自分が住む町には“潜龍神社”の愛称で知られる古い神社がある。正式名称は別にあるのだが、中世の頃だかに、然る天皇家の後継者を政治的な争いから匿ったとされ、その逸話からこの異名で呼ばれるようになったとか。
そんな潜龍神社で年に4度行われる祭事のうち、12月上旬に執り行われるのが、『潜龍冬祭り』だ。その年1年の厄を払い、清々しい気持ちで新年の準備に臨めるようにするための祭りだという話を、小さい頃に大人から聞いた覚えがある。
「そういえばもうそんな時期か……。せっかく思い出したことだし、行ってみようかな……」
自分が通っていた高校は、地域ではそれなりに名の知れた進学校で、高校2年の冬から大学受験のためにほぼ勉強漬けだったし、大学に入ってからも新しい生活について行くので精いっぱいだったから、一昨年の『冬祭り』より先の祭りには一度も行っていない。
「ええ、お祭りは楽しんだ方が得ですよ。あの人……師匠……種枚さんも毎回行ってるし、多分会えるんじゃあないですか?」
「そうだと良いね」
最後に鎌鼬くんと軽く別れの挨拶を交わし、再び家路についた。
どうも、テトモンよ永遠に!です。
毎度お馴染み「造物茶会シリーズ」のあとがきです。
今回もお付き合いください。
今回のエピソードは主人公がかすみみたいなお話でした。
割と造物茶会シリーズのお話(構想中のものも含む)の中では珍しい、”ナツィが中心じゃない“物語でしたね。
一応このシリーズにおいてナツィは”主役“ということになっていますが、スーパー戦隊シリーズみたいに主役以外の主要キャラが中心になるエピソードがあってもいいということで作りました。
これからもこういった、“主役以外のキャラが中心になる”回が出てくるので、どうぞ楽しみにしていてくださいね。
という訳で、今回は短めだけどここまで。
「造物茶会シリーズ」第7弾(絶賛執筆中)をお楽しみに。
あと来週から「ハブ ア ウィル」の記念すべき20個目のエピソードを投稿し始めます。
昨日完成したての新エピソード、楽しみにしていて…なのですが、このエピソードを語る上で必要だろう番外編を今週末の土日に投稿しようと思ってます。
こちらもお楽しみに。
ではこの辺で。
現在開催中の企画「テーマポエムを作る会」への参加も待ってます!
それでは、テトモンよ永遠に!でした〜
陰に隠れし君のうた
そっと目を閉じて春の風
光の如く舞っては
自分自身の期待と闘っている
気づいてと気づかないでの
曖昧な狭間を揺れ動き
今日も今日とて
偽りの花を咲かす
影に隠した君のうた
ふっと目から零れた春の雨
ステンドグラスがざわめいた。
古城に、"主"の許可もなく足を踏み入れた愚か者がいるらしい。
背後から短剣を一振り。真っ赤な花弁が床に散る。__ああ、掃除は苦手なのに。
「きゃん!きゃん!」
異常事態に気付いた犬が吠え、威嚇してきた。
既に息のない飼い主の盾となろうとしている。
「…ぁ」
哀れな、と言おうとした。でも、哀れとは少し違う気がした。『哀れ』の意味をちゃんと主から聞いておけば良かった。難しい。頭が痛い。
短剣を振った。また床が汚れて…静かになった。
犬は最期まで飼い主のために牙を剥いていた。
音のした方に足音を殺して慎重に歩いて近付く。それにつれて、誰かが言い争うような声も聞こえてきた。
発生源らしき部屋の入り口から顔だけを覗かせて中の様子を見てみる。
私よりいくらか年上に見える少年2人が掴み合って言い争っていた。……掴み合ってというよりは、パーカーの少年の方が一方的に掴みかかっている感じだろうか。捕まっている方も負けじと言い返しているから、どっこいどっこいだろうか。
「……もう良いや」
掴みかかっていた方は急にすん、と落ち着いて相手を放り出した。そのまま備え付けの椅子の方に歩いていく。喧嘩に疲れて休むんだろうか。椅子の背もたれに手をかけ、引いて、持ち上げ…………持ち上げ?
「死ねや塗り絵野郎がァッ!」
そのまま椅子を使って相手を殴りつけた。脚が相手の肩の辺りに直撃し、相手はその場にひっくり返った。
持つ部分を背もたれから脚の側に持ち替え、倒れている方にまた殴りつける。2度、3度、4度目を振り上げたところで、流石にマズい気がしてきたので止めることにした。
素早く背後に回って持ち上がった椅子を掴み、そのまま自分の方に思いっきり引っ張る。体重も使ってどうにか取り落とさせることに成功した。
「誰だ邪魔しやがっ……!」
少年と目が合う。怒りに染まっていた彼の目は、一瞬で冷静なものに戻った。
「ホントに誰だお前?」
「……新入りです、初めまして」
「おう初めまして」
「ちょっとここの案内とかお願いしても?」
「…………」
彼は怪訝そうにこちらを見下ろしている。
「いろいろ聞きたいですし」
「……あー分かった。じゃーなガノ」
殴られていた方の少年は気を失っているようだった。一応彼にも会釈して、部屋を後にした。