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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 14.ヌリカベ ⑰

「ホーント、ネロ達どこへ行ったんだろ」
わたしはトイレに向かいながらそう呟く。
「突然消えて壁が現れるなんてやっぱり変だよね…」
何でだろ…とわたしは首を傾げる。
「もしかして壁を作り出す異能力者がいるとか…」
そう言いかけて、わたしはふと立ち止まる。
「…まさかね」
もしそういう異能力者がいても、動機が分からない。
第一、そんな事をする意味があるのだろうか?
そう思いながら歩いていると、不意にある事に気付いた。
「あれ?」
このフロアのトイレがある辺りへ来たのに、肝心のトイレが見つからない。
あるのは壁だけだ。
「何で…」
道でも間違えたのかな?とわたしは周囲を見渡す。
しかし、それらしい物は見当たらない。

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続いてほしい時間ばかりがあっという間に過ぎて
これでもか って程 握りしめるコートの袖


「また 明日ね」

焦らずにいこう
この日々に飽きるまで
それとも君が破るまで

この日々が当たり前になる前に
「幸せ」の眠りからは覚めないといけないけれど


まだこの袖は握ったままでいよう

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ユーラシア大陸縦横断旅61

「次はどこ行く?」そう彼女に問いかけると
「市内をタクシーで見たい」と返ってきた
疲れていたので市内巡りでいいと言われて安堵し、恋人繋ぎで来た道を戻り、パディントンからタクシーに乗り込む
俺はイギリスの中流階級の話し方に日本語の発音を混ぜたような英語で、運転手は訛りの抑えた北部イングランド方言の英語で雑談をしていると、「日本からの観光客なんだろ?なら、日本の歌かけてやるよ。歌詞の意味は分からないけど、イギリスを歌ってるみたいだから分かったら歌詞の意味教えてくれよ」と言われたので実際にかけてもらうと、聞き覚えのある曲が流れてきた
そう、俺が昨夜寝言で歌った曲の原曲だった
「ビッグベンの前を左折して川沿いに行き、ロンドン橋を渡って川の南岸を通ってウォータールーに向かってください。ブラックフェアーズ辺りで今の曲をもう一度再生してください。そうすると、時間を計算するとタワーブリッジが見えて来る頃には夕暮れ時なので文字通りの歌詞の風景が見えますよ」と告げると「間奏の後のユーロスターってのはどういう意味で言ってるんだい?」と返ってきた
「『風を切り走るユーロスターみたいに、向かい風も気にせずに走り続ける』、つまり困難には負けずに進み続けるということを歌の中で宣言しているのです」と答えて再び話していると「Look at your bird (Birdとはイギリスのスラングで女という意味。つまり、『君の彼女を見ろ』)」と言われたので振り返って彼女に声をかけると明らかに不機嫌そうな表情で「私って頼りないの?」とだけ返ってきた
「俺の思い出の場所と関東では俺がエスコートするから、俺が不慣れな場所では代わりにお願いできるかな?」と訊くと「その時は任せてよ」と言ってそれまでとは打って変わって笑顔になってくれた
歌の歌詞通り、夕暮れのロンドンに佇むタワーブリッジと彼女の笑顔を見て、後に俺が大好きになるチームで活躍したが新しい応援歌ができてすぐに移籍した選手の幻の応援歌の歌詞を思い浮かべるのだった

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分からない

私には分からない

私の心から

涙が溢れたの

なんで・・・?

私には分からない

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ユーラシア大陸縦横断旅60

地下鉄で40分、思い出の駅に着いた
「「この駅舎、この改札口、懐かしいなぁ…俺(僕)たち、ここで東北の震災の影響で延びた卒園式以来5年ぶりの再会を果たしたんだ(よ)」」「君は震災の後、すぐ向こうの国に逃げ込んだんだよね?」「そうなんだよ。向こうではそもそも地震がないから親戚が不安になってしまうし、放射線の問題が云々で大人の話に振り回されて大変だったよ。父方の親戚がいる名古屋に行って安否確認を取り、その翌日にセントレアから飛び立ったんだ。安全が確認されて羽田空港に降り立った後、モノレールから東京タワーの先が斜めになったのを見て泣いたのは覚えてる。当時は幼稚園出たばかりの子供で俺達は何もできなかったけど、大人達が日本全体で頑張ってくれたから新幹線はやぶさも、スカイツリーもできたんだ。」「そうだね。僕はスカイツリーが完成する直前にイギリスに引っ越したから完成形は帰国してから見たんだ」同じ幼稚園で親友となり、震災と親の仕事で引き割かれたものの英国で再会し、友情を取り戻した男2人でしみじみとしていると「私って場違いみたいだね」と彼女が泣きそうになる
即座にそれを否定し、「そんなことないさ!ここは俺とコイツにとって、いや俺やコイツの家族にとっても大切な思い出の場所なんだ。だから、これから俺の家族になる君にも見ておいて貰いたかったんだ。」と俺が言うと、彼も一緒になって続きを言う「「ここで一緒になった後、また離れ離れになっても再会した時は今まで以上に仲良くなれる。ここはそんな場所なんだ。」」彼女が俺に抱き付き、「2人ともいつも通りだね」と幼馴染が呆れたように言うと「俺たちの幼少期と変わらんよ。友愛の精神で男同士仲良いか好きな異性と結ばれたのかの違いだけさ」と高らかに笑い返し、そのまま駅のコインロッカーから荷物を取り出し、ヒースローエクスプレスで空港に向かう
「君は3ター、彼女さんは僕と同じ2ターだね。今度は同窓会で会おうか」「そうだな。体には気をつけろよ。俺達兄弟の思い出が詰まった街は美しいから堪能して来い!チャリ専用の道に落ちるなよ」と言うと「チャリ専用の道?まさかあんな所に落っこったことあんの?酔っ払ってたの?」と笑われた
「そこかよ!次会う時もまた笑顔で、な」と言って握手し、「今度はオレンジ門で会おう」「そうしようか」と言ってお互いの道を進む

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卒業

当たり前にそばにいた君と会うのに理由が必要になった日。