「こいつで、カゲ化した部分よりちょっと上からスパっとやるのさ」
「……止血とかは」
「大丈夫。切断と同時に切断面にバリアを張って止血する仕掛けになってるから」
「あぁ……そうなんだろうとは思ってたが、やっぱりP.A.なのか」
「うん。一応アフターケアも用意してるけどね。万が一ワタシか君がカゲに手足をやられた時のために。……さて、やるか。その子押さえてて」
メスを両手に持って立ち上がり、その刃を少年の腕に当てる。
「…………救命のためとはいえ、……人体に刃を当てるっていうのは、なかなか緊張するねぇ」
軽口のように言い放つが、明晶の手は震え、呼吸は少しずつ荒くなっている。
「プロフ」
「ん?」
「パス」
「あっ」
吉代がメス型P.A.を奪い取り、勢いのまま振りかぶった。
「っ、肩より10㎝程度先を狙って切断して!」
「了解!」
まだ人間的な腕の根元部分に、メスが入る。その刃は光の力によってほぼ何の抵抗も無く肉も骨も切断し、その切断面には光の壁がぴたりと貼り付いて完全に密閉した。
「いやぁ……ありがとうね、親友」
「ん」
「ここからはバリアを構成してる光の力を、人体の代替パーツに変形させて、自然治癒を待つ」
「さすがにこのバリア1枚分で腕全部補うのは無理じゃないか?」
「そりゃそうさね。だからこれを使う」
そう言って明晶は、未だ冷気を吐き出し続ける箱の中から、もう一つのP.A.、金属製の義腕を取り出した。
かわいいものが好きだけど、かっこいいものを持っていたい
女性らしさを残しながら、かっこよくいたい
美しくいたいけど、メイクが嫌い、そのために徹底的にお肌ケアをしているよ
女の子だけど、デスボイスに憧れてる、激しい音楽も好き、面白いなって思う
女の子だけど、いつも面白いこと考えてる、頭の中じゃふざけてばかり
女が赤で、男が青って概念はなぜ生まれた?
でもその疑問に気付けたのはなぜなの?
いつしか人々は気付きはじめた、けどまだ残ってる
一人が気付いたくらいじゃ、世界は変わらない、変えられない、
でも、自分の世界なら変えられるよ
他にも疑うべきことが、まだたくさんあるはず、気付けたら良いな
自分の世界を変えていこう、自分の望む方へ行こう
些細なことでも良いの、想いの分変わるよ、行動
「…」
みんなは突然の提案にポカンとしていた。
「あれ、みんな興味ない?」
金髪のコドモはそう首を傾げる。
「…いや、別に興味がない訳じゃないんだけど」
急すぎてビックリしてるって言うか、とかすみは呟く。
「確かに」
突然のことだものね、とピスケスは頷く。
「まぁそんなことはいいとして」
花火大会だろ?と露夏が立ち上がる。
「おれはすっげー行きたい!」
今までテレビでしか見たことないからさ、と露夏は明るく言う。
「そうね」
私ももう長いこと花火は見に行ってないし、とピスケスはこぼす。
「自分も、行きたいな」
花火って見たことないし、とかすみは小さく手を挙げる。
「ナツィは?」
金髪のコドモはテーブルの向こう側で頬杖をついている黒髪のコドモことナツィに目を向ける。