「良かったな、姉ちゃんの勇姿を見られて」
師郎がそう言って琳くんの肩を叩くと、琳くんは照れくさそうにはにかんだ。
それを見てふと、師郎はこう尋ねる。
「…それにしても、お前さん、あの時異能力が発現しただろ」
その言葉に彼はあ、そうですねとうなずく。
2人に近付くわたし達も、そういえばと足を止めた。
「せっかくだから、お前さんの”もう1つの名前”、教えてもらおうか?」
師郎がそう聞くと、琳くんはほんの一瞬瞳を薄黄緑色に光らせた。
「…ぼくのもう1つの名前は”キリン”です」
異能力は”周囲の人間の感情を読み取る”能力、と彼は答えた。
師郎はなるほどな、と腕を組んだ。
「…あ、次で最後の曲だってよ」
不意にネロがイベントスペースのステージとして区切られているエリアを指し示し言う。
おっそうか、と師郎は言うと、琳くんと共にステージの方へ向き直る。
わたし、ネロ、耀平、黎もステージの方へ近付くと、ZIRCONのフリーライブの最後の曲を楽しむ事にした。
〈22.キリン おわり〉
それから何度やってもシオンだけは魔力量精度共に測定不能だった。放課後、魔法学の教員のサポートを受けたがやはり数値は出ず、ついに教員も匙を投げた。
「ただいまリサちゃん、すっごく遅くなっちゃって…こんなにかかると思わなかったよぅ、待たせてごめんね」
「おかえりなさいシオンさん!私は待ちたくて待っているのですからあまりお気になさらず。さ、帰りましょう」
「うん!…あ、待って。お水飲んでいい?」
「ええ、もちろんですわ」
シオンが足早に水道へ行き、おもむろに蛇口を捻ると、いきなり凄い勢いで水が出た。
「うわっ!!」
「どうなさいましたの?」
水圧はどんどん上がっているらしく、水がとんでもない勢いで跳ね、水道から聞いたことのない音が鳴る。
「うわぁ、私もよくわかんないけど…これまずいよ!どうしよう、止められるかな…」
「いえっ!お待ちくださいまし!不用意に近づいてはいけませんわ!」
エリザベスが強くシオンの腕を引く。ふと、溢れ出た水が人の形をとり始めた。
「間違いありません、魔法ですわ」