音楽に身をしずめに参りました
ミラーボールの光が僕の孤独を攫いますように
観覧車のまばたきが貴方の罪を見逃しますように
東京。思い浮かべるのは、憧れ、夢を叶える人が集う街、キラキラしているようにも見える。
しかし、行き交う人の表情を見ていると喧騒に揉まれ疲労に満ちた色に見える時がある。
都会とは、人が行き交う如く、様々な人の誘惑がマーブル模様のように絡みあって
成り立っている。
僕の心もこんな感じでいろんな感情がぐるぐる回り続けてると思うと、
少し親近感すら湧いた。
今日の夜は、こんな感じです。
「あ、あのー、そのー…」
ネロは思わずもじもじするが、隣にいる耀平がネロの背中を押す。
耀平に励まされて、ネロは意を決したようにこう言った。
「今度、今度、寿々谷公園で”寿々谷市民まつり”ってのがあるから、一緒に行かない?」
それを聞いて、メイは驚いたように目をぱちくりさせる。
「メイ、寿々谷に来たばかりで分からない事だらけでしょ?」
だから、案内するついでに、ちょっと…とネロは消え入りそうな声で言う。
メイは暫くポカンとしていたが、やがてこう言った。
「いいよ!」
別に行っても、とメイは笑顔で返す。
ネロは思わず返答に、へっ⁈と驚く。
「い、一緒に行ってくれるの⁇」
「うん」
今度がいつか分からないけど、楽しそうだから行きたいとメイは笑顔で答える。
「…あ、ありがとう」
ネロは思わず顔を赤くした。
「多分これで本当に終わりだと思うよ」
声がした自分の隣に目を向けると、種枚さんがそこに立って腰に巻いたパーカーを着直していた。
「流石に体組織が燃え尽きて生きてられる生き物はいないと思うから」
「え?」
もう一度、人影の方を見る。まるでタイミングを見計らったかのように倒れた身体の随所から発火し、みるみるうちに灰の塊へと変わっていった。
「な、何が起きて……」
「知りたい?」
「それはまあ、はい……」
種枚さんが自分の額に指先を当ててくる。するとまるで針でも突き刺されたような痛み、いや高温が襲ってきた。
「熱っつ⁉」
「どうよ、熱いでしょ」
「何ですかこれ⁉」
「やァー、私興奮すると体温上がるタチでさァ」
「限度があるでしょう⁉」
「生命の神秘だよ」
とりあえず指は放してもらって、一度落ち着く時間をもらう。
「落ち着いたかい?」
「はい、ありがとうございます……助けてもらったことも含めて」
「それは気にしないでおくれ。人間を人外共から守るのは私みたいな力ある奴の義務みたいなモンだからさ」
最後に一度、こちらの肩を軽く叩き、種枚さんはどこかへ歩き去って行ってしまった。
「ヴィオラ、初仕事」
「初仕事!?なになに!?」
「初っ端から悪いけど命懸けてもらうよ」
「えっ」
そんな会話の後、ニトに連れて来られたところは屋敷の地下室だった。周りを見渡すと、ガラス張りの個室の中で動物達が自由に過ごしている様子が目に入る。
「この子たち、僕の眷属なんだけどね、普通の動物じゃないわけよ」
「?うん」
「彼らをあそこから出して、触れ合えるかどうか試してほしい。いっぱいいるから、あの辺の一部だけでいいや」
「命懸けるほど危険なの…?」
「うん、まあね。腕の一本二本くらい持ってかれるよ」
「ぐええええ!まじで!?」
「詳細な仕事内容としては、あのケージを開けて、彼らと簡単に挨拶して触れ合うだけのものだけど…もし噛みついたりしてきたらケージに戻して、このガムテープを貼っておいて」
さらりと仕事内容を告げ、ヴィオラの手にガムテープを持たせると、ニトは踵を返す。
「じゃ、僕が帰ってくる前に終わらせてね」
「えっ!?ちょっ、ニトぉ!?」
to be continued…
(走って行けるのか?線路沿いに進めば駅には着く筈だけど...。)
駅まで走れるのか。
体力的な面と、きちんと通れるのか否か、というところが問題だ。
(体力...は、大丈夫な筈。)
テトは元野良猫だ、そこそこ走れる。
(果たして、通れる様な場所はあるのか?)
人間の通れない様な場所も、ある程度通れるとは思うが。