「私、思い出したよ」
昔の事、と彼女は続ける。
「私…サヤカちゃんと友達だった」
小学校から帰る方向が同じで、同じキーホルダーをランドセルに付けていたから仲良くなったのと彼女は笑う。
「…でも、私。小4の途中で引っ越す事になっちゃって」
新しく通う事になった小学校に馴染めなくてさ、と彼女はうつむく。
「私、死のうとしたの」
でもそれじゃ私の事を知ってる人皆が悲しむから、私は自分の異能力で大切な人の”自分に関する”記憶を消すことにしたんだとあま音さんは呟く。
「それでサヤカちゃんの記憶も消したんだけど」
「え」
わたしは思わずポカンとする。
「そ、それって…」
「まぁ私達はずっと前に出会ってたって事ね」
あま音さんはそううなずく。
ようやく『入り込めた』。
「手助け……って……?」
『言葉通りサ。オイラの誘惑に乗っかるってンなら、テメエのイジメを何とかする手を用意してやっても良い。安心しろ、犯罪にゃならねェ。現行法に魔法を裁く手段は無いからな』
「ま、魔法……?」
『ソソ、魔法。メァジク。良いか、コイツはオイラとテメエの“対等な”契約だ、千代田ツバメ』
ヤツの身体がまたビクッとなった。そりゃ、名乗ってもいねェ名前当てられりゃ驚くか。
『言ったろ、オイラは情報ツウってな。ンでだ。オイラはテメエに“魔法”をくれてやる。どんな魔法になるか、悪いがそれは断言できねェ。ソレはヒトエにテメエの精神性にかかってるからだ。……だが』
「……だが……何ですか?」
チョット勿体ぶると、見事に食いついた。勝ったな。
『テメエが本気でこの“イジメ”、何とかしたいと思ってんなら……安心しな、ソイツは叶うぜ』
ヤツはオイラの言葉にかなァり引き付けられているようだった。何かあと一押しでもあれば、コロッと堕ちるな。
「えっと……1つ、質問なんですけど」
あン?
「その、“契約”…………なん、ですよね?」
『オ、そうだな』
「じゃあ、私は何を払えば良いんですか?」
チクショウ鋭い。マァ、ここは嘘はつかないようにして……っと。
『まァ……コレを受けて後、万が一テメエが何かあって死んだとする。テメエにくれてやった分の魔力……マァ魔法エネルギーみたいなモンだ、それとツイデに魂ってヤツも回収させてもらうぜ』
ドーセ“魔法少女”なんざ早死にする人種だろうし、嘘は吐いてねェやな。
「死んだ……後…………」
ヤツが考え込む。ま、即決されなくても構わねェよ。営業は数が命だ。
「分かりました」
『へ?』
今はどうしているのだろうか。
過去を振り返る。
元気でいるだろうか。
立ち止まる。
なにかが引っ掛かる。なにかがつかえた感覚がする。
心にはそわそわと、体はふわふわと、
心配はいらないだろうけど
心外であるのだろうけど
私はあなたとの日々を思い出す度に
あなたとの日々が甦り、あなたが心残りである。