「探す探す〜!」
「私はまぁいいけど…」
「ボクも手伝うー!」
夏緒、ピスケス、キヲンはそれぞれそう答える。
「かすみは?」
露夏がかすみの方に目を向けると、かすみは自分?と言わんばかりに自らを指さす。
「自分はいいけど、ナツィが…」
かすみが隣に座るナツィに目を向けると、ナツィは不満げにそっぽを向いた。
「俺は興味ないからパス」
お前らだけで行って来い、とナツィは呟く。
「そんなちびっ子の親探しなんてどーでもいい」
「ちびっ子とか言うなよお前」
ナツィの言葉に対し、露夏は顔をしかめる。
「コドモの親がいない、これは緊急事態なんだぞ」
「それがどうした」
露夏は語気を強めるが、ナツィはそれを意にも介さない。
「…」
2人は暫く睨み合っていたが、やがて露夏がじゃあいいと言った。
「おれ達だけで探すからお前はそこで待ってろ」
ふいっと露夏はナツィに背を向けると、そのまま公園の出入り口へと向かった。
「ごーはーん!!」
「分かったってば。何が食べたいんだい?」
ニトが呆れたように言いながらドアを開けると、ロマがぴょこぴょこ跳ねてニトに抱きついてきた。ニトは危なげなくロマを抱きとめる。
「ぱんけーき!」
「昨日も食べたじゃないか」
「あまいのすきー」
と、いつものように平和な会話を交わしていると…ピンポーン♪インターフォンが鳴った。二人は顔を見合わせる。
ニトの家はもともと田舎にあり、稀にニトの古い友人が訪ねてくる程度の来客しかなかった。数百年前、ロマが記憶喪失の状態でやってきたのが最後である。
「…誰だろうね」
「お、おまえのともだちじゃないのか?」
「さあ?うちには一応番犬もいるし、怪しい人ではないと思いたいけど」
「よ、お前も気の毒だったな。ご苦労だった、あとは俺ら『化け物』に任せてくれ」
地上階のエレベータの脇に倒れていたDEM社員に、フェンリルが声を掛けた。多分死んでるだろうけど。
周囲を見回してみると、屋内にも既に小型のインバーダが何体か入り込んでいる。
「あ、俺は中の連中片付けていくから、先に出てて良いぜ。言っとくけど、逃げようとは思うなよ? 撃たれるぜ」
フェンリルが言いながら、ガラスの割れた自動ドアを指し示した。
「うん。じゃあ、お先に失礼します」
手を振るフェンリルに軽く頭を下げて、外に出る。
外もまた、ひどい有様だった。大小さまざまなインバーダがそこら中で暴れていて、モンストルム達の能力でアスファルトも周りの建物もボロボロになっていて、ところどころ逃げ遅れた民間人の姿も見える。
「な……なんで、まだ逃げられてない人も居るのにこんな……?」
「まあ、気性難で閉じ込められた連中も結構いるからねぇ」
隣のデーモンが応じた。
「さて、せっかく出てこられたわけだけど、君はどうしたい?」
「…………まずは民間人を避難させる」
「僕もそうしたいと思っていたところだ。さあ行こうか」
ゲーリュオーンの指示を遮るように、イフリートは口答えする。
「…なぜ」
「お前においしい所を持ってかれたからだよ」
あのインバーダはおいらが仕留めるつもりだったのに、とイフリートは口を尖らせる。
「それと」
イフリートは右手の人差し指を立てながら続ける。
「お前が怪物態を使えないからおいらを連れてくつもりなんだろ」
イフリートがそう言うと、ゲーリュオーンは思わず俯く。
「確かに、自分は怪物態を晒すのを恐れている」
だがそれとこれとは…と言いかけたが、イフリートはもういいと止める。
「別にお前のトラウマに踏み込むつもりはねーから」
さっさと行くぞ、とイフリートは路上に落ちている長剣を拾って歩き出す。
ゲーリュオーンもそれに続いた。
インバーダ出現の一報から30分、クララドル市中心部にて。
巨大な爬虫類のようなインバーダが商業地を荒らし回っている。
しかし既に人々は避難し終えたのか街はもぬけの殻だった。
「おーやってるねー」
ぴゅーっと空を飛ぶワイバーンは額に右手でひさしを作りながら呟く。
そして5階建ての雑居ビルの屋上に舞い降りた。