君も行く?
小さな返事を聴いて、籠に乗せた。
これは面白くなるかもしれない。
喋りたい事は、聴いてくれた方がいい。
そうだよね?
なー、と返事をした友人を乗せて。
液晶の向こうまで。
飴玉、文庫本、眼鏡、カメラ。
小さな鞄にありったけ詰め込んで。
帽子を被って。
自転車に乗って。
液晶の向こうまで、旅をしよう
「とにかく、どうする?」
耀平は両手で頬杖を突きながら皆に尋ねる。
「その繋がっている奴とやらを放っとくワケにはいかないよな」
耀平がそう言うと、あぁと師郎は返した。
「奴と繋がっているのなら、なおさらだ」
そう言って彼は近くの標識に寄りかかるのをやめる。
「え、で、でも、あの子を見つけてどうするの?」
まさか…とわたしは焦るが、あー平気平気と耀平は手を挙げる。
「別にそこまで手荒な事はしないから」
な?と耀平は師郎と黎に目を向ける。
2人はまぁなとかうんうんとうなずいた。
「えー…」
わたしは何だか心配になってしまった。
「とりあえず、ネロ呼びだすか」
わたしの事はよそに耀平はウィンドブレーカーのポケットからスマホを取り出し、ネロに電話をかけた。
夏の高校野球選手権大会予選抽選会の日が近づいてきた。毎年、主将がくじを引いてどのブロックになるかが決まる。県予選のくじなど、普段は気にしていないが今年は、ものすごく緊張する。俺らに余裕はない。自分の運が勝ち上がりに直結する。今日は練習終わりになんとなく最寄りのスタバに滑り込んで、スマホをながめていた。視線の先には春の甲子園ベスト4の山桜高校の4番、谷口。豪快なスイングから白球がレフトスタンドへ叩き込まれている。こいつを抑えなきゃ甲子園にはいけないな、、、
「おつかれ。」後ろから声をかけられて、俺はドキッとした。
「なんでいるん?」私服の水色のパーカーの女子。瑠奈だ。
「自主練で近くの公園行ってた帰り。うちらも夏近いし。」
「そうだよな。」瑠奈は何も気にしない様子で、俺の隣にすわった。
「これ。あげる。」綺麗に包装された袋を渡された。
「え、くれるん?」
「うん。帰ってから見て!」そういって、さっさとでていってしまった。
なんだったんだろう?家に帰って開けるとそこには、水で濡らすと冷たくなるタオルに綺麗な刺繍で、俺の名前が筆記体で書かれている。そして、小さな手紙が。
「甲子園で優勝してね。甲子園いったら、応援しに行く。」
もう、引けないようだ。瑠奈はバスケの大会日程の関係で、県大会は来れないというのを知っていた。必ず甲子園へ。そして優勝。日本一を取りに行く覚悟を俺は決めた。
あなたはなぜ優しいのか
人の気持ちをよくご存知で
ほしい言葉をくれる
あなたは私に生きる術(すべ)を教えてくださいましたね
有り難うございます
「あれ、誰だっけ?」
自身の頭上から顔を覗かせるタマモに、ロキが尋ねる。
「誰だったかなー……あ、思い出した。ガノの野郎だ」
「あー。助けに行く?」
「別に良いだろ。ダイジョブダイジョブ、あの程度の数なら何とかなるなる」
不意に、ガノとタマモの目が合う。
「あ! そこにいる2人! 見てないで手伝え!」
「いやァ、遠慮しときますよ。ほら、邪魔はしないんで、ガンバ」
「なっ、ふざけんなこの野郎!」
ガノはエベルソルの1体の突進を楯で受け止め、ライフル銃でその頭部を撃ち抜く。その隙に残りの3体に一斉に飛びかかられ、瞬く間に組み伏せられた。
「ぐあー⁉ マジで助けて! 死ぬ!」
助けを求めるガノのことは無視して、タマモはロキに目を向けた。
「……ロキ、じゃんけんしようぜ」
「何賭ける?」
「俺が勝ったらあいつのことは諦めよう。お前が勝ったら仕方ない、拾える命ってことで」
「分かった。チョキ出すね」
「おっと心理戦。『最初はグー』無しでいきなり『じゃんけんほい』で行くぞ」
「分かった」
「「じゃーんけーんほい」」
自分の出した『グー』を見つめ、大きく溜め息を吐き、タマモはガノに目を向けた。
「自分で言ったことだからなァ……おいガノ、土下座して頼めば助けてやるよ」
「テメエ、よく仰向けに倒されてる奴に土下座要求できるな⁉」
「冗談だよ冗談」
タマモとロキの光弾によって、ガノに群がっていたエベルソルらは全滅した。
君の悲しみの 全部はわからないよ
君の苦しみの 一部しか知らないよ
だって、僕は君じゃないから
でも、だから
僕は君と出会えたよ
君はどうだったろう
君が少しでも近い気持ちなら
僕はきっと嬉しい
でも、僕には分からないんだ
君は僕じゃないから