金髪のコドモがナツィとかすみに出会ってから暫く。
ナツィは先程までいた大学構内を出て、かすみと共に住宅街の中を早歩きしていた。
「ね、ねぇナツィ」
そんなに早歩きしなくても…とかすみはナツィに話しかけるが、ナツィは別にとだけこぼす。
「俺はアイツを避けたくて逃げてるだけだし」
「そ、そんなぁ」
呆れるかすみに対しナツィはなんだよと続ける。
「お前はあんな素性の知れない奴に優しくしようっていうのか」
ナツィの冷たい言葉にかすみは、別にそういうのじゃなくてと言い返す。
「ただ…なんか放っとけないなって」
かすみがそう呟くと、ナツィはそうか?と首を立ち止まる。
そうだよとかすみも足を止める。
「なんか、あのまま1人にしておけないっていうか…」
多分自分たちのこと追いかけてきてるでしょ?とかすみは後ろに目をやる。
住宅街の細い道には人気がなかったが、どこからかなーつーぃ〜という声が聞こえる。
ナツィはちっと舌打ちした。
アトリエから出ようと振り向くと、扉側の壁に絵画が一枚かかっていることに気づいた。
『…ん…?』
それは濁った空、枯れた草花に覆われた原っぱ、そして人が描かれている。人の頭が不自然に黒く大きく描かれているように見える。
『こわいな』
『ああ…さっさと出るか』
琥珀は林檎の首根っこを咥えてアトリエを出た。画廊を戻っていくと、先ほど追いかけてきた人間と思しき人間が先に見えた。
『げっ』
そっと様子を伺うと、暗くてよく見えないが、背中がもよもよと不自然に動いているようだ。
『きみわるい』
琥珀は林檎の首根っこをそっと離しておろしてやり、座って様子を伺った。
…人間の背中から何かが生えた。
『きゅう』
林檎の悲鳴を聞いて琥珀は林檎を背中がわに庇ってやる。
人間はぐるりと振り向く。琥珀は反射的に林檎の首根っこを咥えると人間の様子を見つつ後ずさる。