「皆さん、終わりました。もう目を開けても良いですよ」
4人の生徒は、平坂の言葉に恐る恐る目を開けた。霊感の無い4人には、目に見えた変化は確認できない。
「お疲れ様でした。これで脅威は去ったと思いますが……念のためにこれを持っていてください」
そう言って、平坂は4人に1つずつ、真鍮製の小さな鈴飾りを渡した。
「あの、これは?」
女子生徒の1人が尋ねる。
「お守り代わりの品と思っていただければ。常に肌身離さず……とまでは言いませんが、しばらくの間、可能な限り身近に置いておくことをお勧めします」
「はーい……神主さん、今日はありがとうございました」
その生徒の言葉に、あとの3人も感謝の言葉を続けた。
「リホちゃんも、呼んできてくれてありがとうね」
「良いの良いの。私は今回のことについてこの人と少し話さなきゃだから、みんな帰って良いよ」
犬神が追い返すように手を振りながら言うと、4人の生徒は頭を下げながら教室を出て行った。
「……お疲れ、『神主さん』」
「とどめを刺したのはお前だろう」
2人だけ取り残され、平坂と犬神は軽く拳を突き合わせ互いを労った。
「あ、砂返すね」
「要らん。持っていろ。あって困るモノじゃ無いだろ」
「うーい」
犬神が能力で砂を操作し、巾着袋の中に一粒残らず納め、口を締める。
「そういえば『アレ』、何だったんだろうね? こっくりさんってキツネじゃないの?」
「分からん。凡そ四足動物のようではあったが……あの生徒ら、何を呼び出したんだ?」
「分かんない。やってるところ実際に見てたけど、大体普通の『こっくりさん』のやり方だったよ?」
「……そうか。俺はもう帰るから、結界の片付けを手伝え」
「ほいほい」
「…さぁ、自分が何者か忘れた異能力者さん」
ヴァンピレスはわたし達に向けていつの間にか出していた具象体の白い鞭を向ける。
「わらわの餌食になって?」
そう言ってヴァンピレスはわたし達に向かって白い鞭を振るう。
わたしは咄嗟にあま音さんの腕を掴みわたしの背後へ移動させた。
「⁈」
ヴァンピレスの鞭はぴたりとわたしの目の前で止まる。
「…何、貴女」
彼女を守る気?とヴァンピレスは首を傾げる。
「…そうだよ」
わたしは恐怖をこらえつつ言う。
「この人は…あま音さんは、わたしの友達だから」
だから、あなたには手を出させないとわたしは力強く言い切る。
「サヤカちゃ…」
後ろであま音さんが言いかける声が聞こえたが、言い終わる前にそれは途切れた。
わたしがパッと振り向くと、あま音さんはしゃがんでうずくまっていた。