「は?」
ネロは意味が分からないのかポカンとしている。
「だからお前の異能力を使っておれの仲間を探し出すんだよ」
簡単だろ?とおれはネロに笑いかける。
「…何だよソレ」
ネロは不満げに呟く。
「ボクは嫌だね」
「何でだよ」
良いじゃねぇかとおれは言う。
「えーだって面倒くさい~」
ネロはそう言いながら、パーカーのポケットから小箱を取り出す。
「ん?」
それは…とおれはその様子を見てポツリと呟く。
「あぁコレ?」
ネロは手の中の小箱に目を落とす。
・かすみ Kasumi
この物語のメインキャラの1人。
一人称は「自分」。
背丈はそこそこ(161cm)あり、下ろすと肩につくくらいの長さの髪を後頭部でまとめている。
いつも白いブラウスと深緑色のジャンパースカートを着て、足元は薄緑色のパンプスと透ける素材のハイソックスを履いている。
普段後述の喫茶店にいる時は白いエプロンをつけていることが多い。
性格は大人しく優しいがちょっと流されやすい。
普段は小さな喫茶店で主人の手伝いをしており、2階の物置では溜まっているナツィたちとよく連んでいる。
ナツィにめちゃくちゃ好かれているし、かすみ自身もそれを受け入れている。
・キヲン Kiwon
この物語のメインキャラの1人。
通称きーちゃん。
一人称は「ボク」。
小柄(150cm)で金髪をボブカットにしており、鬼のようなツノが2本額に生えている(ツノを隠している時は白いカチューシャをつけている)。
服装はVネックのシャツの上に白いストリート風のロングジャケットで、下は白い半ズボンと黄色と白の縞ニーハイソックス、白系のダッドスニーカー。
また、首には黄色いチョーカーをつけている。
性格は明るくてテンション高め。
ナツィのことが(なぜか)好きで、何かにつけて引っ付いている(邪魔がられがちだけど)。
露夏の”きょうだい“である夏緒とは仲良し。
普段はかすみの所の喫茶店の2階の物置でナツィたちと溜まっていることが多い。
現在のマスターは玄龍大学の学生・万 寧依(よろず ねい)。
ただ寧依とは別の人物によって”造られた“と言っている。
悪霊の攻撃は、離脱しきれていない青葉と犬神に向かった。青葉は杖を盾代わりに構えたが、悪霊の腕は直角に折れ曲がりながら回避して2人に迫る。
「……あぁクソ、何やってんだノロマ共が!」
千ユリが叫ぶのと同時に、2人は無数の腕の霊“草分”に突き飛ばされる。悪霊の攻撃は代わりに“草分”の1本を捉え、命中と同時にぐしゃぐしゃに変形させた。
「ごめん……助かった千ユリ」
「うっさいさっさと立て馬鹿。そこのアホが攻撃に参加できないなら、攻め手がアタシの“野武士”とあんたの仕込み杖だけなんだからね」
「ああうん」
千ユリが出現させた武士の霊“野武士”と、再び立ち上がった青葉が並び立つ。相対する悪霊の全身は、それまで以上に醜く悍ましく捻じ曲がり、上下逆に向いた顔で3人を見つめ返していた。
「青葉、カウントダウン3からで突っ込むぞ」
「りょーかい」
「3(スリー)……2(ツー)……」
犬神が土の柱を数本、周囲に展開する。
「1(ワン)……行け!」
千ユリの合図と同時に、低い姿勢で青葉が駆け出す。“野武士”はその全身を煙状に分解して土柱の間を進む。青葉の振り抜いた杖は、悪霊の交差した腕に阻まれた。
(…………なんで? 攻撃が通ってない?)
青葉の頭の中で、カオルが呟く。
(カオル、どういうこと?)
(〈煌炎〉は『怪異を殺す刀』なんだよ。相手が霊的存在なら、まず間違いなく押し勝てるはずなんだけど…………あ、分かった)
その時、悪霊の背後に回っていた“野武士”が人型に再構築され、悪霊に斬りかかった。それも身体を折りたたむように回避される。青葉の攻撃を防いだままの両腕が変形伸長し、青葉と“野武士”に襲い掛かる。“野武士”は再び煙状に変化しながら躱し、青葉は“草分”に突き飛ばされることで回避した。
視線に気づき、使い魔は無感情に見開かれた眼をワカバに向けた。
「こんにちは。どこの子かな?」
ワカバの問いかけに、使い魔は忙しなく目を泳がせ、数秒の思案の末に口を開いた。
「創ってくれた人は死にました。マスターの命令で、“アルベド”という魔術師を殺しに来ました。“アルベド”という方はどこにいますかと魔術師のひとたちに訊いて、ここまで来ました」
はきはきとした答えに、ワカバは苦笑して更に問い返す。
「そっかー。今のマスターさんって誰だか分かるかな?」
「名前は分からないです」
「見た目は? 男の人? 女の人? 若い? お年寄り?」
「えっと、若い男の人です」
「そっかぁ」
「アルベド、殺して良いですか?」
かくり、と小首を傾げて尋ねる使い魔に、ワカバは何も言わず苦笑いを返した。
「……先生、駄目みたいですね」
「諦めんなや仮にも師と仰ぐ人間をお前なー。っつーかおネコォッ!」
アルベドに呼ばれ、おネコは片目だけを開いて彼の方を見やった。
「仮にも親かつ主の命の危機に何のんびり寝てやがる!」
「んゃぁ……」
おネコは欠伸をして、再び眠ろうとした。
「おぉい!」
「……んゃぁ…………」
「クソッ、あれでも俺の最高傑作だってのに……」
「最高傑作カッコ唯一」
「そこうるせえ」
軽口を叩くワカバに、アルベドは素早く釘を刺した。