ピスケスはうふふ、と笑う。
「“黒い蝶”が、最近“保護者”の元に帰ってないんですって」
ピスケスは身体の後ろに両手を回す。
「アイツ、“保護者”があんなにいい人なのに、どうして家に帰ろうとしないのかしらね」
あの人だって独りは寂しいだろうに、とピスケスは首を傾げる。
「…なんだい」
そんなことでアタシの所へ来たのかい、と老女は呆れる。
「てっきりもっと大事を持って来るかと思ってたのに…」
老女がそう言うと、ピスケスは別にいいじゃないと微笑む。
「アイツの“監視”をすることも、私が歳乃(としの)から与えられた役目なのだから」
こういう日常の報告もたまには必要よ、とピスケスは歳乃と呼んだ老女の顔を覗き込む。
「そうでしょ、“マスター”」
ピスケスがそう言うと歳乃は、その呼び方はやめなさいと顔をしかめる。
「アタシは、アンタのことは使い魔じゃなくて古い友人みたいに思ってるんだ」
だからマスター呼びはやめてくれ、と歳乃はピスケスから目を逸らした。
「うふふ」
まぁいいわ、とピスケスは歳乃に向き直る。
「それじゃ、私はかすみの元へ行ってくる」
あの子たちとのお茶会が待ってるからね、とピスケスはくるりと歳乃に背を向けると、長い髪をなびかせながら部屋を出て行った。
「…全く」
ウチの使い魔はおかしな奴と歳乃は呟くと、また手元の書類に目を通し始めた。
〈白蛾造物昼下 おわり〉
何処かに、猫の住む町、
通称「猫町」が存在していると。
そして、その町で死んだ人間は。
「化け猫」になるらしい。
そんな「猫町」から遊びに出て、
...帰れなくなりました。
誰か帰り方教えてください。
住所は猫町、またたび通り八丁目です。
帰れなくなった仲間、居ないかな。
数秒後。彼女の傍らには、大きな鳥が立っていた。
「やっぱり...不死鳥だ...!」
彼女が初手からこんな魔術を使うと思わなかった。
「早めに片付けてくれると嬉しいな、まだ仕事があるんだから。」
どうせ寝たいだけだろうそれ。
しかし、彼女の選択は正しかったかもしれない。
不死鳥の凄さは圧倒的な外傷のなさである、
一気に2体を外傷無く焼き殺した。
そして彼女は死体に駆け寄り、死んでいる事を確かめる。
「うん。これを解体して終わ
彼女がその言葉を言い終わる事はなかった。
彼女の背後から飛んできた氷塊が、彼女を数メートル吹き飛ばしたからだ。
「.....ッ‼︎」
「マスター‼︎」
「と言うかさぁ、昔の僕、結構やんちゃしてたじゃん?正直黒歴史だよねぇ。」
「黒歴史があるってのは、昔の未熟さが恥ずかしくなる位立派になったって事じゃねぇの?知らねぇけどよ。」
全く。酒の肴に昔話はやめてくれ。できるものなら思い出したくない。
「成程ねぇ。じゃ、多分優は黒歴史ないね。何にも変わってないもん。」
「...喧嘩売られるって事で善いか?」
「さてどうでしょう?」
...完璧に舐められている。
「よーし喧嘩だちょっと表出ろ?」
「やだぁ、再会早々喧嘩なんてやめなよぉ。」
喧嘩、と言うワードに反応してカウンターの中年の男が振り向いた。うわ、目ぇあった。
「...場所変えようか。」
「悔しいけど今回は同意する。」
心の底から不本意だが。
寒いな、なんて思っていたら、彼女が声をあげた。「猫だ!」顔をあげたら、そこには尻尾の短い猫が。隣の彼女を見てふと思う。
君も猫みたいなもんだけどな。気分屋で、甘えたがり…だけど、憎めない子。これからも、仲良くしてね。
寒いな、なんて思っていたら、隣にいた彼女が声をあげた。「猫だ!」ふと顔を上げると、尻尾の短い猫が悠々と歩いていた。隣の彼女を見やり、ふと思う。_私からしたら君だって猫みたいなものだよ。自由人で、気まぐれで、でも憎めない子。これからも、仲良くしてね
「…………ふむ」
湊音はしばらく考え込んでから、膝をついて青年と視線を合わせた。
「どう? 怖い?」
「な……が……」
「動けないでしょ。膝をついたその瞬間から、君の時間はもう進まない。『その過去』を固定したから。そういう能力。たしかに君の異能はかなり強かったけど、君はそんなに強くなかったね。3回やり直すだけで抑え込めた」
「ッ……! 俺、が……弱い……だと……⁉」
小刻みに震えながら言葉を絞り出す青年を、湊音は少し驚いたように眺めていた。
「ん……たしかに僕の異能は干渉者級だからそこまで拘束力は強くないけど……前言撤回、君自身も決して弱くはな」
青年の両腕が振るわれ、湊音の胴体が輪切りにされる。
しかし、再び異能が発動し、湊音は青年の背後に回り羽交い絞めを決めていた。
「4回目かぁ……しかし、君も分からない人だなぁ」
青年の耳元に顔を近付け、湊音は囁くように語り掛ける。
「僕は『時間の干渉者』だ。たしかに直接君を傷つけることはできないけれど、君の身体の自由は既に僕の手にある。わずかな擦り傷でも負ってみろ、僕の異能でその瞬間を『固定』すれば……どうなるか、予想できるね?」
数秒遅れて、青年の顔が青ざめた。
「ふふ、分かってくれて嬉しいよ。これに懲りて、あまりお痛をしなくなってくれると嬉しいな。僕が仕える“無命女王”は、僕なんかより何倍も強いし、僕よりもずっと容赦無いからね」
既に異能を解除しているにも拘らず動けないでいる青年の頭を一度優しく撫で、湊音はその場を後にした。
あの人に好きって言った
数日経ってあの人も好きって言った
でもちゃんと付き合うとかは言ってない
LINEも親密になったし
学校でも恥ずかしくて目を合わせられなくなった
なのに何もおこらない
みんなに付き合わないのなんで?っていわれる
特に理由は無い
お互い付き合ってくださいって言えないだけ
はやく言ってくれないかな
毎日どきどきだな
修学旅行でなにか関係がかわるかな
そんな私たちの関係性は
いまのところ
本当にいまは
友達以上恋人未満
誰かどうしたらいいか教えてください!!
彼氏もいたことないし、両思いも初めてで何もかもわからないです!!
勇気出さないとって分かってるけどなんか怖い。
ちゃんと彼女として振る舞える自信もない
お付き合いを何も知らない
でも、せっかくのチャンスは逃したくないです!!
手にしている缶コーヒーはまだ温かい。その温もりはいつまで続くだろう。冷めちゃうね、と呟くが返事は軽い頷きだけで、この人との間は詰められない。詰めてはいけないような隙間がある。その隙間を風は容赦なく通り抜けていく。この缶コーヒーを買った自販機はどこだっただろう、一体どれくらいの距離を歩いたか。何も話さずに二人が黙々と歩いているのが不気味だと思われないだろうか。今はそんなことも気にならない。ただ目の前にある背中を頼もしいなぁと眺めながらも、冷やかしてくる夕陽に目を細める。今日も良い一日になった。明日も晴れだといいな。そんな視線も気にせずに目の前の背中は遠ざかっていく。小走りで追いかける。この日々がいつまでも続くと思うのは間違いだろうが、そう願うのはきっと素敵なことだ。あの人の背中に手を伸ばす。まだ触れる勇気は出ない。缶コーヒーが冷めた。飲まずにポケットにしまう。家に帰って温めよう、と思ったそのとき手の冷たさに気づく。思わずあの人の手を見る、指先が微かに揺れている。この寒さが共有できた気がして、心がすこし温まる。まだ冷たい風が耳を撫でていく、背中に向けていた視線を足元に落として、少しひとりで笑みを浮かべる。