自分が悪いことをした時、
本当に優しい人は、ほっておいたり、加担したりしない。
本当に優しい人は、「やめろ!」と叱って
自分の行いを諫めるはず。
本当に人に対して誠実な人は誰か。
よく考えるべきだなと思った。
「なるほど」
つまりわたしがあの子の昔の知り合いに似てたからこの間話しかけてきたんだ、と言いつつ少女はネロに目を向ける。
ネロは恥ずかしがって耀平の陰からこちらを覗き見ていた。
「うん、何かそうらしいんだよー」
ごめんなーアイツが迷惑かけてーと師郎は笑いながら頭をかく。
「ううん、良いの」
わたし、ここに引っ越してきたばかりだから誰でも話しかけてくれる人がいるのは嬉しいな、と少女は微笑む。
「それで…謝花 メイ(じゃはな めい)ちゃん、だっけ」
「うん」
わたしが話しかけると、メイと言う少女はこちらを向く。
「どうしてここへ来たの?」
ショッピングモールのこんな隅っこ、中々来る人いないんだけど…とわたしは呟く。
「あー、ママがね、トイレ行って来るからあっちで待っててって言ってたの」
そしたら見覚えのある子がいて、とメイは続ける。
「…で、よく見たらウチのネロだったって事か」
耀平がそう言うと、メイはうんとうなずく。
「まさか、先週話しかけてきたあの子だなんて思わなくて」
びっくりしちゃった、とメイは笑いつつ再度ネロの方を見た。
ネロは驚いて耀平の陰に顔を隠した。
本編が始まる前に設定を一応。
世界観は、現実の地球に、人外ばかり集まる変な島国がぽつんとあるという感じ。割と大きめの国だったりする。
ニト…生物かどうかも怪しい魔術師。アルビノっぽい見た目で潔癖気味。サイコなところも悪女っぽいところもあるけど今は落ち着いてる。
ヴィオラ…戦闘民族的な。シンプルに力が強い。あんまり器用ではない。ニト様に拾われるまでは彼氏?兄弟?みたいな友達がいた。
種枚さんは着ていたパーカーを脱ぎ、素早く腰に巻きながら倒れている人影に近付いて行った。……ところでこの人、パーカーの下に、薄手とはいえもう1枚パーカー着てる……。
そして人影の頭を掴んで持ち上げ、軽く投げ上げるように浮かせてから顎に強烈なアッパーカットを決め、その身体を強引に起き上がらせた。
更に深く沈み込むように膝を折り曲げ、一気に跳躍して人影の首を殴りつける。それによって人影は勢い良く回転し、仰向けに倒れた。
「…………よし、と。首は獲った」
こちらに振り向いた彼女の手の上には、たしかにあの人影の首から上だけが載っていた。
「多分これで死ぬでしょ。大体の生き物は首を捥がれると死ぬ」
「いや……駄目っぽいです」
自分が指差す先、種枚さんの背後では、両腕と頭部を捥がれ、致命傷を受けたはずのあの人影が、再び起き上がろうともがいていた。
「あェ?」
間抜けな声をあげながら振り向く、その瞬間ちらっと見えた種枚さんの表情。
すごく凶悪な笑みを浮かべていて正直あの人影より怖かった。