体の傷。大体が治る。治らないものもある。
心の傷。全く治らない。えぐられる。深く、深く、、、
でも、心の傷は癒やされる事がある。
いつもそばにある友の存在。
あぁ、、、生きていてよかった。
「大丈夫⁈」
“何か”に飛びかかったナツィに釘付けになった金髪のコドモに、後ろから誰かの声がかかる。
振り向くと、ジャンパースカート姿のコドモ…かすみが駆け寄ってきていた。
「かすみ!」
どうして?と金髪のコドモが聞くと、かすみはきみの魔力の気配を追ってきたのと金髪のコドモを立ち上がらせながら言う。
金髪のコドモはかすみの助けを借りながら立ち上がり、目の前で戦うナツィの姿を見る。
ナツィは住宅の2階ほどの高さのある“何か”相手に大鎌1つで戦っていた。
「ナツィ、すごいね」
あんな大きいのと戦えるなんて、と金髪のコドモはこぼす。
かすみはそうかなと返す。
「自分にとってはよくあることだから…」
かすみがそう言いかけた時、“何か”に斬りかかって弾き飛ばされたナツィが金髪のコドモの傍に転がってくる。
金髪のコドモはナツィ!と声を上げて駆け寄った。
「大丈夫?」
金髪のコドモはナツィの顔を心配そうに覗き込むが、ナツィは…別にと嫌そうな顔をしながら立ち上がる。
あーー
あーー
こちら____、
きこえますか?
ただ今12月25日水曜日、
午後9時25分
31秒、32秒、33…
気温6度、
星空、晴天
微風ーー
きこえますか?
あなたが好きです。
こちら____。
____、応答せよ。
ダンボールを開けると、ハリーポッターに出てくるような杖が入っていた。
親の反対を押し切り、女優を目指して上京したものの、バイトをクビになって、お金も食料も底をつき、途方にくれていたところに一筋の光。数年ぶりにお婆ちゃんから電話があったので、親に内緒でお米を送ってくれるよう頼んだのだが、ダンボールには木の杖。
わたしはうなだれ、肩を落とした。
お婆ちゃんはもう、ぼけてしまったのか。
女が手っ取り早く稼げる方法といえば、キャバクラ、風俗、立ちんぼ。
こうやって落ちてゆくのだ。
お婆ちゃんがぼけてしまったことによるショックと落ちぶれたダブルパンチで涙が出た。
こんなふうにオーディションでも上手く泣ければ合格してたかもしれないなあ。
お腹減ったなあ。
などと考えながら再びダンボールに目を向ける。
おや。蓋の内側に封筒がへばりついているではないか。
急いで中身を確認すると、やったあ。三万円入ってた。
そうかそうか、これは孫を喜ばせるためのお婆ちゃんジョークだったのだ。そしてわたしはこの三万円で当座をしのいでオーディションを受け、泣きの演技が素晴らしいと絶賛されてヒロインに選ばれ、めでたしめでたし。
あ、手紙も入ってた。
なっちゃんへ
この杖は先祖代々伝わる宝物です。飯杖といって、神に選ばれた者だけが使えるそうです。お茶碗に向けてひと振りすれば、あら不思議。ほかほかごはんが現れるのだとか。どうぞ試してみてください。じゃあまたね。
なんとなんと、わたしはその神に選ばれた者だった。なのでもう、ごはんには困らない。
オーディションでは、まだ一度も選ばれてないけど。
ごはんの上でひと振りすると、ふりかけの出てくるふりかけ杖を使える男の人がいたら結婚しようかな、と最近思っています。
むかし、ある王国に、とってもおしゃれな王様がいた。
トレンドはすべてキャッチし、また自らもトレンドを生み出すファッションアイコンになっているにもかかわらず、まだまだもの足りないなあ、なんて思っていたところに、世界各国を放浪して服飾ビジネスの勉強をしてきたという仕立て屋が現れた。 仕立て屋が王様にすすめたのは賢い者にしか見えない生地で作ったスーツ。王様はスーツが仕上がるとさっそくおひろめパレードを行った。
城門から王が姿を現すと、国民はちょっとざわついたが、賢い者にしか見えない生地というおふれが出ていたのでみな神妙な顔で見送った。誰も王様は裸だ、などと声をあげたりはしなかった。パレードは無事終了した。
仮に王様は裸だ、なんて言うやからがいたとしても、王様は動揺しなかっただろう。何代も続いている王族からしてみたら庶民など犬猫同然、裸を見られたところで恥ずかしくも何ともない。だったらファッションを自慢する意味もないのでは、とおっしゃるかたもおられるだろうが、そこはそれ。代々続いた王族なんてものは著しく精神のバランスを欠いた存在なのだ。一般人の常識を当てはめてはいけない。
スマートウォッチなど、ウェアラブルが当たり前の世のなかになって久しい。
近い将来、デバイスは体内埋め込み式が主流になるのだとか。
などとのんきにかまえていたらなんということだ。すでに実用化されているのであった。
つい先ほどのできごと。イヤホンも何もしていない、前歯のない、ワンカップを片手に持った老紳士が一人で大声で話しながら、駅の改札とイルミネーションで飾られたロータリーを行ったり来たりしていた。
便利だからついやっちゃうんだろうけど、マナーは大事だよなぁ。
などと考えつつ、小腹が減ったのでコンビニでフランクフルトを買い、食べながら歩いていると、角からナイフを持った男が現れた。
「あ、お父さん」
「おかえり」
残りのひとかけらをのみ込み、「会社は?」とわたしはきいた。
「辞めた」
「そうなんだ。お母さん、家にいるの?」
「断食修行に出た」
「そんな……食欲の秋なのに」
「一二月は秋じゃない」
「もうすぐクリスマスだね」
「クリスマスはどうするつもりだ」
「今年もあなたと過ごしたい」
「カレン、もうこんな関係は終わりにしよう」
そう言ってお父さんはわたしを刺した。意識がなくなる直前、フランクフルトの串が地面に落ちる音をきいた。