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鏡界輝譚スパークラー:陰鬱プロフェッサー その④

「というかこの技術、前に『それ』作ってあげた時に説明したよね? 『弾丸以外の形状に光の力を造形する』って」
明晶が指す吉代の左手首には、腕輪型のP.A.があった。これもまた、明晶が自作した改造ギアである。
「それでなんだけど親友」
「んー」
「ちょっとこれの試運転ついでに、ここの周りのカゲ狩ってきてくれない?」
「え、俺格闘の心得とか無いっすよ」
「だいじょぶだいじょぶ。君、何やってもそれなりに上手くいくじゃん」
「……まあ、いつも使ってるP.A.の補助用に使うくらいなら」
「よし来た。使った感じはこっちからも監視カメラで見ておくけど、戻ってきたら使用感の報告とかしてくれると嬉しいな」
「了解」
吉代が部屋を出た直後、明晶はチェストから1台のドローンを引っ張り出し、開け放しになった部屋のドアから吉代の後を追跡させた。
(さて……彼が働いてくれている間に、ワタシもやることやらなくちゃねぇ)
『Photonic Dorper ver.1.5.0』と印字されたアルミ缶の栓を開け、ストローを挿して中身を一口吸ってから手首のデバイスの通話機能を起動した。
「あーもしもし親友?」
『何だ、プロフ?』
「今、君の後に続いてドローンが飛んでいったんだけどね」
『ああ、後ろから近付いてくるこの音はそれか』
「ワタシが操縦してるんだ。ついでにこれも光の力で動かしてるから、P.A.といって差し支えないね」
『戦えるのか?』
「まあ……ローターが直撃すれば痛いんじゃない?」
『あとあんた、光の力めっちゃ低かっただろ』
「そこはドーピングしてるからオッケー」
缶を足蹴にして揺らしながら明晶は答えた。

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鏡界輝譚スパークラー Crystal Brother and Sister Ⅹ

「わたしがアレを倒す」
「バカ言え‼︎」
お前死ぬぞ!と水晶に対し寵也は怒鳴る。
「…あの種のカゲは光線を放つまでに数分のタイムラグがあるって授業で習った」
だからその隙にコアを撃ち抜く!と水晶は拳銃型P.A.を構える。
「でもそのP.A.じゃ威力が!」
「分かってる」
紀奈にそう言われたが、だから至近距離で撃つ!と水晶は続けた。
「…わたしは簡単には死なない」
加賀屋隊のリーダーだもの!と水晶は声を上げた。
「…」
その言葉に加賀屋隊の面々は黙りこくったが、暫くして紀奈が口を開いた。
「…分かった」
あたし、みあきちのこと信じるよ、と紀奈は笑った。
「ボクも信じる!」
弾もそう明るく言う。
「フン、死ぬんじゃねぇぞ」
身内に死なれるのは御免だからな、と寵也はこちらを一瞥もせず言う。
「…失敗しても知らないんだから」
頑張りなさいよ、と巴は呟いた。
「…みんな、ありがとう」
そう言って、水晶は迫り来るカゲに目を向けた。
塔のようなカゲはゆらゆらと歩道橋に近づいていく。
それと共に、頂上部分の光が少しずつ強くなっていった。
あと少し、あと少しで、と水晶は拳銃型P.A.のトリガーに指をかける。
…過去の、澁谷學苑に通っていた頃の自分なら、こんなことはしなかっただろう。
でも幕針文化学院に入学して、わたしは変わった。

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野良輝士市街奪還戦 その⑩

倒れ込んだヌシはそれ以上動かず、肉体は少しずつ溶け消えていった。それに伴い周囲の小型のカゲも奇妙な鳴き声を上げながら消滅していく。
「助かったぜ真理ちゃん……」
うつ伏せに倒れたまま、ガッツポーズを見せる宗司。
「……何やってんだ宗司お前」
「さっきまでカゲの群れが覆い被さってたんだよ」
呆れ顔の灯に答えながら、宗司はどうにか立ち上がった。
「……うえ? カゲ達もういない……?」
宗司と並んでカゲ達にもみくちゃにされていた小春も、宗司たちの話す声に気付いて立ち上がった。
「お疲れー小春ちゃん」
初音が小春を助け起こすと、携帯電話から真理奈の声が聞こえてきた。
『もしもーし? 疲れてるところ悪いんだけど、ちょっと助けてくれなーい?』
「ん」
「どうした?」
通話に参加していた初音と灯が反応する。
『最初のビルからちょっと落ちそうになってるんだけど』
「何があったらそうなるんだあの馬鹿は……ちょっと行ってくる」
灯が鉄線銃型P.A.で屋根に登り、そのまま真理奈のもとへ駆け戻って行った。
「……俺らも行くべ。真理ちゃんに何が起きてるのか見に行こうぜ」
「了解。ついでに小春ちゃんの顔見せもしよう」
「ああはい、よろしくお願いします……」

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キャットタワーのヒエラルキー

ご褒美があればすぐに食いつく人間たち
まるでネズミを追いかける猫みたいだ

「いい子ね」って撫でられたら満足かい?
ゴロゴロ喉を鳴らして一生歌ってな、かわいい子猫ちゃん

キャットタワーのヒエラルキー争いが勃発中

そんな所で争っても、すぐに落下するのがオチだろうさ
こんな皮肉しか言えない俺は かなりひねくれてるね

もう少し素直になりたいモンだな、なんて嘘だよ

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青春

何気ないことで笑いあって
好きな人がいて
忙しい放課後

夕焼け色に染まる校舎

漫画の中で夢みた青春は
案外、存在しないのだと知った

仲間が欲しかった
恋がしたかった
勉強だけじゃ埋められなかった

満たされない寂しさが
青春へと変わる