「さぁ、まだ見ぬ異能力者さん、わらわにその記憶を渡して下さる?」
しかしまだ異能力を発現していない琳くんは、困惑したようにど、どういう事…?と後ずさる。
ヴァンピレスはにやにやしながら続けた。
「…貴方、『他人の感情がなだれ込んでくる』のが嫌なんでしょう?」
わらわに”記憶”を明け渡してしまえば、それもすっかりなくなるわとヴァンピレスは言う。
琳くんはえ、と驚く。
「そうすれば楽になれる…だから、わらわと共にいらっしゃい」
そう言って琳くんに近付くヴァンピレスを見て、ダメだ琳‼と思わず師郎は階段の柵から身を乗り出して叫んだ。
その言葉に琳くんはわたし達の方を見上げる。
「その女について行っちゃダメだ!」
お前さん何もかも失うぞ‼と師郎は続ける。
琳くんは再度ヴァンピレスの方を見る。
ヴァンピレスは琳くんを促すように彼の目を見ていた。
「ぼくは…」
琳くんがそう呟きかけた時、不意に彼はうっ、とうめき頭を抱えだした。
わたし達は驚いて息をのむ。
もうそろそろ春が終わってしまうのか
もうピンクと白のたくさんの花が散り始めている
ひらりひらりと風にのっていくはなびら
もう茶色い土台に青々し葉が顔を出している
よいしょっと顔を出し始めている
もうどんどんはなびらが風にのられている
もう終わってしまうのか短い春が
たくさん乗り越えて咲いた花が終幕に近づいている
そしてまた新しく新章が始まる
「私のメディウム!」
「すまない…だがこれでいい、あの分だとおそらく君達は飲み込まれていた。なり損ないだったからな」
「なりそこない?」
「私も見間違えた代物だが、どうやらアレは『魔法』じゃない。どっちかといえば幻術のほうが近い」
「魔法じゃないってどういう…」
「それ少し説明が難しい…魔法は内なる力を万物に変換して打つ、つまり主導権は自分自身だがこれは違う。これの主導権はあの石だ、使用者の精神力を喰らって魔法という名の幻想を打っている。ややこしいのは質量があるせいで『そう』見えないってことだ。君達はどうやってこんなものを?」
「あの石なら自分の中の魔力を制御できるって先生が」
「魔力が発現したってことか?」
「あの…突然妙なことが起こることになって、それで私達学園に来てこれは魔法だって」
「妙なこと?」
「ある日を境に周りのものが浮いたり、何もしてないのにものが壊れたり…」
「僕なんて、山一つ焼いちゃってVIP待遇で即刻島流しだぜ?」
「暴走…?いや違うまさか…そうだ、ヤツらならやる間違いない」
「あの…よくわからないんですけど…」
「つまり、君たちはここに住んでるのか?」
「まぁ…学園に、寮なんです」
「ふむ…?なんとなく読めてきた。学園は真上だったな?」
「あ…はい」
「明日はそこにいるといい、そこなら安全なはずだ。あ、そういえばまだ通貨はメギストスかい?」
「そうですけど…」
「わかった。エル・メギ・ガド!」
そう言うとレピドは手の上に少し大きめの麻袋を召喚した。
「少ないが持っていくといい、私からの感謝の気持ちだ」
リョウが受け取るとずっしりと重さを感じるもので、隙間から覗く金色の光はそれが通貨なのだろうと察せられるものだった。
「こ…こんなに…?」
「まぁ気持ちばかりで足りないくらいだろうが持っていってくれ」
「ありがとうございます」
二人は頭を下げて、ここに入ってきた道を引き返し始めた。