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喜んでお手伝いしますよ!

「高校卒業したらこんな未来のない国は出てく。給料の高い国で稼いで、物価の安い国で遊ぶんだ」
「日本みたいな国民皆保険制度のある国はそうはないよ。けがや病気したらどうするの? 日本にすぐ戻れる程度だったらいいけど、そうでなかったら稼ぎなんてパー。皆保険制度があっても国じゅうどこの医療機関でもかかれるなんて日本くらいなものでしょ。お金かかってもまともな医療が受けられればいいけど、物価の安い医療の未熟な途上国で病気して手術して、一生後遺症に悩まされるなんて悲惨だよね」
 と、そこに愚者登場。
「わたしはいいと思うけどなあ、夢があって。けがしたら、病気したらどうするなんて、そのときに考えればいいじゃん。アメリカのことわざにこんなのがある。まず、バスを走らせる。給油のことで悩むのはあと」
「さすが帰国子女。卒業したら俺と一緒に海外行ってくれる? 英語ペラペラな娘がいたら助かるわ〜」
「I'd be happy to help you!」
「いえ〜い」
 で、わたしはハイタッチして仲よく教室を出て行く二人の後ろ姿を見送ったってわけ。もちろんその夜は特大ピッツァをやけ食いしたわ。

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アルミサッシにサイコパス

 喜怒哀楽、すべての感情は暑さ、寒さ、痛みに対する反応と同じ、生体の物理的反応である。意味はない。
 加害者に対する恨み、憎しみを抱き続けるのは加害者に支配され続けるのと同じことである。
 気にしたら負け。
 てーな記事を検索して読んでみるも前向きになれぬのはどういうことかというと、わざわざ説明するまでもない。わたしがすぱっと感情を切り捨てられるようなサイコパスではないからである。よかったよかった。これでいいのだ。あはははは。
 と、そこに愚者登場。
 またあすか、ひとりごと言ってた。また、歯みがきしてた。
 他者の心を想像する能力がないのと感想の回路を持たぬゆえ他者からしたらどうでもいいことを口に出す。愚者よ。
 ああ、また気にしてしまった。
 むかしからこうしているが通ったらなんでも通る。進歩をさまたげる長老どもよ。
 アルミの抗菌効果に期待したい。

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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 16.トウテツ ⑩

夕方、辺りが薄暗くなってきた頃。
わたし達はミツルと別れ駄菓子屋を出た後、普段の解散場所である寿々谷駅前に向かっていた。
「ネロ、結局ココアシガレット2箱目を買ってもらったのか」
「えー良いじゃん」
ネロと耀平は楽しく談笑し、黎と師郎も時々会話している。
わたしはその様子を後ろから眺めていた。
今日も楽しかったな、そう思いつつ路地裏を歩いていると、ふとネロが足を止めた。
「?」
どうしたネロ、と葉柄がネロに聞く。
師郎や黎もどうしたんだ?と不思議そうな顔をする。
ネロは少し黙っていたが、言いにくそうに口を開いた。
「…気配が、する」
「気配?」
耀平が聞き返す。
「うん、気配」
ネロはポツリと呟く。
「もしかしたらこれは…」
ネロがそう言いかけた所で、うっふふふふふとどこからともなく高笑いが聞こえた。

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まばたき

手のひらに静脈を書いてみる
それでも君は花言葉を知らないひと