「自分のトラウマであるかつてのクラスメイトと再会した上、”あの時のいじめの主導者は自分でしたー”なんて言われちゃ、猛ダメージだよ」
ネロにとっては良い迷惑だ、と耀平は続ける。
「それでネロはまた学校へ行けなくなった」
今度はいじめられることもなく…と耀平は呟いた。
わたしはこの話に、ただただ茫然としていた。
あのネロにこんな過去があったなんて。
わたしは少しも想像していなかった。
耀平はため息をつく。
「…以上がネロの過去だ」
重かったろ、と耀平はわたしに目を向ける。
「こういう事があって、ネロはこの間あんな事をしようとしたんだ」
耀平はまたイスの背にもたれる。
「でもいくら相手が復讐相手だからって、異能力を使うのは何か違うと思う」
耀平はポツリとこぼす。
「きっと相手の記憶を奪おうとしてたんだろうけど…そんな事をしたってネロの過去は変わらないのに」
ま、アイツもアイツで何か考えがあったんだろうけど、と耀平は言う。
「それでも、復讐は何か違うと思うんだ」
そう言って耀平はイスに座り直した。
木から彫り出した木が
本物の木と見紛うほどに
立派な木であることが
永遠の価値を持つように
たとえば
音楽家はやがて純粋な
音楽となって逝った
詩人もやがて純粋な
詩となって逝く
微に入り細に入り
人はその際
純然たる使命を体現し
永遠を拝受する
しかしまあ
要らない箇所を掘り捨てる前に
手を悩ませちゃいけない
なんていう話もないわけで