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魔法をあなたに その⑩

何ァーんか、話の流れがおかしくねェか? 今テメエは、人外領域の力と、ヤツの生殺与奪の権利を握っているんだぞ? オイラ手ずから態々用意した『名前』で、魂にも“復讐”を染み込ませて、ソレなのに。
「その後、ちゃんと話し合おう。だから……今は逃げて!」
「!」
イジメッ子が逃げ出しやがった。怪物が追おうとするが、そこに【フォーリーヴス】が立ち塞がりやがる。
『…………オイ。クソガキが…………おかしいだろ』
【フォーリーヴス】に向けて、怪物が前脚を叩きつける。長く太いそれの先端に具わった鋭い爪は、しかして【フォーリーヴス】が魔法によって展開した、エネルギーの障壁に阻まれ受け流された。
『ッ……! な、クソ……クソッ!』
今気付いた。あいつの出した「刀身」。ありゃァ「刃」じゃねェ。形状が違うだけの「障壁」だ。
『あンの女郎……! フッザけるなよ! 俺はテメエに“復讐者”の名を与えたンだぞ! ソレをテメエ、「四つ葉」なんて名前で、本気で自分が“幸運の象徴”にでもなったつもりか⁉ テメエ、名付け親への冒涜だぞ⁉ 侮辱罪ダ! ふざけやがって! 本気で善人のツモリか⁉ 相手はテメエを散々傷つけたゴミクズだ! 怪物被害で簡単に人が死ぬこのご時世で1人や2人死んだところで、誰も何も思わねえ木ッ端だ! 見捨てれば良い! 良いか! テメエ如きが善人ぶって何人救おうが何十人守ろうが! 人間の悪意は変わらず人間を傷つけ! 手の届かないどこかで必ず誰かが死ぬ! 魔法少女なんざ本質的にエゴイストでしかねェんだぞ! それをテメェ……! 心の底から善人でありたがってるってのかよ! フザけるな! オイラの計画が全部パァじゃねーか! 何のためにテメエを魔法少女にしたと思って……!』
オイラが喚いている間も、ヤツは、【フォーリーヴス】は障壁の魔法を駆使して、自分の数倍も目方のある化け物と互角に渡り合っている。あの女郎、マジに初陣かよ?

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Flowering Dolly:魂震わす作り物の音 その②

「ま、どうせお役所もすぐに適当なドーリィ派遣してくれるでしょ」
「いやABSSって別にそういう所じゃなくねーか?」
「けどドーリィならあそこにもいるじゃん。それで見ないふりはそれこそおかしいでしょ? あんたの理屈なんだけど」
「ぐ……いやまぁ…………」
遠くの方から破壊音が聞こえてくる。ビーストの仕業か、ようやく来たドーリィの仕事か分からないけど、少なくとも私の出る幕は無いってことだ。
「ほらけーちゃんも、只の人間がそんなピリピリしてないで、一緒にお昼寝でもしようよ。今日は気温も風もちょうど良いよ」
「いや別に……もう良いや。行かないならせっかくだから何か1曲やってくれよ」
「お代は?」
「飯作ってやる。良い鶏が手に入ったんだ」
「お、良いねぇ……揚げ物が良いな」
「了解」
交渉成立。ハンモックを吊るしていた木に立てかけておいたクラシックギターを足で引き寄せ、適当に弦の調整をしてから、思いつくままに爪弾く。今日はこんなのしか無いし、ボサノバっぽい雰囲気で雑に流していく。
ちょうど1曲終わったところで、破壊音も収まった。事態は無事に片付いたみたい。
「終わったみたいじゃん。良かった良かった……それじゃ、こっちも終わったから行こ? ご飯ご馳走してもらわなくちゃ」
「分かったよ」
家路につくあいつの後ろをついて行く。ふと、あいつが立ち止まってこっちに振り返った。
「どしたのけーちゃん?」
「いや、言っとかなきゃと思って」
「何を」
「アリー、今日の演奏も最高だった」
「…………知ってる」
あいつを追い越す勢いで足を速め、あいつの家へ向かった。

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皇帝の目 1

「チトニア…?」
梓がそう声をかけると、驚いたような息遣いが聞こえた。柔らかな風か病室に吹き込む。
「うん、ごめんね声かけずに入っちゃって。寝てたらどうしようと思ってさ」
梓は現在入院中である。ビーストの騒動に巻き込まれ怪我をし、更に目が弱視になってしまい、入院生活を余儀なくされたのだ。チトニアは、病院で出会った友人である。
「気にすんな、会いたかったと思ってたとこだし。隣座って」
「うん!」
チトニアを、梓は大変気に入っていた。他人には無愛想な梓であるが、チトニア相手には好意的に接している。
「ねえねえ、私と契約する気ない?」
「なんで?」
「ん〜…友達だからさ!私ね、梓のこと守りたいの!人間て寿命短いし、一瞬でも長く一緒にいたいから」
「でも私契約しても戦えないぞ。貧弱だしまだ弱視に慣れてない」
「私が目に『なって』あげるから大丈夫!」
チトニアの温かい手が梓の手を握った。

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お知らせ(?)

皆さんお久しぶりです。
今年、すでに友人2名を小説沼に叩き落とすことに成功しましたやたろうです。

今月8月13日は「円環魔術師録」の
「輪n÷€〒5]=18樣5→5〆娵"a jtp剣」
の誕生日のため、今月は「魔術師月間」でお送りしたいと思います。

しかし物語ばかりと言うのも芸がないので、
「魔術師達のこんな話が聞きたい」
「この話の裏話を知りたい」     
等々、皆様のリクエストを募集します。

期間は本日6日から13日まで。
この投稿のレスにて募集します。
先着順となりますので、後半のリクエストは9月にずれ込む場合があるかもしれません。
その他質問があればレスに書き込んでください。

リクエスト数に上限は設けていませんので、皆様是非ご参加下さい。