「寧依、行っちゃうの?」
金髪のコドモが尋ねると、寧依はうんと頷きつつスニーカーを履いた。
「大学あるからさ」
「ほぇーん」
よく分からないとでも言わんばかりに金髪のコドモは首を傾げる。
「ボクのことは連れてってくれないの?」
「え」
金髪のコドモの言葉に寧依は固まる。
「連れてくって…」
それは無理なんだけどと寧依が呟くと、えーと金髪のコドモは不満げに口を尖らせる。
「ボクのこと置いてくなんてヒドいよねーいー」
「いやいや無理だって」
そもそもあなた見た目が目立つんだし、と寧依は続ける。
「外に連れてくのはハードルが高すぎる」
だから、ごめんと寧依はツノの生えた金髪のコドモの額を撫でる。
コドモはむぅ〜とふてくされた。
「じゃ、ちゃんとお留守番してるんだよ」
行ってきますと玄関の扉を開けた寧依は、すぐに外へ出るとパタンと扉を閉め、鍵をかけてしまった。
「…」
金髪のコドモは退屈そうに床に座り込んだ。
ある山村の外れにひっそりと建つ粗末な社。普段は寂れた様相のそこだが、今日だけは華美な装飾と大がかりな祭壇が用意され、祭事のような空気感を漂わせていた。
その祭壇を正面に見る社の階段には、退屈そうな表情の女性が頬杖をついて腰掛けてている。上品な和装を着崩したやや長身のその女性は、腰まである色素の薄い艶やかな茶髪を結うことも無く垂れるままに任せ、村人らが祭壇に白装束の少女を恭しく捧げる様子を、無感情に眺めていた。
「オコミ様、オコミ様。今年もまた、生贄をお捧げいたします。どうか、これにて我らの村への安楽と繁栄を……」
『去ね』
村落の長の口上を、一言で中断させる。一瞬にして訪れた沈黙に、『オコミ様』と呼ばれたその女性は、再び口を開く。
『去ね、と言ったのじゃ。今様に改めようか。立ち去れ、人の子らよ』
村民の間にはしばらくどよめきが広がっていたが、女性が身じろぎをすると、慌てて立ち上がり、互いを押し退けるようにその場から逃げ去っていった。
その場には、女性と生贄にされた少女が残る。
『…………何をしておる』
女性の言葉に、少女はびくりと肩を跳ねさせ、顔を上げた。
『妾は言った筈じゃろうが、「立ち去れ、人の子ら」と。貴様、何時から人の身を捨てたつもりじゃ?』
少女は恐怖にがちがちと歯を鳴らし、女性を怯えた目で見上げるばかりである。
『…………嗚呼、鬱陶しい。何処へなりとも消え失せよ』
「……で、でも……私、生贄って…………」
おずおずと口を開いた少女を、女性は鋭く睨んで制止した。
『妾が何時、口答えを許した?』
「ひっ……!」
昔の記憶を思い出し
マナの種を手の平から生んだ
【マナの種】
それは荒地にマナの種を植えたらたちまち新緑溢れる木々が生い茂る地が生まれるとされる種。
永遠に伝えていきたいマナの種
永遠に伝えていきます。この緑溢れる地球を