宿にチェックインしてすぐ、俺たちはカーテンを開けて眼下の夜景を眺めてすぐ、部屋のベッドの上に倒れ込んだ
それもそのはず
飛行機でも2時間半の距離を高速鉄道で約5時間、そしてそこにプラスしてビエンチャンからの約5時間、合計およそ10時間も列車に座っていたのだ
そして、会心の友から内線電話がかかってきたので俺が受ける
「2人とも、あんな長旅してるんだから疲れてるんだろ?だから、明日の朝まで起こさないよ。
ゆっくり寝て疲れ取れよ。でも、お互いが魅力的すぎてまともに眠れなかったとかいう言い訳はしないでくれよ?北京からの列車に間に合うよう全て手配してあるんだからな?
あっあと、お前が列車内で寝ている隙にお前にとって将来必要になるであろうモノを注文するためのメモ書いてズボンのポケットに突っ込んで置いたからな。参考にしてくれよ?」
「そのモノって何だ?危ないモノじゃないよな?」「おいおい…いくら何でも、危ないモノ注文してお前らの人生破滅させるほど愚かなことはしないぜ?そのモノってのは、婚約指輪だ。それだけ2人ともお似合いってことは将来的には彼女さんの左手に着けてやるんだろ?だったら、あらかじめ指のサイズ測った方がいいと思ってな」
そのやり取りを彼女も聞いていて、そばにいた彼女は顔を真っ赤にしてフリーズしていた
「君のその粋な計らいは嬉しいし、俺としても指輪なら将来的に渡すつもりだったからありがたいんだけど、そばで彼女が顔真っ赤にして聞いてるからその辺にしといてくれ」「お前も爆弾発言してないか?」
「あっ…」
それ以降の沈黙を破る砲撃のような大声で彼女が一言
「2人とも、あまり揶揄わないでください!」
そして、お互い気まずくなってどちらともなく電話を切った
お互いに興奮して眠れないので、過去の旅での体験談を語り合った
そして、話し疲れたのか彼女が寝落ちしたので、ベッドに運んでやることになった…
こんな可愛い姿見せられたら、眠れんわ!
彼女の寝顔が窓から差し込む月と港町のネオンの光に反射して今まで見たことない輝きを発していた
2人分の荷物を3人で分担して大急ぎで目の前に止まっているバスに運び込み、昆明南駅から昆明駅に移動する
そして、すぐに和諧号上海西行きの列車に乗るため手続きを済ませて3人で車内に入る
すると、彼が「手配しといた宿に連絡入れるなら早い方がいいと思うから、検札済んだらすぐデッキ行っていいか?」といきなり尋ねてくる
彼に何か考えがあるのだろうと察して、「わざわざすまない。」とだけ返した。すると、すぐに車掌が来て検札が済んだ。
その時に彼が中国語で車掌に一言二言発したのだが、俺は「シャンハイシー」と「ハンチョウ」という2つの駅名、そして中国語で「私たち」を意味する単語を聞き取った。
ここで得られた情報から、直感で「もしかしたら行き先が変わるのかもしれない」と察して万が一に備えて彼に聞いた。
「もしかして、俺たちは上海じゃなくて杭州で降りることになるのか?」
彼は「そうだ。勝手に変えて申し訳ないけど、実は宿が上海だと値段は高い上に予約取れなくてな。だから、杭州に宿を手配させてもらったんだけど、切符だけは事前に上海までの分で買っておいて、手続きの関係上切符の変更が間に合わなかったんだ。あと、彼女さんもお前と同じ宿の方が心強いだろ?だから、さっきバスで彼女さんと話して宿の変更について承諾受けたから、彼女さんの宿も変えようと思ってな」と言ってスマホを持ってデッキに向かっていった。
それからおよそ20分、「おい、彼女さん起きたら伝えてあげて。『宿の変更できた』ってな。一応、俺も君たちと同じ宿取ってあるよ。部屋は分けてもらったよ。彼女さんとお前で一部屋使いな。」と言いながら彼が戻ってきた。
「甘い一時過ごしても良いけど、部屋の中だけにしてくれよ?俺は見てられんよ」という捨て台詞付きで
そして、列車が義烏の駅を通過する頃に彼女を起こして、降りる支度をする
あと、数十分で歴史と水路の街、杭州だ
明日の昼の列車で上海西へ行き、そこから北京行きの和諧号に乗り換えて北京を目指すことになっている
彼曰く、今回の宿では部屋から浙江省随一の大都市、杭州の夜景が一望できるそうだ
そんな話に俺たちカップルが想像を膨らませていると、列車は杭州の一つ手前の駅を通過した
目的の駅に着いて外に出ると、海の方から昇る月が綺麗だ
小学生の声が聞こえた。「あぁ、もうこんな時間か」ふと、時計に目をやると3時を指していた。最近は、高校にも行けず、部屋に閉じこもってこんな生活ばっかりだ。だけど、そんなに最悪な生活とは思ってない。なぜなら、この本があるからだ。様々な戦争についての本だ。これを読むことが唯一の楽しみだ。その本を持って僕はベットに寝転がり読もうとしたが、眠くなってそのまま寝てしまった…。
「おい、高部!朝だ!起きろ!朝礼に遅れるぞ!」
「え?朝?僕は少し昼寝してただけだけど…」
「何寝ぼけてるんだ!さっさと起きろ!先行ってるからな」
一応返事はした。だけど、まったく意味がわからない。目を開けてみると、そこは僕の部屋ではなく、どこかの宿舎の部屋だった。見回すと、軍服が目に入った。
「あれは日本海軍、少尉の軍服?」
もう一度見回すとカレンダーがあった。日付を見ると昭和15年11月になってる…。
「もしかして!?」
部屋を出てきた人に年を聞いたら、
「えっ、昭和15年ですけど」
そこで、僕は分かった、タイムスリップしてきていると!
「…とりあえず、この後どうする?」
ふと露夏が呟く。
そうねぇ…とピスケスは言う。
「アイツを追いかけるのは難しそうだし…戻る?」
“かすみ”の家へ、とピスケスは笑う。
「そうだな」
「そうする〜」
皆はそう言って頷く。
ふとエプロンを付けたコドモがナツィに目をやった。
「ナツィ?」
声をかけられて、ナツィはぴくと反応する。
「何? ”かすみ“」
ナツィは“かすみ”にちらっと目を向ける。
「行こう」
かすみにそう言われて、ナツィはそうだなと答えた。
そしてかすみ達の方に歩み寄った。
〈薔女造物茶会 おわり〉
ふと思い立った時に気紛れと好奇心を動機にして敷かれたレールの上を徒歩で辿れること。
俺たちを乗せた列車は公園なのか庭園なのか分からない緑地の池に反射した西日に照らされて輝く昆明南駅のホームに滑り込む
ここで、上海を経由して北京まで同行してくれる会心の友とも合流することに
「久しぶりだな。元気だったか?」「俺は元気でやってるぜ。そうだ、紹介するよ。こちらが今回北京まで俺たちの案内と食費・宿代その他諸々の経費負担を担当してくれる元クラスメイトで1番の相棒だ。そして、お前にも紹介しなきゃな。隣にいるのが俺の彼女だ。」「え?今、なんて?彼女できたのか?」「そうだよ。」「お前みたいな奴にも彼女できるなんて思わなかったよ。だから、彼女さん大切にしろよ?」「再会して早々、そんなこと言われるとはな(苦笑)まあでも、惚れた女を大切にし、彼女が傷つかないように気を配り、時には身を挺して守るのが男の一生モノの課題だからな」そう自信満々に言い切ると、「え?それってあの時の…」そう言って彼女が顔を真っ赤にする
そして、その光景を見ていた親友から一言
「お二人さん、そろそろ移動しないと目的地行けないぞ?」
「そうだったな。行くか!」