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鉄路の魔女 〜Megalopolitan Witches. Act 4

「あたしたちだって、みんな仲良しって訳じゃないのよ」
突然のスカーレットの呟きに、水色の髪の少女は不思議そうな顔をする。
「どうしたの? スカーレット」
水色の髪の少女の言葉にスカーレットは横に首を振った。
「…なんでもないわ」
さて!とここでスカーレットは手を叩く。
「さっきの幻影を倒してしまいましょ!」
今頃さっきのあたしの一撃で…とスカーレットは言いながら前を見るが、そこにはすでに何もいなかった。
「あ、あれ?」
いない…とスカーレットは呆然とする。
「幻影は逃げたよ」
どっかの誰かさんの邪魔のせいで、とウグイス色の髪の少女は淡々と言う。
「ちょっ、“ウグイス”…」
あたしは助けに来ただけってのにとスカーレットはうろたえる。
「そうだな」
お前の勝手さのせいだとシルバーは頷く。バーミリオンや彼女の傍に立つ黄色い髪の小柄な少女も静かに頷いた。
「みんなぁ…」
スカーレットはそう言ってうなだれるが、すぐに顔を上げる。
「ま、いいわ!」
あの幻影、探すわよ!とスカーレットは笑う。
「人間たちに危害を与えられちゃ困るし」
ささ、行くわよ!とスカーレットは歩き出す。
「あ、おい待て!」
シルバーはスカーレットを引き留めようとしたが、スカーレットはさっさと行ってしまった。
「…仕方ねぇ」
私たちも行くぞとシルバーが言うと、スカイやグリーンは静かに頷く。しかしウグイスは嫌そうな顔をした。
「あーほらウグイスってばそんな顔しないで〜」
わたしたちも探しに行くよーと水色の髪の少女が手を叩く。だがウグイスはいいと横に首を振る。
「あんな子、どうでもいい」
「そんなこと言わないでよ〜」
水色の髪の少女はウグイスを諫めるが、ウグイスは嫌そうな顔をしたままだ。だがここでバーミリオンが割って入る。

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暴精造物茶会 Act 9

「…ぷはっ」
大学の校舎の人気のない階段の踊り場で、キヲンは塞がれていた口を解放されてへたり込む。
「あうー、息が止まるかと思ったじゃーん」
ヒドいよーベニ〜とキヲンは紅色の髪のコドモこと中紅の方を振り向く。
「だってきーちゃんが探検のことを言おうとするからじゃない」
あの人たちを驚かすんでしょう?と中紅は腰に手を当てキヲンの顔を覗き込む。
頭巾を外したその頭には、狐のような耳が生えていた。
「そうだよ」
きーちゃんすぐに話そうとするんだもんと緑髪のコドモことタイサンボクがマウンテンパーカーのフードを外しながら言う。
タイサンボクの頭には、木々に茂るような葉が髪の毛のように生えていた。
「まぁまぁとにかく」
水色の髪のコドモことクロミスが手を叩いて3人の注目を集める。
薄手のパーカーのフードを外した頭には、魚のヒレのような耳が生えていた。
「さっさと探検を始めよう」
早くしないと遅くなっちゃうから、とクロミスは背後の地下へ続く階段を見やる。
そこから続く下の踊り場には“関係者以外立ち入り禁止”の張り紙が貼られた机がいくつかバリケードのように置いてあった。

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視える世界を超えて エピソード9:五行 その⑧

「まあコイツのことはどうでも良いんだよ。見張りも付けるし、何ならお前が直々に目ェ光らせておきゃ良いんだ、潜龍の」
種枚さんの言葉に、不満げながら潜龍さんは納得したようだった。
「さて、この寄合の本質は、『怪異に手の出せない人間の保護』だ。ちょっと偉そうかね?」
「「いや」」
青葉ちゃんと平坂さんが同時に答えた。
「『それ』は“潜龍”の存在意義でもある」
「岩戸家も左に同じく」
「マジかよお前ら。こいつァ都合が良いや」
けらけらと笑い、種枚さんは話を続けた。
「この寄合はこれからどんどんデカくなるぜ、予言する。私ら5人はその天辺に立つのさ」
「はい、1個質問」
青葉ちゃんが手を挙げた。
「何だい青葉ちゃん」
「この寄合を作る意味って何です? 怪異退治なら、正直既にいくつか組織がありますけど、これ以上増える必要ってあるんですかね?」
「ぁー…………」
種枚さんは軽く唸り声をあげ、しばらく目を泳がせ、再び口を開いた。
「まず、この寄合は飽くまで『個人の集まり』だ。勝手と融通が利く。次に、『はぐれ』の霊感持ち、あとはシラカミみてーな奴を好きなように囲える」
「へ? メイさんみたい、とは?」
白神さんが気の抜けた声をあげた。
「『こっち側』に引き込めそうな『そっち側』」
「はーん……なーるほどー」

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今ここから、この好機から。

才能は無くても仲間がいる。

機会ももらった。

武器もある。

経験はこれからいくらでも積める。

まずはここから始めようか。

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子供は適切な保護者に安全に教育されなければならない 後編

「たしか、テメェは…………まだ13歳だったか」
『ミネ』と呼ばれた男は、呟きながら足下に転がしておいた品を少年に向けて蹴り飛ばす。それに釣られて、少年の視線が足元に転がって来た品物に移る。それらは自動拳銃用のボックス・マガジンだった。
「…………?」
「どうした? ソレ使うなら替えの弾は無きゃ意味無ェだろ。拾えよ」
少年は一瞬の逡巡の後、素早くしゃがみ込んで弾倉を拾い上げた。そして立ち上がった時、ミネは既に少年の眼前にまで音も無く迫っていた。
「ッ⁉」
拳銃を向けた腕を、ミネは片手で掴み、照準から己の身体を外す。続けて少年が振るおうとした空いた片手も片手で押さえ、最後の抵抗に放たれようとしていた蹴りも、両脚を片足で踏みつけるように抑え、抵抗の余地を完全に潰す。
「銃1丁で強くなった気でいたか? クソガキが……」
もがく少年を意に介すこともなくミネは上体を仰け反らせ、少年の額に勢い良く頭突きを直撃させた。
「がっ……!」
拘束を解くと同時に、気絶した少年がその場に崩れ落ちる。倒れた少年の頭を軽く一度蹴ってから、ミネは通信用インカムを起動した。
「…………もしもォし、こちら〈番人〉」
『……はぁい、こちら〈医務室長〉。何だいミネさん先生』
「ガキが脱走しようとしてたから止めた。回収しろ」
『了解。今日は誰だい?』
「ロタ。……ああ、あと一つ」
『何?』
「拳銃と弾倉パクってやがった。没収はするなよ」
『良いのかい? また逃げる時に使われるよ?』
「ガキの鉄砲ごときで止められるなら〈番人〉やってねェ」
通信を切り、ミネは再び塀の上によじ登り、監視を再開した。