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重ねる

隠せば隠すほどそれが本当の自分だった気がしてくる

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櫻夜造物茶会 Act 10

「私達は近くの物陰に隠れて待機するの」
どうせ取引する人間達も、用心棒か何かを雇っているだろうから、そいつらの対処に当たるって訳、とピスケスは言う。
「とりあえず、隠れるわよ」
ピスケスがそう言うと、あとの2人は頷いて別れていった。
「…なんか、潜入捜査みたーい」
近くの建物の陰から3人の様子を見ていたキヲンはそう呟く。
「潜入捜査って…自分達もじゃないの?」
かすみがそう言うと、キヲンはえへへーと小声で笑う。
「でもなんか面白くなってきたって感じー」
キヲンはそう言って建物の陰から身を乗り出した。

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逆なら良いのに。

大嫌いなあいつの言葉は
重さがある。
大好きなあの子の言葉は
軽くて重さがないみたい。
嫌いな奴ほど 
重みのある言葉を、
自分に刺さる言葉をくれる。
だから、僕を嫌いなあいつにも
ちょっとばかり重たい言葉をくれてやろう。

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生きてる実感

道を聞かれて答えることも

みんなと駄弁ることも

力を合わせて重い物を運ぶのも

どれもぼくにとっては新鮮で

憧れだったもので

生きてる実感そのものだ

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都市伝説:四つ辻

「こんな話を知ってるかい?」
学校からの帰り、怪談好きの幼馴染がまた性懲りも無く話しかけてきた。こいつがこの切り出し方をするときは、大抵怪談を語るんだ。
「いや知らん」
「聞いても無いのに……」
「興味無ェんだよ」
「そう言わずにさ」
渋々、話を聞いてやることにする。別に怪談が好きなわけじゃ無いが、こいつの語りはなんだかんだで聞いてて心地が良い。
「通称『四つ辻』。高校の近くに、人工林あるでしょ? ほら、林道が整備されてる」
「ああ……あるな」
「そこに一か所だけ、林道2本が交差した十字路があるんだ」
「……あったっけ?」
「あるんだよぅ。で、そこに夜中の2時に行くと、ちょっと怖……面白いことが起きるらしいんだ」
「怖いって言いかけたの隠しきれてないぞ」
「一緒に行こ?」
「嫌だ」
「そう言わずにさぁ。ほら、何なら昼の2時でも良いから! 次の土曜! 午前授業の後!」
「……何を出せる?」
「ダッツ2個でどうだ」
「いらん。……分かった。行ってやるよ」
「やったっ。約束だからね、絶対だからね、逃げないでよ?」
あいつは心底楽しそうにまくし立て、怪しい笑みを浮かべて見せた。

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平等

こっちが殴ったら、そっちも殴り返す。
そっちが殴ったら、こっちも殴り返す。
同じ土俵で。
一方的なのもNG。
逃げるのもNG。
躱すのもNG。
こっちもそっちも飽くまで対等。
決着が付いたらそれでお終い。
それで良いでしょ? さァ、やろうか。

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櫻夜造物茶会 Act 9

「もちろん、お前にもいる必要あるわよ」
お前は私の“狗”なのだから、とピスケスは微笑んだ。
「さて、着いたわよ」
ピスケスがそう言って、裏路地にある建物の前で立ち止まる。
見ると怪しげな3階建ての建物が立っていた。
「ここか」
建物を見上げて、ナツィはそう呟く。
「ここの3階に入っている店で取引が行われるらしいわ」
ちょうど取引が終わって荷物を持った人が建物を出た所を襲撃するつもりよ、とピスケスは笑う。
「…で、おれ達はどうするんだ?」
露夏がピスケスにふと尋ねる。