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無銘造物茶会 Act 2

「わたしはあの青髪の天使みたいな奴に変な石ころ2つと指南書的なものを渡されただけで、その通りに術式を組んでみたらこんなことになるなんて」
「え、“マスター”がボクを作ったんじゃないの⁇」
「え、“作った”⁇」
コドモの言葉に女は驚く。
「それは、どういう」
「えー“使い魔”のボクを作ってくれたんじゃないの〜⁇」
ね〜ぇ〜?とコドモは女の上でじたばたした。
女が訳が分からずまた呆然とする。
「いやだってわたしは術式を組んで魔力を流しただけであなたを作ろうなんて」
そう言いかけた所で、女はコドモにぎゅっと抱きしめられる。
一瞬彼女の息が詰まりそうになった。

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cross over#3

空は雲が1つもなく、どこを撮っても青しか映らないほどの快晴。自分なんか入る隙もない、などと愚痴りながら歩いている。高校生Aの黒い影が気になってーもともと猫のために通っていたあの道へ向かう。下に目を落としてゆっくり歩を進める。いつも以上に街が静かで自分の耳を引っ張ってみた。自動販売機の赤色が見えてくる。自動販売機はいつものように横にリサイクルボックスを携えて、そこにあった。人より遅い一歩がいつもの倍の速さで前に進む。一昨日と同じ景色。昨日と違う景色。車が一台、自転車が一台、過ぎていく。前にも自動販売機で飲み物を買っている人はいた。日々はいつもと同じように過ぎていく。なぜか鮮明に残る昨日のひと時を眺めながら、回れ右をした。靴屋を曲がり重いドアの前に着く。やけに大きく響くドアが閉まる音を後ろに階段を駆け上る。ナップサックを床に投げ捨てた。布団の上に転がり天井を見つめる。いつまでも心臓の動悸が止まらなかった。
「なんで、何でなんだろう。」
今まであの自動販売機の周りで人がいることに気づいても気に留めなかった。トタは何かを責めている。ふとちゃぶ台の上のラジオが目に入った。動くことにすら気が入らない。寝返りをして、電源を入れる。聴き慣れない声に感じる冷たさが今は心に沁みた。相変わらず明るく照らす陽がカーテンの隙間から差し込んでいた。