とこうして笑い合う日々が
ずっと続けばいいのに。
そんな気持ちを胸に秘め
夕方3時46分
「またね」を合図に手を離す
タイムリミットは4ヶ月。
それまでに
卒業する前に
ありがとうを伝えなきゃ