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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 20.エインセル ⑰

「っ、ぎゃああああああああ‼」
ジャックフロストの異能力の効果が切れた途端、榮は雪葉の方へ倒れつつ叫んだ。
暫くの間榮はその場でわーわーわめいていたが、やがて少女はうるさいなぁと呟いた。
「⁈」
バッと榮が少女の方を見ると、ツインテールの少女は背の高くてガラの悪そうな少年に姿を変えた。
「よ、少年」
彼…師郎はしゃがみ込んで榮の顔を覗き込んだ。
「…え、え、え?」
榮は師郎と雪葉の顔を交互に見て呆然とする。
雪葉はハハハと笑った。
「騙されてやーんの、榮」
雪葉はそう言って上着のポケットに手を突っ込む。
「これはただのトラップだよ」
うちがヴァンピレスと繋がっている訳ないじゃない、と雪葉は続けた。
「で、でも、あの人は…」
榮が恐る恐る言うと、雪葉はあー彼?と師郎に目を向ける。

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視える世界を超えて エピソード8:雷獣 その⑧

「……なァ君。本気で私を止める気でいるのかい?」
殺気を維持したまま、種枚さんが問いかけてくる。
「…………」
答えることはできない。ただ、睨み返すことで意志を伝える。
「こっちとしては、先に君を始末してから、ソレを殺したって構わないんだぜ?」
種枚さんが1歩、こちらに近付いてくる。彼女の足跡からは小さく火が上がっている。
「何なら、君を躱して直接ソイツをぶっ殺したって良い」
また1歩。
「君1人、そこに突っ立っていたところで、私には何の障害にもならないんだよ」
更に1歩。
「そこで無駄に寿命をすり減らすよりは、大人しくその妖怪を引き渡してくれた方が良いんじゃないか?」
更に1歩。既に種枚さんは、自分の目の前までやって来ていた。彼女の放つ熱気と殺意が、ひしひしと伝わってくる。
「……そこを退け」
たった一言だったけれど、彼女の言葉はとても重く響き、思わず従ってしまいそうになる。
「……ねえ千葉さん?」
離れそうになった自分の足を止めたのは、背後から投げかけられた白神さんの言葉だった。ガサリ、と彼女が立ち上がる音も聞こえる。

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いばしょ。

いばしょってどこだろう。
ある人のいばしょは教室。
ある人のいばしょは美術室。
ある人のいばしょは家。
みんなそれぞれいばしょがあるように見える。
でも、私の居いばしょはないんだ、とおもったことはない?
だいじょうぶ。ゆっくりでいいから、お気に入りのいばしょを探そう。