御霊は善い行ないをしたら輝きを放ち
悪い行ないをしたら欠けていく
御霊はみたまんま、誰かが仰っておりました
「いや、うちのきーちゃんが行こうって…」
寧依は金髪のコドモに目を向ける。
きーちゃんことキヲンはえへへと笑う。
「何よそれ」
すみれは呆れたように言う。
「ていうか、どうしてここが分かったの?」
すみれが尋ねると、ピスケスはうふふと笑った。
「魔力の痕跡を追いかけてきたのよ」
魔力の塊である人工精霊は動くだけでその場に魔力が残るから、とピスケスは続ける。
「そう言えば…」
すみれは微妙な顔をした。
「…とりあえず」
ナハツェーラーを返せ、と赤髪のコドモこと露夏は、懐から包丁を出してすみれに突きつけた。
「うっ」
すみれは思わず後ずさる。
「ソイツは”学会“の監視対象なの」
何かあれば問題になるわ、と青髪のコドモは部屋に入りながら言う。
トーナメント当日の午前6時、兄貴の電話で全員の目が覚める
「兄さん、何かあったのか?」と訊くと「みんな、聴いて驚くなよ」と言うので副長と俺が声を揃えて「「勿体ぶってねえで、早く言えよ」」と返すと
「皆の個人応援歌できるってよ。しかも、NPBの12球団でもう使われない応援歌に限って流用ができるって」と言うので「よっしゃ!これで彼女のために考えてた応援歌使えるな」と言って俺が拳を突き上げて喜びを爆発させていると、兄貴と彼女から「「彼女さん(私)の応援歌?ちょっと聞かせてくんねえ(もらって良い)?」」と訊かれるので「任せな。現役時代の到さんの流用、もとい替え歌だ。強肩強打〜♪彼氏の誇り〜♪そのまま1発〜♪スタンド入れろ〜♪ってな感じだ」と言うと彼女は顔を赤くしてフリーズし、兄貴は「それ、アレだな。お前の彼女と俺の彼女の共用でチャンスverに使える」と言うので「じゃあ、誰のが個人には良いか…」と呟くと彼女が「私のは貴方に任せるけど、貴方のは私が決めるね」と言うのでお願いしてみる
暫くの間、彼女はイヤホンを着けてプロ野球の応援歌を聴いていたが、どうやら決まったようだ
「巨人ファンの貴方には申し訳ないけど、スワローズ時代の廣岡さんの替え歌で考えてみたの」と言うので聴いてみると、「田畑ありし〜♪中武蔵の〜♪都の誇り〜♪その優しさを基準にし橋を繋げ〜♪」という超がつくほどの傑作が生まれた
一方の俺はと言うと、かなり苦戦していた
「巨人ファンとしては、やっぱり巨人のがいいよなぁ…亀井、村田、井端…名曲揃いだけど、彼女に合いそうなのが少ないなぁ…どうすっか」と呟いていると、兄貴から「彼女さんが望んでるのは凝った選曲じゃなくて、お前の選曲なんだよ」ともっともな指摘をされたので、吹っ切れた
「ミューレンなら…」と呟くと、兄貴がハモらせて「『都の彼氏が微笑む〜♪スタンド揺るがす一振り〜♪博多に向けて〜♪ぶちかませ〜♪』か…無難にいけよ」と言ってくれたので、それに決まった
他の皆のは通常版もチャンス版も決まった
俺達のは、と言うと…巨人の久保裕也投手流用で「彼女の期待を〜♪力に変えて〜♪都の誇りを見せつけろ〜♪そのまま入れろよスタンドへ〜♪」ということに決まった
俺達の試合のプレイボールまで、あと2時間だ
「御機嫌よう。ようこそいらっしゃいましたわ」
伽は突如現れた人外存在に怯む事無くにこやかに話しかけた。
『気ニシナクテ良イノヨォ。オ姉サンノ言ウコトナラ何デモ聞イチャウヨォ』
人型もケタケタ笑って返す。
「実はですね、この辺りで人外のモノを探していますの。できるだけ大きなものが望ましいのですけれど……心当たりありません?」
そう問われて、人型は顎に指を当てて考え込んだ。
『フゥーンム…………。イヤ、マアネ? オレモ根無シノ浮遊霊ダ、ソノ手ノ噂ニハ明ルイ自負ガアルヨ? ケドネェ……オ姉サンヲ危険ニ晒シチャア、オレガ何言ワレルカ分カンネーノヨ……』
「あら心配してくださるの? ご安心なさって、向かうのはこの子ですわ」
伽は悩む人型に笑いかけ、月を指しながら言った。月も突然注意を向けられて一瞬きょとんとしたものの、すぐ微笑んで人型に手を振ってみせた。
『エ、マジデェ? ソンナラドーデモエーワ! チョイト待チナィ!』
口しか見えない表情を輝かせた人型は、腕を構成する靄を一度ほどき、変形させて再び固定した。
『ジャジャァーン、オレ製コノ街ノ地図。チョウドココノ所ニアル空家ガヤベエノヨ。見タ目ハ立派ナ日本家屋ナノニ勿体無イ』
人外の靄で構成された地図を数十秒かけて頭に叩き込み、月は姿勢を正した。
「ほうほうなるほど。ありがと人型さん。じゃ行ってくるなー」
『オウ逝ッテコーイ!』
伽と人型に手を振ってその場を去る月を見送り、伽は不意に先程までとは異なる冷たい表情を人型に向けた。
「……ところで貴方。身体が半分も削り取られて、まだ動けるんですのね?」
『……エ? エ、アレェ⁉ アバ、アババーッ⁉』
自身の異常を思い出したように断末魔をあげて崩れていく人型をその場に放置して、伽はその場を離れた。
「近頃この辺りに出没していた浮遊霊の退治、終了。ルナちゃんがちょうど良く通りかかってくれて助かりましたね」
いつも何かを拒むような顔してる君が
「遊びに行こうよ」って言ってきた。
学校は?なんてつまらない返しをしてしまったけど
別にいいじゃんって何にもなかったみたいに
君は学校とは真逆の方向へ歩いていく。
小走りで追いかけて、どこに行くの?って聞いた。
「どこがいい?」
少し考えて、どこでもいいよと笑う。
「じゃあ映画にしよう」
みんなが授業を受けてる時間に
僕らはアクション映画を見た。
ホラー映画を見た。
恋愛映画を見た。
映画日和だねって2人で笑った。
きっと君が、今日映画に誘ったのは
学校をすっぽかして連れ出してくれたのは
僕の何かに気づいていたからで。
そういうやつなんだよなあって
胸がギュッとして少しだけ、泣きそうになる。
夕日が沈み始めて、学校が終わる時間帯。
今日はありがとう、なんて呟いてみたけど
なんのこと?って笑われた。
きっと最近の、僕の、口癖の真似だと思う。
学校サボっちゃったね、なんて僕はまだ優等生。
「学校なんて、別にいいよ」
思い出に、なった?って君が笑いかけてくれるから
思い出に、なったって笑い返してみる。
明日も僕らは歩道橋の真ん中で待ち合わせをして
明日はきっと学校へ行く。
「また、遊ぼうね」
そんな日々が、なぜか泣きたくなるほどに
嬉しくて、大好きなのは僕だけかなあ
こくりと琥珀色の液体を流し込み
「お」「め」「で」「と」「う」
虚空に散らばった文字がゆらゆらと
ことりとグラスを置いて
あぁ...大人になったな、なんて
去年と同じ言葉をなぞる
ひとりふたりさんにんよにん
たいせつな人たちの顔が
流れていくのを眺めながら
静かに夜が深けてゆく
君が寂しいと言ってくれることすら
嬉しいが込み上げてきて
夢と現実の垣根を超えて
笑っている君の目の前に居れることが
何よりもしあわせな時間で
距離が遠くなるなんて
私と君を阻む理由にすらなれやしないんだよ
目があった
どうしょう
ドキドキ
もっとドキドキしたのは私と目があった貴方の焦った顔をみた瞬間
また1年が巡って
初めて会ったときのきみに私は追いついて
それでも相変わらずきみの背中を追い続けている
最初の頃
この先もいつも一緒にいられると思い込んでた頃
写真のフォルダにはきみの写らない景色ばかりで
赤い髪のきみは残っていない
ひとつ、さよならが来て
当たり前じゃないと気づいた頃から
きみのこと写真に残していたくって
きみの後ろ姿や、ちょっと下を向いた顔なんかが
私のスマホの中に残っていたりする
春が来ればほんとうにさよなら
今までみたいに近くにいれなくなるけど
きみとの思い出だけは忘れたくないから
だから、また
知らない景色一緒に見ようね